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デジタルイノベーションの時代にどう立ち向かうか?

未来を拓く「知材」革命の底力(2)ビットからアトムへ

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
情報・テキスト
東京大学第28代総長で株式会社三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏、東京大学名誉教授で新構造材料技術研究組合(ISMA) 理事長の岸輝雄氏、株式会社三菱総合研究所研究理事の亀井信一氏による「マテリアル革命」に関する鼎談。第一のテーマには、デジタルイノベーションとの関係が挙げられた。(2017年11月30日開催三菱総研フォーラム2017鼎談「マテリアル革命」より、全5話中第2話)
時間:06:37
収録日:2017/11/30
追加日:2018/04/14
≪全文≫

●デジタルイノベーションの時代にどう立ち向かうか


亀井 今日お見えの岸先生に小宮山理事長も交えて、限られた時間ではありますが、五つのポイントに関する鼎談として議論させていただきたいと思います。

 一つ目は、デジタルイノベーションとの関係についてです。二つ目に、マテリアルへの期待はどうあるべきか。三つ目に、マテリアルがリードする社会課題の解決はどういう姿になるのか。最後の二つで現実的な話に入り、四つ目が日本におけるマテリアルの競争力をわれわれはどう見ればいいのか。最後に、日本の勝ち残り戦略はどうあるべきか、という点についてです。順次議論させていただければと思いますので、よろしくお願いします。

 では早速ですが、現在はデジタルイノベーション時代といわれていて、「アトムからビットへ」という言い方も、よくされます。でもやはりわれわれは、再びアトムに注目しないと、次のステージにはどうしても行けないという仮説を持っています。その点について、まず率直なご感想をおうかがいできればと思います。岸先生、いかがでしょうか。


●MGIのアメリカに、日本は遅れを取っていない


岸 先のお話(「マテリアル革命」シリーズ)で少し時間を超過してしまったようなので、簡潔にいきたいと思います。その中では、「マテリアルズインテグレーション(MI)」はまさに材料開発にビットを導入しないといけないという話をさせていただきました。

 悔しいのは、2011年にバラク・オバマ大統領(当時)が「マテリアル・ゲノム・イニシアティブ(MGI)」という声明を発したことで代表されるように、いろいろなキーワードに関するイニシアティブがアメリカから出てくることです。日本がそうそう遅れを取っているわけではないのですが、非常に悔しい思いをしています。

 「ビットからアトムへ」の流れに関して、大事なところは自身の講演の話の中でお話ししましたが、そこが気になっていることですので、付け加えておきたいと思います。


●アトムにビットを掛け合わせる3Dプリンターの可能性


亀井 小宮山先生どうですか。

小宮山 まず、岸先生にお礼を申し上げます。大変広い分野について、構造化された話をいただいたということで、いわば目次をほとんどお話しいただいたことになり、大変勉強になりました。どうもありがとうございました。

 今の「ビットからアトム」については、最後にわれわれが使うのはアトムに決まっているわけですので、そのときにビットがどう絡むかということだと思います。一例を挙げると、岸先生の話にもあったように、マテリアル開発では相矛盾する二つの特性を同時に実現しようと一生懸命頑張ってきたところがあります。

 例えば、ガラスは透明だが電気は通しません。一方、メタルは電気は通すが不透明です。しかし、タッチパネルなどいろいろな機構において、光を通して電気を通す材料が求められます。メーカー側では、一生懸命それに取り組んで、インジウム・ティン・オキサイド(ITO:透明導電膜)のような非常に難しい材料をきれいにつくる技術を開発してこられました。

 ところが、今後はもしかすると、事情が変わるかもしれません。ITOに代わる材料として、ナノワイヤーが考えられているからです。電線を通してガラスを膜にするとテレビは見えないのですが、ナノワイヤーにするとどうか。これをガラスやプラスチックで満たすことにでもなれば、電気が通って透明なものができてしまうわけです。

 では、それが実際につくれるのか。昔はつくれなかったのですが、3Dプリンターが出現しています。大きなものがそうそう変わるとは思いませんが、今の話のように理論的には分かっていたけれど技術的にできなかったことが、可能になってきます。

 今の例はナノテクノロジーと3Dプリンターの組み合わせですが、いろいろな組み合わせが考えられるでしょう。こういう材料はビットなのかアトムなのか、という問題になってきます。最後に使うのはもちろんアトムだけれども、それに対するビットの重要性が急激に増してきているということではないかと思います。


●ビットの「知」とアトムの「材」が相互補完する未来


亀井 どうもありがとうございました。考えてみれば、アトムとビットを分けることが本質的なところではありません。今回の鼎談資料にも「知材」革命と書いているので、何度も「亀井さん、知財の誤植じゃないですか」と聞かれましたが、そうではありません。

 やはり「知」にはビットの側面があり、「材」はアトムのこと。それらが相互補完的に進んでいくことが、次のイノベーションをもたらしていく。そのように捉えた方がいいと理解しました。
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