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介護施設に流れる膨大な額の補助金、老老介護の現実

高齢化と財政危機(17)介護をめぐるさまざまな課題

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、社会保障制度の問題点のうち、介護分野について解説する。介護士がどこまで介護をするべきかを決める権限の問題に始まり、介護施設に流れる膨大な補助金をめぐる争い、さらには老老介護の問題まで、効率的で安心な社会保障制度の構築には、課題が山積している。(全24話中第17話)
時間:09:42
収録日:2017/10/05
追加日:2017/12/13
≪全文≫

●高齢化による費用を介護費用が上回っている可能性がある


 介護についても見ましょう。介護も現業サービスであり、医療と非常に共通性があります。2000年に介護保険制度が創設されました。急速な高齢化に対しておっとり刀でつくったのですが、もちろんこの制度の必要性を疑う余地はありません。ただし、高齢化に伴って介護需要がどんどん増えていき、コストも急増します。

 この図を見れば分かる通り、介護保険制度が2000年に導入されて以降、介護費は増加し続けてきました。特に2010年前後に急増しています。高齢化には波がありませんから、高齢化による費用を介護費用が上回っている可能性があるのです。

 これについて、日本経済新聞が大変参考になる記事をシリーズで出していますが、その中に次のような指摘がありました。介護士にご飯を作ってもらうことが是か非かという問題があります。自立するためにはなるべく自分でご飯を作った方がいいのですが、どうしても自分でご飯が作れない要介護者もいます。実際、介護士を家政婦代わりに利用することを認める自治体も増えてきています。しかし、介護士を家政婦代わりに利用しても良いのかどうか、自治体には実はコントロールする権限がありません。ケアマネジャーという国家資格を持った人が事業者と結託すると、何でもできてしまうのです。やはり介護保険制度は急速に拡大した制度なので、修正する点も多くあります。

 国民の負担能力には限界があるため、一定の制約の中で最大限の安心を提供するには、限られた資源をできるだけ効率的に、厳密に使う必要があるでしょう。


●膨大な公費が介護産業に消えている


 さらに介護施設にも問題があります。介護施設は、子育ての施設と同様、建設費として、国と地方から最低でも半分の補助金が支給されます。しかも、資金がほとんどないとか、人口が多いなど、さまざまな理由をつけて通れば、9割も補助金を得ることができる場合もあるのです。例えば、10億円の建物を建設するとなると、9億円が国と地方から支給されるということです。あるいは、運営費の7~8割も支給されます。

 例えば介護費は、標準的に月38万円程度かかります。これは介護施設の入所者にとって相当な負担であり、出費できる人は多くありません。要介護者は安定的な雇用がなく、健康を害して病気を患っている場合も多い。こうした人の年金額はものすごく少なく、最大限で5万円程度しかない場合もあります。その5万円が介護費として施設に支払われることになります。不足分の33万円を、施設は国から補助金として支援してもらいます。つまり介護施設は、介護費用38万円のうち、9割を国から補助してもらっているということです。その結果、膨大な公費が介護産業に消えていきます。しかし、介護事業者からすれば、ここう言っては何ですが、大変おいしい事業になっているのです。


●新規事業者を排除する傾向が強い


 介護施設の認可を出すのは、地方自治体です。3年に1度、自治体は地域福祉計画を作成します。人口の変化や高齢者の増加、病歴のある人の数などを精査し、地域ごとに新しい介護施設がどのぐらい必要かを決定します。そして事業者を決めるに当たっては、血で血を洗う政治闘争が行われるということです。おいしい商売ですから、応募者が殺到するのです。

 育児の分野と同様に、介護の分野にも民間が随分入ってきました。日本には社会福祉法という法律があり、公の支配に属している民間として、社会福祉法人が介護施設を運営しなければなりません。憲法89条は、公的支配に属さない教育、宗教、福祉の団体には公金を出してはならないというものです。この条文との整合性を持たせるために、公的支配に属している民間法人として、社会福祉法人が作られました。

 介護施設は、国から得た寄付や補助は、介護施設を閉鎖する場合には返還しなければならないし、あるいはそれらの資金を他へ投資することは禁止されています。これが公的支配に属しているという意味です。しかし他方で、公的支配に属しているという名目で、介護施設にはどんどん補助金が配られてもいます。そのために、民間の業者が殺到するのです。

 しかし、民間の業者が介護施設事業者となるには、自治体の審査会の認可が必要です。審査会のメンバーは、半分が役人、もう半分が有識者、つまり福祉法人の経験者からなります。そうすると、新規事業者を排除する傾向が発生するのです。仮に認可された民間事業者があっても、関係者からの脅迫の手紙が来るなど、大変な経験をする場合があるそうです。実際にそうしたケースを、経験者から聞きました。日本の福祉は徐々に良くなってきてはいますが、やはりいまだに伝統的な因習が残っています。

 こうした問題を解決するためには、バウチャー制度を導入すべきだ...
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