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米中首脳会談で見せたトランプ大統領のディール外交

トランプ政権研究(5)日本・中国との外交の滑り出し

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
トランプタワー
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、トランプ大統領の日本・中国との外交について解説する。安倍首相はトランプ大統領にこびすぎているのではという批判もあるが、その外交態度は国益にかなった立派なものである。他方、トランプ大統領は中国に対して北朝鮮への圧力を要請し、ディール外交に打って出た。(全11話中第5話)
時間:10:18
収録日:2017/05/23
追加日:2017/06/22
ジャンル:
≪全文≫

●安倍首相の大統領就任前の訪問は異例だった


 日本に関して言えば、安倍晋三首相がドナルド・トランプ大統領を訪問し、極めて良好な関係を築いています。官邸と外務省の戦略スタッフは、大統領選の終盤、トランプ候補が勝つ可能性を何となく察知しました。彼らを要所に派遣し、安倍首相は情報収集と分析に当たらせました。

 当選直後の(2016年)11月、安倍首相がニューヨークのトランプタワーを訪問します。各国首脳の中で、大統領になる前にトランプ氏を訪問した人はいません。安倍首相が初めてです。就任前の訪問は本当に異例でした。トランプ氏の他、マイケル・フリン氏、ジャレッド・クシュナー氏、娘のイヴァンカ氏がいました。実はこれは、安倍首相と非常に親しい、アメリカの有名な弁護士の助言があってのことでした。この弁護士は日米関係に非常に尽力してきた方のご子息で、たまたま日本の成蹊大学に留学している時に、安倍首相と親しくなったようです。彼はトランプ氏周囲の人とも交流があり、トランプ氏は「とにかくあなたに会いに来た。いの一番で来た」というようなことを言われるのが、大好きな人だという情報を手に入れていました。

 この時、安倍首相がトランプ氏と何を話したのか、発表は全くありませんでした。安倍首相がトランプタワーの前で、「彼は大変信頼できる人だ」と記者団に伝えただけです。大変高いゴルフドライバーをトランプ氏に提供しました。さらに2月11日から13日、今度は正式に安倍首相がホワイトハウスを訪ねました。そこでトランプ氏は安倍首相を大変気に入って、一緒にフロリダへ行くことになったのです。ゴルフ場で、まずは18ホール回ったのですが、トランプ氏は体力がありますから、さらに9ホール回ることになりました。さすがに安倍首相は疲れたようですが、(その間を含め)昼食会を2回、夕食会を2回、さらにもう1度昼食会が行われました。

 トランプ氏は人と握手をするのが嫌いで、潔癖症だそうです。ドイツのアンゲラ・メルケル氏が握手しようと手を伸ばしているのに、それを拒否したくらいです。ところが、なぜか安倍首相のことは大好きになって、汗ばんでいるのに19秒間も握手の手を離しませんでした。首相の方は少し困っていましたね。メディアはこれを「ブロマンス(Bromance)」と表現しました。私は初めて知ったのですが、ロマンスが男と女の愛であるのに対し、ブロマンスは男と男の、肉体関係を伴わない愛のことだそうです。安倍首相とトランプ大統領はそうした関係になったというわけです。


●安倍首相の対応は、非常に勇気ある適切な行動だ


 フロリダには、トランプ氏が勝手に「冬のホワイトハウス」と呼んでいる、マララーゴというところがあります。これはトランプ氏の別荘ではなく、単なる大きな会員制のクラブです。警備当局は大変だったでしょう。会員権を持った人が入ってくるからです。そのマララーゴで、安倍首相と記者団の懇談の席がありました。前代未聞ですが、トランプ氏がその司会を申し出たというのです。安倍首相はよほど気に入られたようです。こうして、日米共同声明が出されることになりました。立派なものになりましたが、これはフリン氏の協力によるところが非常に大きかったようです。そこには、日本の要請がほぼ全面的に書き込まれており、大成功でした。置き土産は、日米経済対話の開催を決めたことでしょう。

 安倍首相の対応については、トランプ氏にこびすぎているのではという酷評が、アジアや欧州首脳の一部から出てきました。しかし、ここまでやったということは、安倍首相の非常に勇気ある適切な行動だったと思います。トランプ氏を相手に、これだけの親密な関係を持てたということは、国益にしてみれば何十兆円という大きな貢献です。立派だったと思います。アメリカでヒアリング調査をした時、異口同音で言われたことがあります。トランプ氏についてもっと聞きたければ安倍首相に聞くべきだ、ということでした。


●トランプ大統領は習氏に北朝鮮への圧力を要請した


 4月6日から7日まで、トランプ大統領は中国の習近平国家主席と会談しました。中国は、トランプ大統領が安倍首相とかなり密接に会談したのを注視していました。だからこそ、フロリダのマララーゴで米中首脳会談が行われたのでしょう。関係者によれば、安倍首相がそこでものすごい歓待を受けたのを見て、それ以下の扱いでは中国国内に示しがつかない、と考えたらしいのです。フロリダでいきなりの会合というのは、異例のことです。

 米中首脳会談の内容は公表されておらず、共同記者会見もありませんでした。米中それぞれは、大変友好的・有意義な会談であり、お互いに理解が深まったと発表していますが、本当かどうかはよく分かりません。ただ、いろいろな筋によると、この会談では相当に重要...
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