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国際政治の理屈の前では日中や米中という関係構造はない

極東のバランス・オブ・パワーは中国VS日米同盟~高まる中国軍事力の脅威~

岡崎久彦
外交評論家
情報・テキスト
殲撃11型 (J-11)(Su-27系列)
極東のバランス・オブ・パワーに異変が起きている。この20年で中国の軍事力は米をも凌駕。日本のシーレーンは圧倒的危機にさらされている。防衛の秘策はあるのか。中国はいつ失墜するのか。岡崎久彦氏が極東と日本の戦略論を語る。
時間:18:33
収録日:2014/05/07
追加日:2014/05/22
カテゴリー:
≪全文≫

●尖閣制空権の危機。中国の戦闘力は圧倒的


岡崎 今度は世界情勢の方の話をします。先日、自民党二階派の勉強会での講演を依頼されました。最近の集団的自衛権の議論は法律的問題に終始しているが、政府は、国際情勢がここまで変わった以上、法律的問題を議論した上で国際情勢を考えなければいけないと言っている。その国際情勢の話をしてほしいという注文でした。

 私ははじめ、嫌だと言いました。というのは、私が集団的自衛権の行使を提言し始めたのは約40年前からで、その当時は、ソビエト連邦海軍がベトナム東南部のカムラン湾に駐留して通商航路を脅かしており、ソ連の地上軍が北方領土に侵出して、いつ上陸してくるか分からないという状況でした。その時の情勢の方がひどかった。今の情勢では関係ないと思っていたからです。しかし、そこで勉強してみました。そうしたら本当に驚くべきことが分かりました。やはり国際情勢を知ることは必要です。

 どういうことかというと、こういうことです。1996年頃に中国が尖閣にどんどん侵出してきたことがありました。その時、私に出演依頼があってテレビに出た時に「東シナ海で日中の海空軍が衝突したらどうなりますか」と質問されました。私は「数時間で中国の海空軍が全滅する」と言いました。「それは数字で見れば明らかだ」と。

 結局、日本は第4世代ジェット戦闘機のF-15を200機保有しています。冷戦終盤期にソ連に対抗するため、ロンヤス時代(ロナルド・レーガンと中曽根康弘の時代)に大いに製造したのです。当時世界最高精度の機体で、これを200機持っていました。断然の戦闘能力です。
 
 中国空軍でこれに対抗できるのはSu-27(スホーイ27)なのですが、その頃はまだ導入し始めで、始めに10機、また20機と、40機ほど購入していたでしょうか。レーダーで見ていると、戦闘訓練などはまだ本当にしておらず、点から点へ飛ぶ流し飛行をやっているだけでした。

 そんな状態ですから、もし尖閣上空で戦闘になったら、本当に数時間で中国の空軍は全滅です。日本のF-15、200機が勝ちます。そうして日本が制空権をとれば、船などは空対艦ミサイルを撃ち込めば箒で掃くようなものです。だから「これは絶対日本が強い」と申し上げました。

 私はこの発言で、香港の共産党系の新聞から「岡崎は傲慢にも時間の問題で全滅すると言った」と批判されました。しかしテレビ局は喜んで、相当話題になりました。好評なので同じタイトルでまた来週やろうということになり、二週続けてその話をしたということがありました。それが当時の情勢で、200機対30~40機、しかも訓練も何もしていない30~40機です。

 ところが最近の状況を見ますと、200機対400機になっています。日本が一機も増やしていない間に中国が増やした。結果、逆転して向こうが倍になっていたのです。

 戦争において「数」は一要素に過ぎません。性能がさまざまですから。しかしそれでも「数」というのは戦争において絶対に強いのです。二乗に比例するといいますね。ちょうどソ連の脅威が大きかった頃の計算で、こんな例があります。もし仮にアメリカのミサイルの命中率が99パーセントと仮定して、これに対して、ソ連のミサイル命中率が90パーセントの時、これを数で補うには、ソ連は何倍のミサイルを持てばいいか? という問いです。答えは簡単で、2本(2倍)なのです。命中率90パーセントですから、一発目が来ると生存率は1割です、次にもう一発来ると、生存率はもう元の1パーセントになってしまいます。3発持たれたらもうどうしようもありません。それが、中国は既に倍の数を持っている。そうすると尖閣の制空権は難しいです。


●もはや「中国VS日米同盟」しか道はない


岡崎 現在、日本の主力であるF-15は第4世代のジェット戦闘機ですが、F-4は第3世代です。日本が今やっていることは、このF-4を日本の技術でいろいろ強化して、中国の第4世代と互角まではいかなくとも張り合える程度にはしようということです。しかし、それを入れても2009年には追い越されています。

 そこで、在日米軍の第5世代ジェット戦闘機を足します。しかし、これを足してももう追いつかれています。そこでこれに、アメリカ軍第7艦隊の第5世代機を足す。ただし第7艦隊は西太平洋・インド洋を担当しており、インド洋に行っている時がありますから、いつもいるとは限りません。これを入れてギリギリ同数か、わずかに上。これは来年にはひっくり返されますよ。そうすると、非常に明らかなことは、東シナ海で日本一人では中国にはかなわないということです。それだけならまだいいですが、アメリカの極東米軍と第7艦隊足しても中国にかなわない。これは日米共同で計算す...
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