10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

情報革命はマテリアル革命にも影響を及ぼす

マテリアル革命(1)マテリアルの重要性と可能性

岸輝雄
新構造材料技術研究組合(ISMA) 理事長/東京大学名誉教授/外務省参与
情報・テキスト
50年以上マテリアル開発に携わってきた、東京大学名誉教授で新構造材料技術研究組合(ISMA) 理事長の岸輝雄氏が、マテリアルの重要性とその可能性について解説する。岸氏は、現代は情報革命がいろいろなところで起きているが、そのことが「マテリアル革命」に大きく影響していると語り、現在の材料開発の大本となった研究の一端を紹介する。(全5話中第1話)
時間:09:32
収録日:2017/11/30
追加日:2018/03/29
≪全文≫

●マテリアルの重要性が増してきた


 皆さん、おはようございます。ご紹介いただいた岸輝雄です。

 今日は「マテリアル革命」という素晴らしい講演の題名をいただいています。材料とは50年ほどお付き合いをしているのですが、大体地味で縁の下の力持ちだったのです。ですから、あまり派手に「情報マテリアル」と言われると、少し歯がゆいような気もします。ただ50年の経験の中で年数がたつにつれて、マテリアルの重要性が増してきたかなというのが本当の実感です。今日は少し大きな題材にはなりますが、マテリアルの現状と未来に向けた話をしたいと思います。


●MIを用いたマテリアル革命とそれを支える情報革命


 話は非常に単純で、狩猟時代、農耕時代、工業時代、その後、情報の時代が来て、間違いなく情報革命がいろいろな形で起きたと思います。それがここ20年ほど世界中を席巻し、現在もまた非常に大きな中心になっているのは間違いないと思います。

 それに対して、実際に情報を支えるという意味で、デバイスをはじめとして物がないと情報は前に進めません。また並行して衣食住、モビリティー、それから家電製品その他を含めて、実際の物がないと社会は成り立ちません。ここが本当に革命的であるのかどうかという問題はあるのですが、マテリアルズインテグレーション(MI)を用いて一つの革命が今後、期待できるのではないかという意味を込めて、「マテリアル革命」という言葉を用いている次第です。

 この場合のマテリアルとは、物質や素材、材料、またデバイス、部品、部材などを一括したものだとご理解ください。要するに、ものづくりを支えているマテリアルという意味です。

 それから急に「MI」という言葉が出てきました。これはマテリアルズインテグレーションの略で、マテリアルインフォーマティックスといっても構わないのですが、実験や、実験に加えて計算科学を融合した、ある意味のデータ科学のことです。要するにコンピューターを十分に利用したデータ科学を入れるという意味で、「MIを用いた」という言い方をしています。

 これを支える背景なのですが、なんといっても材料から見ると環境エネルギー、資源、特にレアアースレアメタルが大きな課題になります。それと材料そのもののリサイクルの循環社会ができるかということが後ろに来ると思います。ですから大事なのは、マテリアル革命を支えるのは情報革命であるということで、やはり情報革命が非常に大きな役割を持って、マテリアル革命にも影響を及ぼすのだと理解していただければ幸いです。

 以上のようなことで、大体、今日話すことはここで尽きているのです。ですから、優しい話だとご理解ください。この後、30枚近くパワーポイントのスライドが出てきますが、気軽にお聞きいただければと考えている次第です。


●小さく壊して破壊抵抗力を高めるという逆転の発想




 こちらが私の主な履歴です。今回は「三菱総研フォーラム2017」なので、三菱財団の理事を8年間やっていることを付け加えました。

 私の古い仕事なのですが、一つだけ紹介をしたいと思います。今、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、そしてJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)で一番大きなプロジェクトが材料に関するものです。それがダイレクトに私がやってきたことにつながっているので、少しだけ説明させていただきます。



 このスライドは材料を表しているのですが、ここにクラックという割れがあります。これを引っ張るとこの割れがどんどん進展していきます。でも、ここには応力集中というものが起こるので、それによって必ず弱いところに小さいマイクロクラック、すなわち微少な亀裂が生じていきます。材料によっては、特に強い材料ですが、マイクロクラックの数が増えると、破壊靱性(破壊の抵抗)が高くなるのです。要するに、小さくうまく壊すと、案外いい材料ができてくるということで、30年ほど前に「Fail Safe Materials」という名前を付けています。これは小さく壊して破損を防ぐということで、破壊の抵抗、要するに靱性が向上するという意味です。これが一つの仕事だったわけです。これを元に材料開発を進めてきました。


●データ解析による「逆問題」の重要性


 もう一つあります。材料の中で割れが起きるというのは地球の中の地震と全く同じで、超音波である弾性波が伝播します。それを表面でディテクト(探知)するわけです。ディテクトした信号V(t)とは、波の伝播特性(グリーン関数)と計測系の応答関数のかけ算でもいいのですが、空間と時間に対するコンボリューション(畳み込み)で表されます。出てきた信号から元の割れ、例えば小さな割れの...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。