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マテリアル革命で描く3つの未来社会像

未来を拓く「知材」革命の底力(1)マテリアル革命と未来

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
情報・テキスト
株式会社三菱総合研究所主催「三菱総研フォーラム2017」では、東京大学名誉教授で新構造材料技術研究組合(ISMA)理事長の岸輝雄氏の講演「マテリアル革命」に続き、岸氏に加え、東京大学第28代総長で同研究所理事長の小宮山宏氏、同研究理事の亀井信一氏による鼎談が行われた。テーマは「知材」革命がもたらす社会課題解決と産業変革である。鼎談に先立ち、まずは「マテリアル革命」と題されたレポートから見ていこう。(2017年11月30日開催三菱総研フォーラム2017鼎談「マテリアル革命」より、全5話中第1話)
時間:10:09
収録日:2017/11/30
追加日:2018/04/13
≪全文≫

●アイスホッケーの神様に学ぶ「未来」への姿勢


亀井 それでは鼎談を開始させていただきたいと思います。今回のテーマは「知材」革命がもたらす社会課題解決と産業変革です。このテーマに関しては、私ども三菱総合研究所が半年にわたって行ってきた研究の成果が下敷きになっていますので、初めにその一部を簡単に紹介させていただきます。マテリアル革命研究チームというものを組成して行ってまいりました。



 最初から少し変わったスライドで恐縮ですが、ここに写っている人はアイスホッケーの神様と呼ばれるウェイン・グレツキー氏です。「グレート・ワン」(The Great One)と呼ばれている彼には非常に有名な言葉があります。この英語で記したフレーズの意味は「今パックがあるところに行くのではなく、次にパックが動くところに行くべきである」というものです。

 シンクタンクの使命は、未来を予測するということであろうかと思いますが、ではその未来はいつかということをよくよく考えさせる言葉です。「今、見えている未来」を予測することではなく、さらにその次にどうなっているかを考える、あるいは「今、見えている未来」に落とし穴はないかどうかを明らかにするのがシンクタンクの使命だろうと思います。

 先ほどの話(岸氏の講演)とも関連しますが、デジタルイノベーションの時代が来るといわれています。これは、確実にそうなるでしょう。でも、それは「今、見えている未来」でしかありません。そこに落とし穴はないのか、さらにその次には何が来るのかということが、私どもの根本的な問題意識でした。シンクタンクは、「今、見えていない『未来』を見通すこと」を使命として活動しています。


●マテリアルの定義と、国際競争力




 これは、岸先生からもご紹介のあった「マテリアル」の分類です。通常は「材料」を指す場合が多いのですが、われわれは「素材」やデバイスを含めた「部材」も含めて「マテリアル」と呼んでいます。対比でいうならば、バーチャルなデジタル技術に対するリアルな世界(モノ)を象徴する言葉と捉えています。



 では競争力はどうなのかということを、経済産業省のデータ(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構<NEDO>「平成27年度 日本企業の国際競争ポジションに関する情報収集」)で見ましょう。

 図の横軸は日本企業の世界シェアで、一番左が0パーセント、右が100パーセントです。細かくて見えにくいですが、100パーセントの軸上に多くの製品が並ぶ中、材料産業がたくさん入っています。さらに40パーセントから50パーセントを超えるものの多くが材料産業です。特に100パーセントラインでは、一眼レフ用光学レンズ、光学用電流センサー、レアアースのマグネット、積層セラミックコンデンサーなどが国際シェア100パーセントを誇っています。このように日本にしか作れないものがあることが、産業競争力の座標になるのではないかと考えています。


●「マテリアル革命」で「ゲームチェンジ2.0」を




 この図は、先ほどの「今、見えている未来」の話の続きとして、やや抽象的な表現ですが、横軸を時間軸、縦軸を進歩を示す図と見てください(縦軸を対数軸で取っているところがミソです)。コンピュータの黎明期から、「ゴードン・ムーアの法則」に従うと18カ月で2倍の進歩が続いてきました。今現在起こっているのは、デジタルイノベーションの急速な進化です。AIやアルゴリズムの技術など、とにかくデータを持つことが非常に重要で、それを高度に解析する技術を持つところが勝つ世の中になってきています。

 そうなると、「ハードウエアはデータを取るための端末でいいのだから、なんでもいい。シリコンバレーでははっきりハリボテでいい」とまで言われました。それが今の「ゲームチェンジ」といわれている世の中です。そのため、高品質をうたったわが国のエレクトロニクス産業が苦戦している状況もよく理解できます。

 ところが、デジタルイノベーションの総本山であるシリコンバレーでは今、さらにその次に向かおうとする動きが起こっています。例えば、「トリリオン・センサー」は世界中に膨大なセンサーを張り巡らせてデータを取りたいのですが、それを実現できるセンサーというハードウエアがありません。ネットワークをつくることができるところもないのです。

 今はバイタルデータを取っている人も多いと思いますが、本当に欲しいものは限られています。例えば、私の場合、血圧と血糖値のデータが必要ですが、それをきちんと取って伝えてくれるハードウエアが必ずしもあるとはいえません。...
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