●1号機の冷却水はどこから漏れているのか
さて、次は1号機の調査です。これはF1(福島第一原発)を上から見たところです。2号機は、現在は調査されているところがありますが、1号機をまずは調べるというのが、東電のプロジェクトでした。
1号機はどうなっているでしょうか。格納容器があり、丸いドーナツ型のサプレッションチェンバに水が入っています。しかし、原子炉容器のどこかが壊れていて、サプレッションチェンバが入っているトーラス室という部屋に、水が溜まってしまっている。そして、トーラス室から、水が地中に漏れ出しています。1号機も2号機も同じような状況です。
この漏えいを止めたいのですが、一体どこから漏れているのかが分からない。トーラス室の中に、外へ水が出ている割れ目が見つかれば、そこをふさげば、水が外に出ていかなくなります。あるいは、格納容器から出ているのであれば、そこをふさげば外に出なくなる。したがって、とにかく漏れている所がどこなのかを探したい。
そこで、水中ロボットで調べたいと、東電に言われたのです。中に潜って、どこが漏れているのか、どこからか漏れているのであればそこからの流れが見えるのではないか、あるいは漏れている所に向かって流れが起きているのではないか。こうしたことを調べたいというわけです。
●水中ロボットは調査に即座に使えるというわけではない
こうしたことを水中ロボットの専門家として、アドバイスするよう求められました。しかし、いろいろと話を聞きましたが、水中ロボットというのはそんなに簡単なものではありません。水中ロボットでなければいけない理由は、一体何だろうか。ロボットが潜ったとしても、どこから水が出ているかは近くに寄らないと分からないのではないか。この水はどのくらい濁っているのだろうか。しかし、東電は分からないと言うのです。
これが分からないとなると、なかなかうまくはいきません。そこで、段階を追ってやるべきでしょうと言いました。まずは、サーフェスボートを出すべきです。サーフェスボートを出して、サーフェスボートが水中カメラでその中を見る、あるいは周りの観測をする。そういう作戦を立てるべきだと申し上げました。それで、何カ月か議論をして、実行に移ることになるわけです。
●ロボットのロジが重要
われわれにはROVなどの経験もあるし、もっと深い所で遠隔操縦のROVをオペレーションしたり、その開発にも携わっています。このときに重要なのは、ロジです。ビークルができたから動くというものではなく、それをどうオペレーションするのかということを考えなくてはいけません。
そこで重要なのは、投入と回収です。どこから投入して、どこから回収するのか。回収できなければ、サプレッションチェンバ内はロボットの墓場になってしまいます。これを取り除くために、その後の作業も大変になってしまいます。そういうことがあってはいけません。投入して必ず安全に回収する。これを考えて、ロボットが設計されなければなりません。
ロボットを考えるときには、ついつい何かを発見するためには、こういうカメラを積んでいればいいといったペイロード、つまり観測する主体のことばかり考えてしまいます。それではいけない。これが操作性の意味です。もしケーブルが引っ掛かったらどうするのか、ケーブルの引っ掛かりをいかに防止するのか、ということを考えるのです。
●ケーブルの引っ掛かり
それは水上機でも水中機でも同じですが、水上機の方がもう少し楽です。水中機は3次元的に動き回りますから、引っ掛かり防止はかなり大変です。それに対して、水上機は水面上を走り回るので、ケーブルの扱いはそれだけ楽になります。
ケーブルが引っ掛からないようにするにはどうすればいいか、いろいろと議論をしました。ケーブルが引っ掛かるのは、それが引っ張られるからです。ケーブルを引っ張らなければ、引っ掛かからないです。そうすると、このまま戻ってくれば、ケーブルは外れるわけです。引っ張らないことが、原子炉内のややこしい構造物の中、トーラス室の中を走り回るときに、非常に重要なポイントです。
失敗は絶対に許されません。ケーブルが引っ掛かって絡まって、もう取りに行くことができないという状況に陥れば失敗です。後世に山のように借金を残すことになってしまいます。
●ケーブルの引っ掛かり防止
そのときにどうすればいいか。引っ張らないためには、ロボットがケーブルを引っ張って前に進まないで、ロボットが自分でケーブルを出すようにします。ですから、ロボットのケーブルテンションをゼロにするべきだと、強く主張しました。
さらに、ケーブルは水面から潜らないように、浮き勝手でなければいけない。水に潜ってしまえば、引っ掛...