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日本のマテリアル分野での競争力と勝ち残り戦略

未来を拓く「知材」革命の底力(5)日本の勝ち残り戦略

対談 | 小宮山宏岸輝雄
情報・テキスト
東京大学第28代総長で株式会社三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏、東京大学名誉教授で新構造材料技術研究組合(ISMA) 理事長の岸輝雄氏、株式会社三菱総合研究所研究理事の亀井信一氏による「マテリアル革命」に関する鼎談。最終テーマでは、マテリアル分野の競争力に関する評価と日本の勝ち残り戦略が語られる。(2017年11月30日開催三菱総研フォーラム2017鼎談「マテリアル革命」より、全5話中第5話)
時間:07:36
収録日:2017/11/30
追加日:2018/04/17
≪全文≫

●カギを握る中国の情報と、アジア協力体制


亀井 二つの課題を残していますが、考えてみると日本の勝ち残り戦略を考えるには、競争力の評価があってこそだと思いますので、4(マテリアルの競争力をどう見ているのか?)と5(日本の勝ち残り戦略は?)をまとめて議論いただきます。研究開発面でも、アプリケーション面でも、「情報化の時代と材料」は融合していくであろうということを背景に、そう考えたときの日本の競争力をどう見るか。そのためにわれわれは勝つために何をしなければならないのか。この点に関して、最後にご意見をお伺いしたいと思います。岸先生お願いします。

岸 マテリアルに関しては、十分にまだ競争力があるという言い方はできますが、欧米の情報が十分に入ってくる一方、重要な中国の情報がまだ十分ではないということが第一です。

 2005年まではただただ日本へ勉強に来ていた中国が、マテリアルの分野では2005年に大方針転換を行っています。そして、2015年あたりから非常に力を付けてきたというのが実感ではないかと思います。広い幅の研究に平気でお金を投入するのが中国です。われわれの中には中国が少しは衰えてくれればいいのにという期待もあるのですが、それは間違っていたかもしれないと見直しているのが現実だと思います。

 その延長に、勝ち残り戦略があります。日本にとって技術の流出は本当に怖いことで、やたらに持って行かれているのは頭の痛いところです。それでもやはり、中国を含む東南アジアと手を組んで、データを中心としたプラットフォームをつくらないと、頑張りきれないのではないかと思います。

 相対的に見て落ち行くだろう欧米日という仲間のままでいくのか、インドを含めて上がってくるアジアの中の一員として、一緒にプラットフォームをつくり、データを共有して、データ科学のマテリアル革命に進むのか、この辺りをよく考えないといけない時期だと、常日頃考えています。


●中国やインドとのコラボでは作戦が必要


亀井 どうもありがとうございます。小宮山理事長いかがですか。

小宮山 基本的には私の考えも非常に似ています。中国やインドの研究の数の膨大さを見ると、ぜひ組むべきだと思っています。ただ、組むには作戦が要ります。

 例えば、データ、ソフト、ハードの三方向で考えると、日本は今のところソフトが弱い。ここはやはり欧米が強いので、欧米と組むべきでしょう。データについては、企業や大学にも蓄積が増えています。特にマテリアルでは、複合材料をつくるノウハウが大事です。岸先生のお話でいうと、構造、機能、プロセス、パフォーマンスとありましたが、構造をつくる複合材料はノウハウに支えられています。このプロセスにおけるノウハウは特許などにせず、確保しておくべきだと思います。

 一方、組み方の例としては、岸先生のお話の「革新的構造材料等研究開発」による評価のプラットフォームがうまくできていると感じました。破断試験を繰り返し実験するのではなく、継時的な変化を予測するような部分がカギではないかと思います。例えば、リチウム電池であれば、何回のサイクルに耐えられるか、どれだけ震動に耐えられるか。それはやってみないと分からないでしょうが、かなりできるはずです。

 そういうプラットフォームを日本が持ち、そこに新しいデータを入れていく形で協力を進めるべきだろうと思います。先述しましたが、あそこでつくられたのは一つの例ですが、モノによっては多分数百から千は必要になるでしょう。そうしたものがだんだん連動して、最後は大きなプラットフォームを形成するだろうと思いますが、とりあえずは一つ一つですね。日本がそうした部分を受け持って、欧米やアジアと協力していくことが、日本の競争力を保つのにはいいのではないかと思っています。


●マテリアル革命の本質と将来性


亀井 どうもありがとうございました。岸先生、小宮山理事長、ありがとうございました。繰り返しになるかもしれませんが、今回の議論をまとめてみると次のようになるかと思います。

 まず、世の中はデジタルイノベーションばやりですが、モノの時代から一気に全てがデジタルの時代に移行するわけではないということ。デジタルによる革新をリアルな世界で支えるのがモノ=マテリアルであるわけなので、モノとデジタル技術は相互かつ補完的に進化していくととらえるべきだということ。

 今回、日本の本質的な課題は何度も出てきましたが、エネルギーや資源に乏しいことであって、マテリアルの進化には、その制約が解放される可能性があり、そこにマテリアル革命の本質があるのではないかということ。

 もう一つ。おそらくマテリアルは、他の分野に比べて唯一とはいわないまでも、日本が高い国際競争力を持っている分野であるというこ...
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