10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

アメリカの正確な情報を収集するにはどうすればいいのか

トランプ政権の行方と日米関係(8)質疑応答編

ジェラルド・カーティス
政治学者/コロンビア大学名誉教授
情報・テキスト
アメリカ人の国家に対するアイデンティティークライシスは、どのようにして解消されるのか。日本でアメリカの正確な情報を収集しようとする場合、どのようなメディアが良いのか。政治学者でコロンビア大学名誉教授のジェラルド・カーティス氏が講演後、会場からの質問に答える。 (2017年4月20日島田塾第145回勉強会ジェラルド・カーティス教授基調講演「トランプのアメリカと日米関係」 より全8話中第8話)
時間:14:02
収録日:2017/04/20
追加日:2017/05/24
ジャンル:
≪全文≫

●トランプ政権はまだ具体的なインフラ政策を作っていない


質問1 インフラストラクチャーの整備に関して、貯蓄率が低いアメリカで、官民パートナーシップは本当に可能なのでしょうか。

カーティス スティーヴン・マヌーチン財務長官の影響力は、まだよく分かりませんが、非常に限られています。彼は金融の規制緩和に力を入れていますが、それ以外の分野、例えばインフラストラクチャー投資には、今のところ影響はそれほどないようです。

 おっしゃる通り、アメリカの場合、private savings(民間貯蓄)は少ない。それでは、どこから投資資金が出てくるかというと、トランプ政権は現時点でそれに答えていません。ドナルド・トランプ氏は、アメリカの企業がインフラストラクチャーに投資したり、あるいは日本の企業、外国企業もそれに投資をすれば、何かbenefit(利益)があるかのように言っていますが、まだ抽象論です。私が知る限り、具体的な政策はまだありません。3カ月たっても、この政権は具体的な政策をつくっていないため、残念ながら返事のしようがありません。


●アメリカが世界で取るべき立場についてのコンセンサスが崩れた


質問2 現在、アメリカ人はアメリカという国家に対するアイデンティティークライシスに陥っているようです。この問題はどのように解決されるでしょうか。

カーティス 私はアメリカ人の国家に対するアイデンティティーは、非常に強いと思っています。問題は、国家のアイデンティティーではなく、むしろ、この国家が世界でどういう立場にあるべきかということです。この考え方に非常に大きな変化が起こっています。

 忘れてはいけませんが、アメリカの伝統は孤立主義です。真珠湾攻撃がある日まで、いくらフランクリン・ルーズベルトがヨーロッパの戦争に参加して、ヒトラーと戦うべきだと主張しても、実現しませんでした。それほど孤立主義が強かったのです。しかし、ある意味で真珠湾攻撃のおかげで、アメリカが孤立主義(isolationism)からグローバリズムに変わりました。戦後は、アメリカが圧倒的な優位に立って、世界のリーダーとして振る舞ってきました。しかし現在は、もちろん一番強い国ではあるのですが、圧倒的な優位性を失っています。

 アジア諸国にとって、一番の貿易の相手はアメリカではなく、中国です。アメリカはまだ中国よりも強いですが、アジアの国に対して圧倒的な力はありません。そこで今、アメリカ国内では、政府はもっとアメリカのことだけを考えようという、アメリカファーストの考え方が出てきています。例えば、「どうして中東で若いアメリカ兵が死ななければならないのか」と考えたとき、「中東のことはもう放っておきましょう」となる。これがアメリカファーストということです。

 今、世界はいわゆるアメリカとソ連の二極体制(バイポーラーシステム)から、非常に不安定な多国体制(マルチポーラーシステム)に変わってきています。そうした中で、アメリカがリーダーシップを発揮した経験はありません。1920年代に一度、トライしてみたのですが、当時の国際秩序が崩れて、結局はファシズムと日本の軍国主義につながってしまいました。今の世界は20年代によく似ています。国家のアイデンティティーはあるけれども、アメリカが世界で取るべき立場についてのコンセンサスが崩れました。このことの方が重要です。


●トランプの方が、ワシントンの政治家に任せるよりまだましだ


質問3 アメリカでは格差が拡大していますが、トランプ政権は格差の問題をどのように解決するのでしょうか。

カーティス 格差は、今回の選挙結果を生んだ大きな要因でした。トランプ大統領は格差を是正すると言っています。選挙の時にトランプ氏は、共和党の指名候補者だったテッド・クルーズ氏の妻が、ゴールドマン・サックスで働いているということを批判していました。しかし大統領になると、トランプ氏はゴールドマン・サックスの人ばかり取り入れています。ゲイリー・コーン氏もそうです。つまりトランプ氏は、ビジネスで成功して金持ちになった人たちを評価しているのです。

 官僚や学者、外交官といった人たちは評価されません。自分でお金をたくさん稼いだ人を評価し、政権に入れています。中西部の人たちは、彼らのような金持ちとは違って、全くお金がありません。しかし、トランプ氏が何かを実現してくれると思っているので、今のところは彼を支持しています。格差はしばらく続くかもしれないが、そのうちに良くなるだろう、と期待しているのです。しかし、いつまでそれが持つかは分かりません。いつまでも持つはずはないでしょうが、当面はそう感じさせることができるでしょう。

 また、確かにトランプ大統領に対する不安と不満はありますが、それでもワシントンの政治家に任せるよ...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。