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財政赤字をもたらす社会保障制度の大きな問題とは?

少子高齢化と財政の役割(7)社会保障制度の現状

田中秀明
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授
情報・テキスト
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授の田中秀明氏が、「少子高齢化と財政の役割」のテーマの下、財政全般、予算制度に続き予算の中身について解説する。中でも財政赤字に大きく関与しているのは、社会保障問題だ。各種データから見えてくるのは、社会保障に多額のお金を投じているのに、パフォーマンスが非常に悪いという日本の現実だ。(全12話中第7話)
時間:15:10
収録日:2017/08/09
追加日:2017/09/23
ジャンル:
≪全文≫

●OECD平均を上回る日本の社会支出


 「少子高齢化と財政の役割」の第7回は、社会保障制度の現状についてお話をしたいと思います。これまで、このシリーズでは財政全般の話、あるいは予算制度についてお話をしましたが、後半は予算の中身についてお話をします。特に財政赤字をもたらしている中身を見てみると、社会保障に大きな問題があるからです。

 最初に、社会保障全体の規模について紹介します。これまで日本は「小さな政府」と言われてきました。歳出をGDP比で見ると、OECD諸国の平均より小さかったわけです。ところが最近はそうとも言えません。OECD諸国では社会保障の支出のGDP比を比較するための指標として、社会支出という数字を提供しています。最新の数字は2013年のものになるのですが、日本の社会支出はGDP比で23.7パーセントになっています。これはOECD諸国の平均より上回って、オランダやイギリスと同じような数字になっているのです。これは結構驚くべき数字です。


●「スウェーデンと日本の純支出がほぼ同じ」が意味すること


 この社会支出には公的な支出と、義務的な私的支出があります。例えば、国によっては、一定の企業年金が義務付けられていることもあり、それは事実上、公的な制度に近いものです。これを合わせて、公的および義務的私的支出になるのです。さらに任意の支出、それから純支出があります。また、社会保障支出には、支出だけではなく税に関するものもあります。例えば、子どもがいれば税の控除があります。そうすると、子どもにとっては便益となり、これは実質的には歳出と同じような効果があるわけです。あるいは、スウェーデンの場合、全ての社会保障支出、年金や子どもの手当ては課税の対象となります。課税を与えることによって、その支出は減ります。つまり純支出とは、支出、税による控除、あるいは課税、これら全部を加えて比較したものなのです。

 この最新の数字を見て、私は驚きました。日本の純支出はスウェーデンとほぼ同じなのです。つまり、日本の社会保障支出はもはや小さいとはいえないということです。その1つとして、日本は他の国と比べて高齢化が進んでいるということが影響しているのですが、そうはいってもスウェーデン並みになっているというのは、驚くべきことです。


●高齢者向け社会保障費は高く家族、雇用対策では低い現状


 次に、社会支出の中身も見てみます。年金、医療、あるいは家族対策といった社会支出の中身のGDP比を各国で比べた表を見て、日本とスウェーデンを比べてみてください。年金や医療ですが、実は日本はスウェーデン以上にGDP比でお金を使っているのです。ただし、公的支出だけに限った数字なのですが、その額はスウェーデンの方が日本より大きいのです。何が大きいかというと、家族対策や積極的雇用政策です。

 次は、公的・私的医療支出について各国の水準を比べてみたいと思います。従来、日本の医療支出は、OECD諸国の平均よりかなり小さく、一部には医療支出はもっと増やすべきだという声もありました。ところが、最新のOECD統計を見てみると、驚くべきことに日本の医療支出はOECD諸国でなんと3番目に大きいのです。一躍、トップの水準に躍り出たということです。これまで日本の医療支出は介護費用が含まれておらず、過小評価されていたのです。日本の医療支出は、もはやOECD諸国の中でトップレベルになっているということで、これについて考える必要があります。

 次に、家族支出です。これは、児童手当や保育所にかかるお金です。日本の水準を見てください。最も低いというレベルです。何がいいたいかというと、日本の社会保障関係のお金は、全体としてはたくさん使っているのに、実際に使っているのは年金や医療など、主として高齢者向けの社会保障関係費だということです。反対に、家族対策、雇用政策、こうした分野にはお金を使っていないのです。


●社会保障に多額を投じても貧困率、格差は大きい


 次に、社会保障のアウトカム、つまりパフォーマンスはどうかという点について紹介します。相対的貧困率という数字があります。若干分かりにくいのですが、これは国民を所得の低い方から順番に並べていって、ちょうど真ん中の人の所得の半分しか持っていない人が全体の何パーセントいるかを表した数字なのです。その相対的貧困率を見ると、日本は非常に高く、OECD諸国の平均よりかなり上になっています。そして、格差も日本は非常に大きいといわれています。

 そして、次はひとり親・子ども世帯の貧困率です。同じように、中位の人の半分の所得しか持っていない家庭の親の所得を比べています。この数字を見てください。これも非常に驚くべき数字なのですが、50パーセントを超えているのです。

 日本が社会保障関係にあまりお金を使っていない...
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