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社会保障制度改革には「公私の役割分担」が必要

少子高齢化と財政の役割(10)社会保障制度改革

田中秀明
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授
情報・テキスト
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授・田中秀明氏の連続講義「少子高齢化と財政の役割」。第10回目では、社会保障制度改革の問題が、熱く取り上げられる。「公私」の役割分担を取り入れることで、日本の社会保障は大きく変わるというのだ。(全12話中第10話)
時間:13:03
収録日:2017/08/28
追加日:2017/10/02
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≪全文≫

●2020年よりも2050年に向けた準備が必要な理由


 「少子高齢化と財政の役割」第10回は、社会保障制度改革についてのお話をしたいと思います。

 日本が急速に少子高齢化し、人口減少が起こっていることは、皆さんすでにいろいろなところで聞かれていると思いますが、改めてその動きを見てみましょう。

 まず、後60年余りで日本の人口は半分になります。これは非常に驚くべきことです。また、高齢化においては「2020年」がしばしば注目されます。それは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療費や介護にお金がかかるということなのですが、これはまだまだ序の口です。問題は「2050年」前後、団塊ジュニアが後期高齢者になる時期です。人口構成も大きく変わり、後期高齢者が全人口の約4分の1になる。最も厳しいここに向けて、われわれは準備をしなくてはいけないと、私は思っています。

 今後、65歳から74歳までの層は今後どんどん減っていく一方、後期高齢者が非常に増えていきます。単に数が増えるだけではなく、都市部において、一人暮らしで、しかも所得の低い高齢者、なかんずく女性が増えることが予測されています。なぜかというと、生涯未婚の人が増えていて、彼らには面倒を見てくれる子どもたちがいないからです。

 また、最近は非正規雇用や就職氷河期で正規雇用に就けなかった人が増えています。彼らの中には年金保険料を納めていない人もいますから、将来の生活保護予備軍といってもいいかもしれません。それから女性は、結婚しても(夫と)死別するリスクが非常に高く、そうなると支給される年金は高くありません。したがって、今後は高齢者が増えるだけではなく、一人暮らし、しかも所得の低い人たちが増えるということで、非常に深刻な問題だと思っています。


●改革の基本的な方向は「公私の役割分担」から


 本シリーズの前半では年金と医療についてお話をしてきました。今後これらをどうすればいいのかということを、ごく簡単に申し上げたいと思います。

 日本の社会保障支出は、すでにOECD諸国の平均からそれ以上に達しています。社会保険が原則といいながら、大量の一般財源が投入されており、保険制度における財政調整は困難です。その結果、保険の給付と負担を一致させる「ガバナンス」が効かない仕組みになっているのです。

 他方、保険料の負担は逆進的です。貧しい若者が豊かな高齢者を支えるという動きになっており、貧困を抑止するという意味では非効率な制度になっています。つまり、セーフティネットの機能が弱いともいえます。今後、仮に消費税をどんどん増税したとしても、今のようにガバナンスを低く維持している限り、貧困や格差はなくならないと私は思っています。

 基本的な方向性として、「公私の役割分担」を明確にすることです。もっと分かりやすくいうと、相対的に恵まれた人たちに我慢してもらうことだと私は思っています。高齢者には格差が大きく、確かに所得の低い恵まれない人たちも多い一方、恵まれた人たちも多いのです。豪華客船に乗って世界一周をし、豪華な寝台車に乗って日本を一周する高齢者もいることを、われわれはよく聞いています。そういう人たちには、もう少し我慢していただけないか。そうしないと、日本全体が保たないということです。

 財政再建が目標ではありません。日本の最大の課題は、急速に進む少子高齢化をどうやって乗り切るかということです。そのためには社会保障制度の費用対効果と持続可能性を高めなければいけないと、私は思っています。


●年金はカナダ、医療はオーストラリアやオランダモデルで


 具体的にはどうするかといえば、公私の役割分担として、恵まれた人たちは自分の力で頑張ってもらう制度が必要でしょう。

 年金について、私はカナダの仕組みを提唱しています。実はカナダは日本と似たようなシステムです。「3階建ての年金制度」といわれており、1階の基礎年金は、所得にかかわらず国民なら誰でも5~6万円程度はもらえます。所得の低い人たち、例えば他に何ら所得のない人たちには、日本でいう生活保護が基礎年金に上乗せされます。

 サラリーマンの場合は、日本でいう厚生年金を採用しますが、厚生年金と基礎年金を足しても、年金額はそう高くなく、現役時代の3~4割ほどです。それでは現役時代の生活水準を維持できないので、企業年金・個人年金を採用しています。

 また、所得の高い人たちは、基礎年金がカットされます。最初は所得にかかわらず誰でも給付されるものの、年収500万円ぐらいを超えると年金特別会計が課せられ、基礎年金が事実上カットされます。一旦は手に入るけれど、税制を通じて徐々にカットされ、年収1000万円ぐらいになると、基礎年金がなくなる計算です。

 所得の低い人たちは基礎年金と上乗せさ...
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