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ユニクロ柳井氏の経営者としての大きな資質とは?

AIとデジタル時代の経営論(2)ユニクロの情報製造小売業

一條和生
一橋大学大学院国際企業戦略研究科研究科長・教授
情報・テキスト
柳井 正 氏
(株)ファーストリテイリング
代表取締役会長兼社長
デジタル化で世界が変わりつつある中、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は情報製造小売業を打ち出した。さらに、有明にヘッドクォーターズを造り、本社を移転するなど、柳井氏は社員の意識改革を試みようとしている。一橋大学大学院国際企業戦略研究科研究科長・教授の一條和生氏が、デジタル時代の企業変革について解説する。(2017年7月24日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「AIとデジタル時代のリーダーシップ」より、全9話中第2話)
時間:10:44
収録日:2017/07/24
追加日:2017/10/23
≪全文≫

●ZOZOTOWNの企業価値は既存企業をすでに超えた


 最近、Amazonがアメリカと同じように、日本のファッションの世界にも入ってきました。Tokyo Fashion Weekの冠スポンサーになっています。さらに、従来のチャンネルに変わって、ZOZOTOWNの成長には目覚ましいものがあります。その企業価値は、今ではなんと三越伊勢丹、J.フロント、高島屋をすでに上回っています。あらゆるアパレルの企業価値を超えているのです。世界は完全に変わりつつあります。

 AmazonやZOZOTOWNの成功は、単にネットの活用によるものだけではありません。若い世代のお客さんに響くようなことを、いろいろと行っています。

 例えば、最近ZOZOTOWNはZOZOUSEDという事業を始めました。スローガンは、「あなたのクローゼットを満タンにさせない」というものです。つまり、ZOZOTOWNで買った物を引き取るというサービスです。ZOZOTOWNで買った人たちに中古品を流出させれば、自分の洋服だんすに洋服が余るということはありません。常に自分の着たい物だけがある状態になります。さらに、無駄な物が中古で流通するのですから、ある意味でエコだというわけです。これもまた、企業の姿勢として支持を受けています。


●作ったものを売るのではなく、消費者が求めるものを作る


 このように世界はどんどん変わりつつあります。これを見ているならば、経営者は危機感を持って当然なはずです。こうした変化の中で、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏が出したキーワードが、「情報製造小売業(Digital Consumer Retail Company)」です。ユーザーや顧客の情報をサイバー空間上に集め、それをAIとデータアナリティクスによって分析します。そうすれば、作られたものを売るのではなく、個々のユーザーが求めるものを提供することが可能になるはずです。そのために、あらゆる商品にRFIDが組み込まれるようになるでしょう。

 ただし、こうしたやり方は企業の考え方によって違っています。例えば、Amazonは、RFIDではなく、画像を利用しようとしています。いずれにせよ、デジタルテクノロジーを利用して、その瞬間ごとに個々のお客さんがどういうものを求めているか、予測しようとする取り組みです。その予測は、究極的にはリアルタイムになるでしょう。店ごとの状況を見て、明日何が売れるのかを予測できるようになるでしょう。作ったものを売るのではなく、消費者が求めるものを作るというのが目標になってきます。


●AIはトップライングロースと結びつく


 そこで今、さまざまな実験が始まっています。これは今年の3月に発表された、「ユニクロ情報製造小売業の始まり」(THE START OF DIGITAL CONSUMER RETAIL COMPANY)のディテールです。「サクサク見れてサクサク買える」、「いつでもどこでも」、「あなただけのお店」といったことが目指されています。明らかに、今の若者スタイルに対応しようとしています。若者は友達同士でLINEのチャットをしています。その中に企業も入って、若者世代のお客さんに応えるのです。ただし、LINE上で応えるのは、別に人間でなくとも構いません。AIが利用できます。

 2011年から始まった第3次AIブームでは、当初、AIはボトムラインマネジメント、つまり、コスト削減に有効だと考えられていました。コールセンターにAIを導入する、といった利用法です。それが今では、トップライングロース(売上増加)に有効だと考えられています。例えば、カスタマーエンゲージメント(顧客と企業や製品、サービス、ブランドなどとの深い関係性)にAIを用いるのです。AIへの投資が、直にトップライングロースと結びつくという段階に入りつつあります。これは、経営者にとって、投資家の投資へのバリアをかなり下げることを意味します。このように、現在AIがものすごい勢いで、事業活動を発展させています。

 第3次AIブームが始まってから6年間で、こうした変化が起きています。ただし、正確に言えば、IBMがワトソン事業部をつくったのは、2014年ですから、この3年間の変化です。3年間で、ここまでの変化が進行してきたのです。


●変化に対応するためには、働き方を変えなければならない


 もちろんこうした変化に対応するのは、簡単なことではありません。何か新しいビジネスモデルをやればいい、チャットボットをやればいい、という話ではないのです。会社のあり方を根本的に変えていく必要があります。今までのように、eコマース担当、店舗担当と、担当をばらばらに割り振っていたのでは、駄目でしょう。これらが全てつながっていないといけません。これは、新しい会社のあり方を意味します。

 ユニクロが2017年3月、情報製造小売業を発表したとき、実は同時に強調していたのは、働き方を変えるということでした。ユニクロ自身を根本的に変...
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