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戦前のリーダーシップの変質に迫る鍵は「歴史の捉え方」

敗戦から学ぶ戦前のリーダーシップ(2)エリート論と歴史の検証作業

齋藤健
衆議院議員 経済産業大臣
概要・テキスト
『蹇々録』(陸奥宗光著、中央公論新社)
日本の敗戦から学ぶとき、歴史をどう捉えるかということが大事なテーマとなる。そこに、戦前のリーダーシップが変質した理由に迫る鍵がある。エリートに必要なものを挙げながら、歴史の検証作業について齋藤健氏が語っていく。(後編)
時間:06:45
収録日:2014/02/18
追加日:2014/06/12
≪全文≫

●エリートには、「マドリングスルー」に耐える強靭な精神構造が必要


齋藤 イギリスのエリートのあるべき姿の言葉に、「マドリングスルー(muddling through)」という言葉があります。中西輝政先生がよく言うのですが、要するに物を進めるというのは、泥の中で足を取られながら一歩一歩行くということで、物が順調に進むことなどないということです。それが、マドリングスルーということで、全ての物が実現するのは、マドリングスルーだというのです。エリートには、そのマドリングスルーに耐える強靭な精神構造が求められていて、足を取られたから、もうやめるということではなく、それでも前に進む。それがエリートのありようだというわけです。

私は、マドリングスルーよりもっと近いものがあると思ったのは、「匍匐前進(ほふくぜんしん)」です。重い荷物を背負って、立ち上がると撃たれてしまう。今がそうです。農林は大変で、立ち上がると撃たれてしまう。ジリジリという感じで、苦しい。匍匐前進とは、そんな印象で、マドリングスルーよりも大変です。立ったら撃たれてしまうわけですから。


●表向きだけが残るのが歴史、ゆえに想いに迫る検証作業は必要である


―― インタビューしながら、自分でも残しておこうかなと思っているのですが、日本というのは、相当いい加減で、まともな自伝を書けるような筆力を持っている人はおらず、陸奥宗光氏の『蹇々録』くらいで終わっているわけです。あとは、適当に都合のいいことを書いてしまう。

また、政治学自体が進んでいないです。何があったのかということを、役所の側からメモリアルとして書くわけにもいかないですが、そういうものがあると、やっぱり全然違うと思います。

齋藤 今の神藏さんの話を聞きながら思ったのは、歴史というものをどう捉えるかという時に、そのことをやった人の本当の想い、心の中というのは分かりませんよね。冒頭で述べたようなものもそうだし、先ほど少しつまらない例で申し上げた「なぜ高い目標を設定するか」ということも含めて、本当のことを言ったらできなくなってしまうから、本当のことを言わないで、物事や歴史は積み重なっていくわけです。

ですから、政治家という立場の人で、過去の出来事を見ながら、「この人の本心はきっとこうだったに違いない」ということを見抜ける、想像できる、という人が、歴史...
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