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航空機の安全に関する2つの最新研究

航空機事故ゼロをめざして(12)最新の研究動向

鈴木真二
東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授/福島ロボットテストフィールド所長
概要・テキスト
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が、航空機のさらなる安全へ向けた最新の研究成果を解説する。鈴木氏の研究室では、ニューラルネットワークの手法を用いて、着陸時の操縦法や故障時の自動飛行をコンピューターに学習させてきた。最新の情報技術によってどこまで飛行の安全を確保できるのか。(全12話中第12話)
時間:10:27
収録日:2017/11/27
追加日:2018/04/10
≪全文≫

●システムをレジリアントにする


 さらなる安全性の向上にむけて、3点指摘いたします。第1に、ヒューマンファクター、人は間違いを犯すという前提の下でさまざまな訓練方法が導入されていますが、人の振る舞いに関しては、さらなる研究が求められます。第2に、最近の情報処理技術の発展により、AIやビッグデータ処理を安全に活用するということも盛んに検討されています。

 第3に、レジリアントなシステムという考え方が最近注目されています。「resilience」という言葉は、「元に戻る力」「弾(力)性」といった意味ですが、「怪我やショックなどからの回復力」、「早い立ち直り」という意味でも使われます。つまり、システムをレジリアントにするということが今、話題になっているのです。


●新人パイロットにベテランの操縦法をいかに早く習得させるか


 最後に、私たちの研究室で行っている研究について、2つご紹介したいと思います。1つ目は、パイロットの操縦を人工脳神経網(ニューラルネットワーク)を用いて分析するという研究です。

 飛行機の自動操縦はすでに一般的になってきましたが、離陸と着陸時には、やはりパイロットのマニュアル操作が基本となります。特に着陸は、パイロットの技能が大きく問われる瞬間です。パイロットは通常、コックピットの計器盤を見て、機体の状態を把握し操縦します。しかし、着陸寸前にこれらの計器が異常を来す、あるいは正確なデータを示さないということもあり得ます。そこで、パイロットは外を見て、水平線や滑走路の見え方から機体を操縦するのが普通です。これは、ライト兄弟が飛行機を飛ばしていた時代と変わりません。

 水平線や滑走路がどのように見えるかという情報から、パイロットは機体の高度や姿勢、滑走路までの距離といった情報を把握します。これに基づいて操縦を行うわけです。ベテランのパイロットは、こうした信号処理から操作を適切に行うことができます。問題は新人のパイロットです。新人のパイロットに、この操縦方法をいかに早く習得させるかということが重要な課題になったのです。


●パイロットの操縦をコンピューターに学習させる


 私たちは、エアラインからの相談を受けて、ベテランパイロットの操縦の技を分析することを試みました。さまざまな方法を検討した結果、パイロットが視覚情報をもとにどのような操作を行ったのかという...
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