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今の日本の最大の課題は憲法改正ではなく財政再建だ

激変しつつある世界―その地政学的分析(9)日本人の意識

中西輝政
京都大学名誉教授
概要・テキスト
歴史学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏は、今の日本の最大の課題は憲法改正ではなく、財政再建だと主張する。そこには恨みというものに対する日本人の意識が絡んでくる。このまま経済格差が進めば、極右が台頭する危険性が出てくるし、反皇室意識が高まってくることも懸念される。(全10話中第9話)
時間:08:48
収録日:2017/05/16
追加日:2018/01/15
≪全文≫

●日本人ほど被害者意識から来る反発心が強い国民はない


質問 これから日本人の価値観が変わっていく中で、同じ時期に米中が親密な関係になれば、日本人はアメリカに裏切られたという感覚を持つのではないでしょうか。2020年代はどうなっていくでしょうか。

中西 これまで考えないようにしてきたこと、あるいは先延ばしにしてきたことが、全部重なってくるのが2020年代だと思います。それらがつけのように、全部来ることになります。昭和のあの戦前の頃、日本人は暴走しました。これも実は日本の国民性です。韓国は恨(はん)の文化ですが、日本の方が恨みは強いのです。

 韓国人は、いつまでもしつこく言ってくるように見えますが、それは一つの感情のはけ口とでもいえるかもしれません。実際には、あっけらかんとしています。その意味で、韓国の恨は陽性です。しかし、自分が虐げられた、裏切られたという被害者意識から来る反発心の強さでは、日本人ほど強い国民はありません。アメリカとの戦争が始まった時、負けると分かっていた人もいたでしょうが万歳を叫びましたし、青空が見えたと言った作家までいたわけですから。これほど怨念の民族はいません。

 その背後には、性善説的な価値観があります。人は正直で、お互いに本当のことを語り合い、平等で和気あいあいと暮らしていく、という価値観です。こうした意識を持った民族が、いったん裏切られ、転落して本来いた場所からはじき出されたとき、その恨みの感覚はいっそう強くなるでしょう。他の国民性では考えられないほど、大きな抵抗を生み出すことになります。強い摩擦を引き起こす根本的な原因になるでしょう。

 庶民の中ではじかれた人であっても日本人は優秀です。欧米のように、誰が見ても落ちこぼれの人がはじき出されるわけではありません。何らかの分岐路でちょっと選択を間違えただけで、本当に大きな格差になってしまいます。そうした人たちは優秀なだけに、反発したときにはいっそう厄介です。昭和初期の極右団体の運動家も、非常に優秀な人たちです。


●虐げられたと思っている人たちが反皇室になる


 さらに、日本には直接行動の文化も明治維新、幕末維新以来あります。いろいろな側面はありますが、坂本龍馬はいまだにヒーローです。日本で何か直接行動が起こる可能性も、少しは考えておくべきかもしれません。特に政治家はそうでしょう...
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