10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

マテリアルズインテグレーションとは何か?

マテリアル革命(4)マテリアルズインテグレーション

岸輝雄
新構造材料技術研究組合(ISMA) 理事長/東京大学名誉教授/外務省参与
情報・テキスト
東京大学名誉教授で新構造材料技術研究組合(ISMA) 理事長の岸輝雄氏が語るシリーズレクチャ「マテリアル革命」。第4話ではマテリアル革命の中核を成す「マテリアルズインテグレーション(MI)」について解説する。MIとは、材料開発におけるハードとソフトを計算科学的に結び付けることであり、順問題、逆問題双方向でさまざまな開発が可能になるという。(全5話中第4話)
時間:08:44
収録日:2017/11/30
追加日:2018/04/03
≪全文≫

●材料開発の難しさ


 ここまでお話ししたのが材料開発についてです。マテリアル開発で最も重要な「マテリアルズインテグレーション(MI)」を説明したいと思います。



 これは、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)でプロジェクトとして始めたもので、毎年10数億円のお金を投資しています。正直言って難しいので、なかなか簡単に答えは出てきません。何が難しいかというと、いろいろなデータを時間のスケールと空間のスケールを考えて一気通貫につなぐというところにかなりの力を割かなければならないということで、そこが非常に大きな点だとご理解ください。

 そこで、「材料とは何か」という点が挙げられます。これに関してはこの数十年変わっていません。「なぜ、どんな構造で、どんな組織の材料をつくるか」という構造組織の問題。また、「どんな作り方をするか。あるいはどんな性質を持っているか。熱的性質、電気的性質、力学的性質」といった性質の問題。最終的には使われてこそ材料なので、そのパフォーマンスも問題になります。機能材料でも同じなのですが、構造材料では、例えば時間に依存する破壊は時間が絡んでくるから難しいのです。疲労とか、あめのように伸びるクリープ(物体が時間とともに変形していく現状)、応力腐食というものが大事になりますし、それと同時に、コストや環境、CO2排出などのLCA(ライフサイクルアセスメント)やリサイクルの問題があります。そして元素戦略といいますが、レアアースレアメタルをどうサプライチェーンするか、何かに置き換えるか、という点が非常に大きな課題になってきます。


●材料を本当に使いこなすにはインテグレーションが鍵


 材料開発を進める上で支援的なツールとして最も大事なのは、一つが先端的な計測として光学電子顕微鏡とX線解析です。それに対するものとして、もう一つが計算科学で、AIやビッグデータを入れることが大事になります。すでに「マテリアルズインフォマティクス」という言葉が出ていますが、ある意味のこの研究の親分でもあるアメリカのKrishna Rajan氏などに言わせますと、「マテリアルズインフォマティクス」とは材料の構造と性質を主に第一原理の計算で結び付けることだと言っています。これは彼の論文にも書いてあることです。

 ただし、本当に構造材料的に材料を使いこなすには、構造・性質・パフォーマンス・プロセスの全体を結び付けないといけません。ということで、インテグレーションによるマテリアル革命を目指すという意味で「マテリアルズインテグレーション」という言い方をしています。ですから、マテリアルズインフォマティクスは構造と性質の部分が内包されていると考えていただきたいと思います。

 大事なのは、実験的なハード(モノ・アトム)の情報、それからソフト(デジタル・ビット)の情報がデータベースに入ってきて、それを計算科学的にもう一度インテグレーションするということで、それがマテリアルズインテグレーションだとご理解ください。今後の材料開発はソフトの部分が推進することによって、開発時間を短縮して、大きなマテリアルズ革命につながるだろうと考えている次第です。


●材料研究開発における順問題と逆問題




 全体的な話は大体通じているのですが、部分的にはこれからです。たくさんモジュールをつくり、組織を予測して、それからデータをため込んで、時間・空間・分解能との整合性を取って、最終的な性能の予測システムをつくります。逆に性能予測システムで材料をつくりたいというときには、これを逆問題として捉え、組織予測システムに落とし込んで、どんな成分のどんな作り方をすればこういう材料ができるかを考えます。ですから、組織予測システムから性能予測システムに行くのは順問題で、性能予測システムから組織予測システムに行くのが逆問題になります。そういうものの完成を目指して今、研究開発が始まったところです。



 今、クリープに関するシステムを作って将来、応力腐食や寿命が問題になる電池にどう応用するかということを考えている次第です。ということで、ここは順問題、逆問題という意味で説明をしました。


●マテリアルが目指す方向性はSDGs




 まとめになります。石器、土器、青銅器、鉄器時代ということで、文明の発達は大体材料の名前が付いていたのですが、その後、鉄鋼が産業革命、アルミ合金が飛行機、高分子が日用品、セラミックス・半導体が情報革命を生んできたということで、50年ごとぐらいに新たな材料が開発されてきました。

 これからどうなるかなのですが、有機のカーボ...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。