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原発の漏水調査で感じた責任が曖昧な組織系統

遠隔操縦機~原子炉ロボット(3)曖昧な責任問題

浦環
九州工業大学社会ロボット具現化センター長・特別教授/東京大学名誉教授
情報・テキスト
水上ボート調査の映像
東京電力ホールディングスホームーページ
(http://photo.tepco.co.jp/date/2013/201311-j/130313-04j.html)より
九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏が、水中ロボットを用いた福島第一原発の漏水調査の結果を報告する。ロボットのカメラによって、格納容器の水漏れ箇所が発見された。しかしこの開発に携わり、アドバイスを与えるに当たっては、何も辞令が出なかった。責任が曖昧な組織系統の問題点を指摘する。(全3話中第3話)
時間:07:24
収録日:2017/01/27
追加日:2017/07/16
≪全文≫

●11月13日、第1回目の調査


 調査は2回にわたって行いましたが、これは2013年11月13日の第1回目の調査です。上の画面は、水上のカメラから撮ったトーラス室の内部です。こちら側が原子炉側、こちら側がサプレッションチェンバです。これは真下を見ている水中画像、横を向いている水中画像です。ここは原子炉の格納容器の外側になっています。これは東京電力のホームページにありますから、いくらでもダウンロードできます。


●水はどこから、いかにして漏れていたか


 ここのところから、小便小僧のおしっこのように水が出ています。オペレーターがズームをして、ここで水が漏れていると分かり、この水は一体どこから来ているのか、と調べていきます。

 ここにどれだけの放射能レベルがあるかというと、1シーベルト毎時ぐらいです。水中映像は何となくゆらゆらしていますが、それはトーラス室の内側が温かくなっているからです。おそらく、そこで熱せられた水が動いているのではないか、と考えられます。原子炉側の画像を見ると、かなり透明です。4メートルぐらいの高さにわたって水がたまっているのですが、底の方まで見えることが分かりました。サプレッションチェンバの表面は、いろいろなもので覆われています。これが一体何なのかはよく分からないのですが、このようにして状況が徐々に分かってきました。

 これはこれで、大変成功だったと思います。翌日も調べてみると、別の所から水が漏れていると分かりました。これは1回目の調査ですが、サンドクッションドレンパイプというものがあり、そこから先程のように、おしっこのように水が出ていたのです。そうすると、ここにサンドクッションがあり、この上のところから漏れていることは確実です。さらに、その次の調査の時には、どこかこの辺からまた別の漏れがある、ということも発見されました。

 このように順番にひとつひとつ水面をカバーしていくことができました。私としては仕事をしたと思いました。


●アドバイスの責任


 東電のホームページには、調査結果が一応すぐに発表されました。水中遊泳ロボットWGにて支援し、浦環がこのワーキングの主査として開発した結果、うまくいったということが書かれています。NHKなど多くの放送でも、このことが取り上げられました。最初の危険地帯である、原子炉建屋の中に行ったロボットです。十分慎重に準備をしたと思います。

 ただし、実際にこのロボットをつくったのは、日立GEです。われわれはそれをアドバイスしただけです。WGというものに関しても、せっかくですから、申し上げたいことがあります。この「水中遊泳ロボットWG」というものが一体何なのか、よく分かりません。私はこのことに関して、東電に非常に強く主張しました。

 このWGの管轄は実際は経済産業省です。こういう仕事は非常に重要度が高く、無責任なことはできません。また、自分の狭量な知識で議論をしていても始まりません。ちゃんとした議論をしないといけませんし、アドバイスしたことに関しては責任を取らなくてはなりません。


●辞令の出ない曖昧な組織系統


 だとすれば、WGの主査になるのであれば辞令をください、とお願いをしました。東電側からは、委員会手当は出せないと言われましたが、私としてはお金をもらって仕事をするかどうかは問題ではありません。むしろ、この組織がどういうものであるかということについては、きちんとした上部組織から辞令をもらわなければ、私の責任が明確にはならないでしょう。そういったいい加減な組織で、いい加減なアドバイスをして良いわけがない、と申し上げました。しかし、ついに辞令は出ませんでした。どうしてでしょうか、よく分かりません。

 この社会では、こうしたことが横行しているのではないかと、私は非常に疑っています。誰が責任を持って、誰が主査として意見を言っているのか。こうしたことを明確にしないまま、辞令がないままにしているということは、仲間同士の内々でいろいろなことを解決しようとしているのではないのか、と主張しましたが、しかし駄目でした。

 実際に現場の苦労がありました。皆もちろん手弁当でやっているし、このWGのメンバーも私がお願いをして、助けてもらえるように頼んだ人たちです。どうなっているのかは、いまだによく分かりませんが、こういう大事故のときにきちんとした組織がないといけません。きちんとした辞令があって、責任を持った仕事ができるようなシステムになっていかないと、支援する側、つまりアドバイスする側も、責任あるアドバイスができないのではないかと思います。
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