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日本が取り組むべき最大の政策は消費税の引き上げだ

高齢化と財政危機~その解決策とは(18)長期的で小刻みな消費増税

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏によれば、今取り組むべき最大の政策は消費税の引き上げである。確かに増税による消費の冷え込みは懸念事項だが、長期的に小刻みに増税をしていけば、増税ショックを緩和できる。少なくとも20パーセント以上の消費税率がなければ、財政再建は不可能だ。(全24話中第18話)
≪全文≫

●失われた20年、社会保険料は減少傾向にあった


 さて、いよいよ、これまでずっと考えてきた問題を総括し、この国をどうすればいいのか総合的に考えていく段階に来ました。これまで学んできたことを一瞥しておきましょう。高齢化が進むとともに、日本は財政危機に直面します。1990年代の初めまでは、日本の財政は国際的にも最優等生でした。ヨーロッパ諸国よりもはるかに財政状況は良かったのです。ところが、1990年代中盤から急速に悪化し、2000年代に入ると日本は世界でも突出して最悪の状態になりました。

 そこには2つの大きな要因があります。第1に、この時期は失われた20年といわれました。ほとんど経済が成長しない長期停滞であり、しかもデフレです。賃金は上昇せず、むしろ名目賃金が下がりました。社会保険料は賃金と連動していますから、社会保険料も増えず、むしろ減少傾向です。


●90年代には、社会保障費を国債に依存するようになった


 第2に、急速な高齢化です。医療・介護費や年金といった社会保障給付費が、当然急速に増大します。それを賄うために、賦課方式によって、将来世代の負担を増やしてきました。

 日本の年金はもともと積立方式でしたが、70年代に修正賦課方式になり、73年には田中角栄内閣の下、「福祉元年」と称して、給付額がかなり引き上げられました。田中総理は経済成長を優先し、社会保険の拠出額の引き上げを後回しにしていましたが、翌年から日本経済はオイルショックで急転、拠出増大を訴えることもできなくなったのです。そのため、社会保障の給付と拠出の開きが「ワニの口」のように、開いていったのです。

 80年代になると、賦課方式が本格化し、積み立て分はどんどん少なくなってきます。さらに90年代になると、社会保障費を国債に依存する以外に方法がなくなりました。政府は最初から国債発行を見込んで予算を作るようになります。90年代後半にはついに、予算の作成の際、いきなり国債を40兆円も発行するという、異常な事態に陥りました。これが財政危機をどんどん深めてきたのです。


●危機的な状況を克服するには、3つの基本的な方式がある


 こうした危機的な状況を克服するには、3つの基本的な方式がありました。第1に増税、第2に歳出改革、第3に経済成長です。

 第1の増税については、安倍晋三内閣は消費増税を2度にわたって、4年間も延期しました。経...
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