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保護主義一色の就任演説と議会を通さない大統領令の乱発

トランプ政権研究(4)就任演説と大統領令の乱発

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、トランプ政権の発足後の状況について解説する。トランプ氏は就任直後から大統領令を多発してきた。入国禁止措置やメキシコとの国境の壁の建築を命じたが、いずれも修正を余儀なくされている。日米安保やNATOについても、マティス国防長官が各国と環境醸成を図っている。(全11話中第4話)
時間:09:37
収録日:2017/05/23
追加日:2017/06/21
ジャンル:
≪全文≫

●就任演説は保護主義一色だった


 ドナルド・トランプ政権の滑り出しはどうだったのか、思い出してみましょう。2017年1月20日、大統領就任式がありました。この時、ホワイトハウスの前の広場に集まった人の数は、あるメディアの発表によれば、約90万人でした。これはバラク・オバマ氏の就任式の時の半分です。しかも今回は、同数以上の人がワシントン周辺ならびに全国各地で抗議運動をしました。こんな大統領は前代未聞です。トランプ大統領はこの時の報道を根に持って、メディアをうそつき呼ばわりしました。自分の就任式には最大の観衆がいた、と言うのです。しかし、これはうそです。そんなことはありません。誰だってテレビを見れば分かります。

 就任演説は何とも品が悪く、保護主義一色でした。アメリカ製品を買え、アメリカ人を雇用しろ、というものです。歴代44人の大統領は皆、就任式で歴史に残るような名言、あるいは哲学的に深みのある言葉を言っています。しかしトランプ大統領からは、そうした言葉は一言もありませんでした。


●大統領令によって議会を一切通さずに命令する


 そして大統領になるやいなや、大統領令を出し始めました。日本の首相はそのようなものは出せませんが、アメリカの大統領にはそれができるのです。議会の審議・承認が不要で、大統領が自分で書けば、いろいろなことができてしまいます。大統領令には根拠法となるものがあるようで、例えばInternational Emergency Economic Powers Act(国際緊急経済権限法)がよく使われます。大変なことが起き、大統領に頼む以外にないような緊急事態に発動される法律です。こうしたものを根拠法として用いて、どんどん大統領令を発行するわけです。4月末、就任後100日間までに、大統領令と、これよりは効力が低いですが大統領覚書(合わせて約40~50件)、議会を一切通さずに直接命令しているのです。

 さらに、トランプ大統領は各国首脳に次々と電話をしました。一番驚いたのは、蔡英文台湾総統に電話をしたことです。これはビッグニュースになりました。というのは、中国から見れば台湾は、例えば日本の鹿児島県のような一地方都市で、独立国家として認めていません。国連でも台湾には代表権はありません。アメリカのような大国の大統領が、例えば鹿児島県知事に電話をするというような事態ですから、中国は驚きました。

 次にトランプ氏は、「中国はひとつである、台湾も本土もひとつだということを言っているようだが、私はそのような考えには制約されない」というわけです。これにはあきれてしまいます。これはトランプ氏が世界の歴史を全く知らないからです。孫文が清国を倒して以来、どういう努力をして中国が今日に至っているか、それを全く知らないから、こういったことが言えてしまうのです。その後、私は不動産屋一筋だから、こんなものは知らなかったし、知る必要もなかったと言ったらしいのですが、仰天です。しかし、中国は過激な反応を示しませんでした。トランプ氏の行動を放っておけばいいだろう、くらいの反応でした。


●入国禁止命令を裁判所が法律違反と判断した


 次に大統領令で、イスラム教徒の入国を禁止しました。トランプ氏いわく、「イスラム教徒がテロを起こしている。アメリカ人をテロの危険から守るためには、彼らを国に入れてはいけない」ということです。対象となったのは、イランやイラクなどの7カ国です。突然、大統領令で入国が禁止されてしまうわけですから、例えば、大学で新学期が始まるからアメリカに帰ろう、あるいは家族を訪問しようという人々が続々とアメリカに来ると、いきなり空港で入国は駄目だと言われてしまうのです。空港の係員も大混乱です。世界の航空会社も困ったことでしょう。

 しかし、いくら異様であったとしても、やはりトランプ氏は大統領ですから従う以外にありません。7カ国が入国禁止として選ばれたのですが、とんでもないことが分かりました。トランプ氏は、世界中にゴルフ場やホテルを持っているのですが、そうした施設のあるイスラム圏の国の10カ国ほどに対しては、一切禁止命令を出していないのです。彼はこうした才覚のある、嫌な男なのです。

 しかし、さすがにアメリカは法治国家です。しっかりと三権が分立しています。トランプ氏の入国禁止命令に対して、連邦地方裁判所が待ったをかけたのです。いくら大統領でも全く人権を無視し、国際慣行を無視し、国際条約を無視するような行動は受け入れられない、というわけです。ワシントン州の連邦地方裁判所が、2月3日、急遽差し止め命令を発行しました。裁判所の判断で大統領令が憲法違反だということになり、効力が発効できなくなります。トランプ氏は、連邦地方裁判所の裁判所長を激しくののしりました。

 さらに、およそ1週間後の2月9日、今度はサ...
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