●2017年は、トランプ旋風が吹き荒れた
2016年ごろから世界は大激変、大激動に見舞われています。何が起きているのかというぐらい、変なことも起きています。皆さんと一緒に、しっかり学んでいきましょう。
まず2017年は、トランプ旋風が吹き荒れました。ドナルド・トランプ氏が、世界中に問題をまき散らしてきたのです。彼が大統領に就任した時、私は大変なことになるかもしれないと、直感しました。「アメリカファースト」のようなことはどこの国でも言いますが、彼は反国際協調を掲げ、反イスラムを掲げ、しかも暴言がひど過ぎます。
日本については、安保ただ乗りだの、不公正貿易だの、TPPを即座に破棄するだの、とんでもないことを言っています。アメリカ依存100パーセントで来た日本は、もしトランプ大統領が本当にそんな人間だったら、アメリカ依存を考え直さなければならないでしょう。それほど、彼の大統領就任は日本にとっても重大なことでした。
2017年4月には、トランプ大統領の政策の全貌がおおよそ分かるだろうということで、島田塾の方とともに、アメリカを訪ね、民主党から共和党まで、シンクタンクや主要な論客にかなり綿密に話を聞いてきました。日本はトランプ大統領と手を組んでいけるのか、アメリカの人たちと議論して、情報を集めたのです。私の結論は、大丈夫だということでした。
なぜなら、実はトランプ大統領はそれほどの人物ではないと分かったからです。発言もバラバラだし、やると言ったことはほとんど実現できていません。この程度なら、日本も渡り合えるのではないかという結論に達しました。そこで、大統領就任から1年たった現在、この間に何が起きたのかを皆さんとしっかりフォローして、その意味を理解してみたいと思います。
●ヨーロッパの中心が見えなくなっている
第2に、2016年6月に起きたブレグジット(BREXIT)という驚くべき出来事がありました。2017年3月29日には、テリーザ・メイ政権が、EUからの離脱をEU委員会に正式に申告しています。ですから、そこから2年後の2019年3月29日には、イギリスは本当にEUから離脱しなくてはならなくなったのです。
しかしEU離脱の交渉過程は、新聞を読んでも、ニュースを聞いても、何が起きているのかよく分からないところがあります。今回の私の解説で、その過程が完璧に分かるようになります。しかし、分かってしまえばがっかりするかもしれません。一体彼らは何をやっているんだという、混乱ぶりです。
ただし、がっかりしていても仕方ありません。実際、イギリスのEU離脱によって、ヨーロッパが非常に不確実になり、結果的に世界の不確実性も高まります。そうすると、日本の企業は1,000社以上、ヨーロッパに投資していますから、展望が立たなくなるでしょう。日本だけではなく、世界中が大変な迷惑を被ります。
EU問題は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が中心となって切り抜けてくれるかと思っていましたが、2017年の選挙でCDU(キリスト教民主同盟)が大敗しました。しかも、2大政党のもう一方であるSPD(社会民主党)も大敗したのです。メルケル氏の求心力は、そこから急速に落ちています。
皆さんご存じのように、ドイツの政治制度では、過半数の議席を得なければ、まともな政治ができません。少数派では、本当に何も決まらないのです。したがって、何とかCDUは過半数を得ようと大連立を模索していますが、その結果がどうなるのかはまだよく分かりません。ドイツという大国に、半年たってもまだ政権ができないのです。日本のような制度であれば、すぐに政権発足となりますが、ドイツは制度が違います。
このように、ヨーロッパの中心が見えなくなっているのです。フランスのエマニュエル・マクロン氏が大統領選で奇跡的な勝利を収め、少し期待が持てますが、それにしてもヨーロッパも混乱状況が続きます。今回の講演をよくお聞きになれば、皆さんもお子さんに事の次第を詳しく説明できるようになるはずです。
●中長期的に見ると日本はかなり危険な状況だ
第3に、北朝鮮問題が起きました。北朝鮮問題は歴史的に根深い問題です。しかも、現在の韓国は、文在寅が大統領になってしまいました。彼は世界で一番危険な男だと思います。
他方日本は、安倍晋三政権が2017年10月の総選挙で圧勝しました。一瞬、小池百合子旋風が吹き荒れましたが、小池氏の人気は急速に縮み、結果的に安倍首相は得をしました。安倍氏はラッキーな人で、政権がスタートしてから5年間、ずっと景気が好調を保っています。戦後、2番目の長さのいざなぎ景気をはるかに上回り、62カ月間ずっと景気が上昇しているのです。
途中で少し危うい時期もありました。GDPの解釈を見直すなど、危うい手段も使ってはいますが、5年間で1.4パーセント成長しました...