10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
このエントリーをはてなブックマークに追加

トランプ大統領の政策に未来はあるのか?

2017年世界と日本(1)トランプ・ショックとアメリカの変貌

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
誰も予期しなかったトランプ大統領の就任で、世界はショックに揺れている。しかし、激震し変貌していくのはもちろんアメリカ自身だ。暴言、恫喝、入国制限のかたわら保護貿易、減税、インフラ投資を公言するトランプ政策に未来はあるのか。(2017年1月24日開催島田塾第142回勉強会島田晴雄会長講演「2017年 年頭所感」より、全11話中第1話)
時間:18:33
収録日:2017/01/24
追加日:2017/05/01
ジャンル:
≪全文≫

●誰も予期しなかったトランプ候補の勝利


 トランプ・ショックとアメリカの変貌をみていきます。トランプ候補の勝利は、誰も想像しなかった事態でしょう。後になってから「俺は、予想していた」と言う人もいますが、事前に予想できていたのは木村太郎氏ぐらいです。世界中が非常に驚き「まさか!」と叫んだ。あんなに品の悪い人が選ばれるとは思わなかったのです。

 トランプ氏は全く無名で、公務も軍務も社会サービスもやったことのない人です。不動産で成功したお金持ちなので、軍務から逃げられたのかとも思います。「Real TV」と呼ばれるワイドショーが大好きで、政治のタニマチ好きでもあったと言われます。このように何の政治経験もないこと自体が、ワシントンのエスタブリッシュメントを覆す力になることを、支持層は期待したのでしょう。

 この大統領選について、メディアは「史上最低・最悪」だったと書いています。「お互いに暴言を吐いていたから」というのですが、それは少し違います。もっぱら暴言を放つのはトランプ氏で、クリントン氏の方は、いわば「売られたケンカ」でした。ただ彼女も、相当気の強い人ですから、あれほどいろいろ言われると、戦わざるを得ない。ともあれ、議論の内容としては『週刊文春』より下のレベルでした。私もかなり注目しましたが、トランプ候補のしゃべり方が、ほとんど暴力団まがいなのにはがっかりしました。

 彼が政治に強い興味を持ち始めたのは2000年ごろからだったそうです。当初は極めて慎重な態度で、政治家の人たちに対しても穏やかな発言をしていました。ところが、2007年に「ワールドワイド・レスリング・フェデレーション事件」が起きるわけです。


●無名のトランプ氏が罵倒術を覚えたWWE


 ワールドワイド・レスリング・フェデレーション(現ワールドレスリングエンタテイメント・WWE)は何万人もの観衆を集めるプロレス団体です。ファン層は最大4万ドル以下と比較的年収が低く、他に楽しみを持たない人たちだと言われますが、主催者はもうかる。しかも名物オーナーである元レスラーのマクマホン氏がしじゅうリングに上がっては、観衆に向かって「お前らは、ばかだからな」と煽ってみせる。観客席から「この野郎をぶっ殺せ!」のコールがあると、ブルートのようなレスラーがリング上に上がっていく。そこでマクマホン氏が相手を足蹴りにするような乱闘となり、それが人気となって高い視聴率を稼ぐという仕掛けです。

 これを見て「あれは、いい」と買収に乗り出したのがトランプ氏です。しかし、マクマホン氏の方では大切な金の成る木ですから応じない。「金なら出す」「俺だって金は持っている。じゃ、勝負だ」ということで、レスラーにリング上で代理戦争をさせることになりました。まるでローマ皇帝のようですが、この勝負では負けた方の髪を剃るのが約束となっていました。

 代理戦争である試合の最中、場外乱闘が起こります。身長190センチ以上もあるトランプ氏がラリアットをかけ、マクマホン氏はKOされて脳震とうを起こします。トランプ氏は「約束通り、髪を剃るぞ」とマクマホン氏をリングに引っ張り上げる。これで視聴率は天井を突く騒ぎです。二人とも大変もうけたわけですね。

 これ以来、トランプ氏のアピールはガラッと変わったと言われています。言葉遣いが意図的に汚くなっている。この後も、WWEを買収し、その金額の倍ぐらいでマクマホンに買い取らせてさらに大もうけしたという「トランプ神話」があります。ともあれ、彼が汚い罵倒術を...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。