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防衛予算の問題は増額分をどう活用するか

トランプ政権と今後の世界情勢(4)今後の日本・中国情勢

白石隆
立命館大学 特別招聘教授/ジェトロ・アジア経済研究所長
情報・テキスト
立命館大学特別招聘教授でジェトロ・アジア経済研究所長の白石隆氏は、トランプ政権の発足で遠からず防衛努力の強化が求められると見る。そこで問題となるのは、増額された分をどう活用するかだ。単なる「高い買い物」で終わらせるのではなく、民生転用も視野に入れた技術革新につなげるべきだと、白石氏は強調する。(全5話中第4話)
時間:07:23
収録日:2017/02/16
追加日:2017/04/21
ジャンル:
≪全文≫

●日本の防衛努力強化をいかに行うか


 トランプ新政権に対して、安倍晋三総理はとりあえずのところ、非常にうまく関係をマネジメントしたと思いますが、やはりもう少し日本も「防衛努力をしろ」ということになるのは、遠からずほぼ確実だと思います。

 今の日本の防衛予算は年間5兆円ほどですが、前年比で約0.8パーセント増だと多分説得力がないのです。前年比4~5パーセント増ほどだと考えると、4パーセントで2,000億円で、5パーセントで2,500億です。F35だと1機185億円ぐらいですから、だいたい10機買うと予算がなくなってしまいます。

 それとも、半分ぐらいは防衛装備の共同開発に使うのか。あるいは残りの半分をサイバー・セキュリティーに使い、それこそNational Security Agency(国家安全保障局)のようなものをつくることなどが考えられます。今は、そういうところに差し掛かってきているのでしょう。それをやるためには、今の技術革命を本当にきちんと理解した、個人ではなくグループが必要だと思います。

 もし安全保障の領域でそういうことをやるのなら、必要なのは軍事研究ではないと私は思います。それはむしろ民生用にも使えるようなところでしょう。そう考えると、例えば、半分の1,000億円をどう使うのか。アメリカでいうと、DARPA(国防高等研究計画局)のようなものを、どう作って運用していくのか。National Security Agencyをつくるとすれば、そのタイプのことが分かっている人に、どうやってそれをつくらせていくのか。ある意味で今、その非常に重要な機会に差し掛かっているのではないかと思います。


●科学技術を見通した人材の優遇が必要


 すでに日本は、(戦闘機を)国内で調達するよりもアメリカから買ってくる方が大きいわけです。ここでまた1,000億円をボーンと積み上げるとなると、アメリカにとってはますます良いお客さんになりますが、それだけということになりかねません。

 そういうことから考えても、CTOやNational Technology Officerのような人が必要だという気がして、しょうがないのです。私は結構オプティミスト(楽天家)で、「部署をつくれば人は育つ」と考えています。部署をつくらなければ人は育ちませんけれども、部署をつくれば10年もたつと人は育ってくると思います。

 しかし、やはり日本は平等主義がすごい。これは、そういう社会が良いと日本人が選んだわけですから、しょうがないのかなと思っています。ただ、それにしても、やはりある分野の人たちをもっと優遇していかないと、(海外に人材を)取られてしまいます。


●独自の外交ルールを適用し始めた中国政府


 ところで、先日、香港から大富豪が失踪した事件がありました。あれは、東南アジアのチャイニーズには相当ショックだったようです。その人がそういうことになるのなら、われわれはどうなるのだということです。例えば、インドネシアのチャイニーズで、インドネシアのパスポートを持っていても、チャイニーズだということだったら、何か批判的なことを言ったら拉致されるのかということです。そのショックは、やはり大変なものです。

 ここのところ中国は、今までの国際的なルールでいうと明らかなルール破りを、いろいろな形でやり始めています。場合によっては、そういう影響圏ができるかもしれません。そちらに入ってしまうと、先述した大富豪と同じようなことになるかもしれません。そういう世界が少しずつできつつあるのかなという気がします。東南アジアのチャイニーズは、そういう意識を持ち始めています。

 例えば、バンコクでウイグルの人が反中的な活動をしました。タイでは別に違法行為は一切していないのですが、タイ政府に対して中国から「この人を送還してくれ」と言われたので、タイ政府は捕まえて送ってしまったわけです。

 今までのルールからいうと、明らかにルールに反しています。もちろん、逮捕令状があれば別ですが、必ずしもそうではなかったようです。どうも今までのわれわれが知っているような国際的なルールとは違うルールが、ある地域では適応されつつあるのです。それを、本当にルールと言っていいのかどうかも分からないのですが。


●習近平政権2期目の動向はまだ不透明


 習近平の第2期目がどういう陣容になるのかは、まだよく分かりません。いろいろなことをいろいろな人が言っていますが、やはり始まってみないと分かりません。

 また米中関係も、とりあえず最初からぶつかることはないとしても、決して良好とは思いません。私なりの表現をすると、関与と抑止が50・50というよりは、30・70、あるいは20・80、それくらいいくのではないかという気がします。

 そういうことからいうと、今後短期的には、相当いろいろな問題が生じるだろうと思います。中長期的には、生活水...
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