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鎌倉時代の日本刀が圧倒的価値を持つのはなぜか?

刀匠・松田次泰に聞く―日本文化と日本刀(2)名刀に挑む

松田次泰
刀匠
情報・テキスト
刀匠・松田次泰氏が、奥深い日本刀の世界を語る。そこには、日本刀ならではの美術品的価値や、鎌倉時代の刀を目標にしてそこに挑んできた苦労など、刀匠だからこそ尽きない想いがある。(全14話中第2話)
時間:12:15
収録日:2017/03/22
追加日:2017/12/07
ジャンル:
≪全文≫

●日本の美術品が持つ思想・哲学を外国人が評価できるのか


質問 外国製の刀が日本に入って来るという問題に対して、日本刀を海外に打って出るということも多分に考えられます。日本刀を外国に出す意味について、どのようにお考えになっていますか。

松田 そのあたりにまた1つ問題があるのです。外国で評価されたものが逆輸入されたら日本でも評価されますよ、と皆が言うのです。でも、実はそんなに簡単なものではありません。外国でできた芸術品は、外国で評価されると日本でも簡単に評価されます。ところが、日本でできた美術品を外国人がいくら評価しても、日本で評価されるとは限らないのです。

 そこに何が問題としてあるかというと、日本でできたものというのは、そのできた当時の思想や哲学が、明確に反映されるのです。それを外国の人が理解できるのかという問題です。


●異文化理解で必要なのはお互いを認め合うこと


松田 今、一番問題になっているのが相撲です。私は白鵬関の土俵入りの刀をつくっていて、白鵬関にも何回か会っています。すごくいい人です。とても人に気を遣いますし、何とか日本の文化を理解したいということで、非常によく勉強しています。ですから、しめ縄や神棚、土俵などがあって、「これはどうしてですか」と聞くと、ちゃんと説明してくれます。でも、本当に分かっているのかと思って、少し突っ込んで聞くと、逆に聞き返してきます。一生懸命勉強したいからです。

 ですから、日本でできたものは、やはり、こういう言い方をしたらいけないのかもしれないけれど、日本人にしか理解できないのではないか、と思ってしまいます。それは逆に外国の文化もそうで、建築の場合、私が外国のお城や庭などシンメトリーのものを見ても、美しいとは全然思いません。では逆に、日本の庭園などを外国人が見て理解できるかというと、説明書に書いてあるから分かるかもしれませんが、本当に理解しているのかどうかが分かりません。

 でも、別にそれはそれでいいのではないかと思います。そこは真似をしなくても、日本のことは日本人に任せてくれればいい話であって、外国のことはその国の人がやればいいのです。つまり、お互い認め合って、買ったり売ったりしていけばいい話だと思います。

 日本刀ですが、実は外国にいいものはほとんど流れていません。明治時代に結構外国に出ていっているようですが、その時でも相当考えて出しているのです。


●現代の日本刀コレクター事情


質問 日本でつくられている日本刀は高価だというお話ですが、実際にどのような方が購入されているのでしょうか。また、現代刀の持つ意味、日本刀の美しさについてお聞きしたい。

松田 まず、戦前までは、三井や三菱など財閥系のお金持ちの人が日本刀を所有していました。今、国宝や重要文化財に指定を受けているようなものもそうです。それが戦後、世の中へ出てきたので、個人で購入したり、あるいは戦前買ったものを相続税などいろいろと税金の関係があるため美術館や博物館で一般に公開して見せるというようなことが行われました。その中に、だんだんと刀を増やしていったのですが、中にはある程度昔から評価されている刀をコレクションする人たちと、私たちがつくっているような現代刀を集めてくれる人がいるわけです。


●室町時代に美術品的価値による刀のランク付けが確立


松田 ところが、私たち現代刀匠にとってお客にならないのが、実はコレクターである愛刀家なのです。なぜかということを説明します。

 刀の基準は大体鎌倉時代のものからランク付けされています。室町時代には足利幕府が美術品としてきちんとランク付けしたり、陶器などは中国のそうしたランク付けをそのまま参考にしているわけです。それを破ったのが千利休で、そのランク付けの中に日本のものが入ってくるようになります。そうしたことで、刀も室町時代にきちんとしたランク付けがなされたのです。

 なぜそうしたランク付けがなされたのか。室町時代というのは歴史的にはほとんど戦争をしていた時代ですから、武将が働いてくれた者に対して恩賞をやらなければいけません。そうすると、一番は土地なのですがそれも限りがあるので、美術品にものすごい価値を付けて、土地の代わりに褒美とするわけです。


●圧倒的価値を持つ鎌倉の刀は手の届かない目標


松田 だから、そういう美術品レベルのものがものすごい値段でもって価値付けされています。そうしたことが理由になっているわけですが、では今のランク付けの中で現代刀はどういう位置にあるかということになってきます。鎌倉時代の刀がなぜ価値があるかというと、再現できないからです。再現した人もいません。

 例えば、江戸時代の刀は新刀といいます。私も最近知ったのですが、文化・文政期あ...
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