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サービソロジーによるサービスイノベーションの具体的事例

サービソロジーと経営(5)価値提案から利用価値共創

村上輝康
産業戦略研究所 代表 
情報・テキスト
産業戦略研究所代表の村上輝康氏が、サービソロジーによるサービスイノベーションについて具体的事例をもとに解説する。第一弾は個人の訪日外国人旅行客のニーズに応える旅行プラン作成支援ツールの開発についてだ。提供者による一方通行の「価値提案」ではなく、利用者の「事前期待」に柔軟に応えることで「利用価値共創」を可能にした好例である。(全9話中第5話)
時間:12:11
収録日:2017/10/12
追加日:2017/11/27
≪全文≫

●途切れたサイクルをつなげて問題解決へ導く


 サービソロジーは、優良事例を模倣するのではなく、サービスイノベーションのプロセスを自ら生み出そうとする事業者に対して、科学的・工学的なアプローチによる多様な知見、あるいは手法を整備しつつあります。サービソロジーによるサービスイノベーションの事例について、国の研究開発である「スフィア(S3FIRE、問題解決型サービス科学研究開発プログラム)」の事例を中心にしながら、シリーズでお話をしていきたいと思います。

 サービソロジーの中では、サービスイノベーションは利用者サイドの「利用価値共創」のサイクルが提供者サイドの「経験価値共創」のサイクルにきちんとつながって、それがマーケットでの「交換価値」の実現につながる、一回り大きなサイクルを持続可能にする、ということでした。

 しかしながら、通常のサービスというものはどんなに優れたサービスでも、なかなかそういうわけにはいきません。どこかが弱かったり、途切れていたり、あるいはつながっていなかったりしているのです。サービソロジーはそうした弱いところや途切れているところ、あるいはつながっていないところに対して、可視化・構造化・最適化という科学的・工学的な手段を準備することによって、問題を解決しようとしているわけです。

 これからシリーズでお話をしていくに当たり、お断りしておきたいのは、こうした場合、目覚ましいサービスイノベーションの事例をお話しすることが多いかと思いますが、私がこれからお話ししようとするのは、その目覚ましいサービスイノベーションの事例を創っていくためにはどのようなことをしなければいけないのか、というお話だということです。


●訪日外国人向け観光サービスに見る価値提案事例


 まずは、価値提案からです。あらゆるサービスイノベーションは、提供者からの新しい価値提案で始まります。ここでの課題は、「これまであまり馴染みのない、良く知らない顧客に対しては、どのように価値提案をすればよいのか」という事例です。これについては、スフィア(S3FIRE)の東京大学・原辰徳准教授のプロジェクト(プロジェクト名:「顧客経験と設計生産活動の解明による顧客参加型のサービス構成支援法」)で外国人向けの観光サービスの問題を扱っています。これにはJTBと首都大学東京が参加しました。

 訪日外国人数は2016年に2400万人を超えたということで、政府は2020年までに4000万人という非常に野心的な目標を設定するまでになっています。しかし、この原プロジェクトがスタートした2010年当時は、たった800万人程度しか訪日外国人がいませんでした。さらに翌2011年には東日本大震災があり、訪日外国人数を2000万人、2500万人と増やしていくといった目標はとても無理なのではないかということで、目標達成が危ぶまれていたところでした。

 そうした中、これまでの大量送客型の団体旅行に依存し続けるということはすでに無理があり、個人手配の訪日外国人がどんどん増えていくというところに合わせていかなければならないという課題への対応が、この時期には急務だったのです。


●新たな顧客層に対応する新ツール「CT Planner」を開発


 それに対して、東大とJTBのチームは何をやったかといいますと、対話的な外国人の旅行プランの作成支援ツール「CT Planner」を開発しました。これまでJTBのような大手旅行会社があまり対象にしてこなかった個人旅行者という顧客に対して「価値提案」を行うため、旅行会社のカウンターというチャネルではなく、パソコンやスマホといったデジタルネットワーク上でサービスをするという選択をしたのです。

 個人旅行者はこれまであまり相手にしなかった顧客ですから、どのようなコンテキストをもっているかよく分かりません。そうした個人客を相手にすると、コンテキストがどんどんめまぐるしく変わっていくことに対応しなければなりません。それには、そうした顧客の「事前期待」に十分に応えるための、きめ細かな旅行プランの作成が必要であり、そのプランを柔軟に変更できるようなコンテンツを創らなければならない、という課題がありました。それに対して、CT Plannerで応えようとしたのです。


●基本情報の選択からスタートし、対話型でニーズに対応


 このCT Plannerでは、まず「地域と都市」を選定するところから始まります。次に、電車・バスを使うのか、徒歩なのか、車を使うのかという「旅行モード」と、「出発点」と「終着点」、そして、基本的な旅行スタイル、つまりいろいろな体験をしたいのか、街歩きをしたいのか、温泉に入ってリラックスしたいのか、ローカル文化に触れたいのか、子ども連れなのか、といった基本的な「旅行スタイル」を選んでもらいます。これだけでCT ...
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