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保守とリベラル、政治的な左右の軸を考える

保守とリベラル~左右の政党位置とその研究~

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
エドマンド・バーク
政治学者で慶應義塾大学名誉教授の曽根泰教氏が、保守とリベラルについて、政治学の観点から解説する。政治学では、左右の政策の特徴を指標化し、それを尺度として各政党の政策の左右の位置関係を明らかにする研究が行われてきた。それに基づけば、保守とリベラルはそれぞれ、一定の特徴を有した異なる政策を選挙ごとに提示してきたことが分かる。
時間:08:40
収録日:2018/03/14
追加日:2018/04/19
カテゴリー:
≪全文≫

●保守とリベラル、あるいは政治的な左右の軸を考える


 今回は、保守とリベラルというお話をします。

 これは、政治的な左右の位置を表す言葉で、最近では保守やリベラルが何を意味するのかが論じられます。保守主義とは何かというと、エドマンド・バーク(イギリスの政治思想家)の話から始まることが多いのです。これは、思想史的には確かに正しいですし、バークからの引用を用いて保守主義を分析するのは間違ってはいません。けれども、現実政治を考えるときの定義としては、それでは不十分なのではないかというのが、今日の話の出発点になります。


●政策を左右に分ける尺度からマニフェストを分析


 やや学問的になってしまいますが、イギリスの政治学者イアン・バッジ氏やドイツの政治学者ハンス-ディーター・クリンゲマン氏たちの研究に、50カ国くらいのマニフェストを過去50年にわたって調べたものがあります。そのときに使われた尺度が、非常に簡単に、左右の軸なのです。それでは、政策を左右に分ける尺度とは何か。右の方は、軍事、自由とか人権(human right)、あるいは立憲主義、効率的な権威、自由経済・自由企業、こういったものを強調するという特徴があります。

 これらの項目に基づいてマニフェストの内容を分析し、右から左を引く、言い換えると右の項目を満たす場合はプラス、左の項目を満たす場合はマイナスで数値化するというやり方で位置関係を表しました。その左右の位置関係を表している図がイギリスとアメリカについてありますので、ご覧になっていただきたいと思います。

 この図は1997年くらいまでですので、トニー・ブレア首相あるいはビル・クリントン大統領の頃までのものです。この後の時代についての研究もあるのですが、この頃までの図でも概略は分かると思います。この図を見ると、どの選挙でも、イギリスで労働党と保守党はそれぞれ、明らかに違う政策を提示していたと分かります。よく経済学者が、中位投票者のところに政策が寄ってきて、各政党とも同じようなことを言うようになると言います。しかしそれは、明らかに政治的には間違いです。というのは、同じ政策を求めても政党は違う政策だと言います。これは、同じ車を売っても車は一台一台違うものだと言うことと同じです。そういう意味では確...
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