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「全員経営」はデジタル時代でも日本企業が守るべき強み

AIとデジタル時代の経営論(7)全員経営・ミドル

一條和生
一橋大学名誉教授
概要・テキスト
確かにデジタル化時代において、日本企業には変革が求められるが、他方で変えてはならない大切なものもある。それは全員経営とミドルアップダウンだと、一橋大学大学院国際企業戦略研究科研究科長・教授の一條和生氏は言う。これらは全員が経営者意識を持ち、主体的に仕事に取り組むことを可能にする、日本企業の強みである。(2017年7月24日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「AIとデジタル時代のリーダーシップ」より、全9話中第7話)
時間:09:36
収録日:2017/07/24
追加日:2017/10/31
≪全文≫

●デジタル時代においても、日本企業が大事にすべきものがある


 次に、全員経営について話したいと思います。ファーストリテイリング代表取締役会長の柳井正氏は、情報製造小売業を目指しています。そのために重要なこととして、彼が挙げているのが全員経営です。

 このように柳井氏は語っています。

「われわれが最も大切にしているのは、世界中の全社員が、『グローバルワン・全員経営』の精神で、情熱的に仕事をすることです。各国、各事業で最も成果が上がったことを、グループ全員で共有して実践する組織です。一般的に小売ビジネスは、マネジャーが考えて指示を出し、店舗の販売員がその指示に従うという組織構造です。しかし、ファーストリテイリングでは店舗のアルバイトからトップ経営者まで、全ての社員が経営者マインドを持ち、自らが考えて、お客さまに最高の商品、最高のサービスを提供するという『全員経営』を実践しています」

 デジタルの大きな変化の時代の中で、日本企業には大きな変革が求められるといいました。しかし、それでも絶対に日本企業が大事にすべきものがあります。それを崩してはいけません。GE(ゼネラルエレクトリック)はバリューシステムをbeliefに変えましたが、それは日本の知識創造理論から、そして日本企業から学んだことです。GEは、日本の企業からとても学んでいます。しかし同時に、絶対にGEの本質を変えてはいません。

 日本の過去、失われた何十年かの中で反省すべき点は、これなのではないでしょうか。つまり、日本企業は一生懸命できていないことを学ぼうとしたのですが、同時に、日本企業にとって大事なことを忘れてしまったように思います。


●日本企業の素晴らしさは、個の人間の尊重にある


 その1つが、全員経営です。全員経営は、決してユニクロの専売特許ではありません。日本の優良企業はどこも、全員経営でやっていると思います。全員経営とは、現場にいる第一線の社員も、経営者のマインドセットを持って、主体的に仕事をするということです。

 例えばトヨタは、ラインを止めて、カイゼン活動することを工員に許すことで、世界一になりました。これは、従来の経営方法ではあり得ないでしょう。GMでは、ラインを止めた社員はクビです。「工員は、そんなに頭が良くない。会社のためになんか、一生懸命に仕事をしない。だから、工員にそんな仕事を任せ...
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