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Airbnbはなぜこの短期間に急成長できたのか?

サービソロジーと経営(9)持続的サービスイノベーション

村上輝康
産業戦略研究所 代表 
情報・テキスト
産業戦略研究所代表の村上輝康氏が、サービソロジーによるサービスイノベーションの事例を紹介していく。最終話の今回は「持続可能なサービスイノベーション」として、airbnbを取り上げる。(全9話中第9話)
時間:18:16
収録日:2017/10/12
追加日:2017/12/01
≪全文≫

●一回り大きな「持続可能」なサイクルを達成するために


 サービソロジーによるサービスイノベーション事例をこれまで(シリーズ後半4回に分けて)お話ししてきました。第1回では、価値提案について原プロジェクト。第2回では、利用価値共創についてアシックス、満足度評価について藤村プロジェクト。第3回では村井プロジェクトを通して、価値発信と学習度評価について。第4回では経験価値共創について浅間プロジェクト、知識・スキルの蓄積について良品計画を例に取ってお話ししてきたわけです。

 次は「交換価値」ということになるのですが、交換価値に関わるリターンやコストの議論は、いわゆるビジネスモデル論でこれまでさんざんいろいろな角度からやられていますので、ここでは割愛したいと思います。

 全体を見ていただくと、これまで私がお話しした事例はどれも、ニコニコ図の一部にイノベーションをもたらすための仕組みとなっています。村井プロジェクトの場合は、経験価値共創については非常に広く行われていますが、利用価値共創には手を出していません。逆に原プロジェクトでは利用価値共創は行っていますが、経験価値共創には言及していません。

 シリーズの冒頭に申し上げたように、利用者サイドの利用価値共創サイクルが経験価値共創サイクルにつながって、それがマーケットで交換価値実現のサイクルにつながることで形成される、一回り大きなサイクルが持続可能になる。この全体を確立するのが、サービソロジー的なサービスイノベーションであるわけですが、これまで紹介した研究事例の中にそういうものはなかったということです。

●シームレスなサービスモデルを確立した「airbnb」


 そこで、すでにこのサービスモデルを具体的に実現しているケースのお話をさせていただこうと思います。それが「airbnb」のケースです。民泊やシェアリングの事例として、すでに非常に有名になっている会社です。

 ご案内の通り、airbnbは、個人事業主であるオーナー(ホストのこと)が、自分の家や部屋を、自分が利用しない間、適度な値段で宿泊先を探している顧客に貸し出すことを可能にする、マッチングのプラットフォームを提供する、いわゆる民泊サービスの非公開企業です。

 2008年に設立されて以来、この会社の事業は驚くべきスピードで成長しています。私は、設立7年目の2015年にサンフランシスコの本社を訪問しましたが、この段階ですでに192カ国、33,000の都市で80万以上の客室数を提供、3,500万の宿泊数を持つ、押しも押されもせぬグローバル企業に成長していました。

 この企業は非公開企業であるため、外部の報道による数字しかなく、正確性に欠ける部分はあります。客室数について、私は80万と聞きましたが、今は120万とも150万ともいわれます。宿泊数も、もう4,000万を超えているという報道も行われています。

 この会社がこれほど短期間に急成長したというのはどういうことなのか。そのことについて、ニコニコ図のサービス価値共創フレームワークで見ていきたいと思います。


●airbnbのサービスモデル(1)送り手、受け手、コンテンツ


 airbnbの「送り手」は、空いている居住資産を有効活用して収益を得たい「ホスト」と呼ばれる個人事業主と、グローバルなマッチングプラットフォームを運営する非公開企業であるairbnb、この二つがセットになっています。

 「受け手」は、ホテルでは飽き足らずホステルも嫌だという、通常のホテルとは異なる宿泊体験をできるだけ安価にしたい旅行者です。

 「コンテンツ」は、そうした通常のホテルでは味わえない多様な宿泊体験を実現することです。つまり、ホテルのルームサービスやジムはいらないが、6人部屋でノミやシラミが出てきたりするホステルも嫌で、その中間を求める多くの顧客の願いをかなえることなのです。また、airbnbはグローバル展開をしているため、ホテルとホステルの間というだけでなく、多様でユニークな価値を提案することになっています。例えば、ツリーハウスやヨーロッパの古城、スイスのシャレー、ビバリーヒルズにある映画スターの豪邸、あるいはヨットハウスやトレーラーハウス、蒙古のパオなど、いろいろな宿泊体験ができるようになっています。


●airbnbのサービスモデル(2)チャネル、コンテキスト、利用価値共創


 「チャネル」という面では、ユーザーインターフェイスの非常に良い、デザイン性に優れた宿泊情報マッチングのグローバルなプラットフォームで、可能な限りスマホを活用しています。創業者の一人であるブライアン・チェスキー氏がデザイナーでもあることから、この会社はデザインに非常に気を配っています。

 「コンテキスト」の面ですが、192カ国に客室があり、文化、慣習、法規制などいろいろなものが異なる、多彩な国...
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