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トランプ政権に2期目はありえるのか?

2018年激動の世界と日本(6)トランプ政権の今後

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が、トランプ政権2期目はありえるのか、見通しを語る。民主党に新戦略がない今、トランプ大統領はロシアゲートを切り抜ければ、大統領2期目も現実味を帯びてくるだろう。しかし2期目には、経済政策の矛盾が露呈し、世界大不況を引き起こす可能性がある。(2018年1月16日開催島田塾会長講演「激動の世界と日本」より、全14話中第6話)
時間:07:40
収録日:2018/01/16
追加日:2018/04/21
カテゴリー:
≪全文≫

●これまで2人、弾劾の危機に陥った大統領がいた


 ロシア疑惑で追及されているドナルド・トランプ大統領ですが、果たして辞めさせることはできるのでしょうか。韓国の朴槿恵前大統領は辞めさせられましたが、彼女はそれほど悪いことをしたでしょうか。変な女性にいろんなことを相談したという、それだけです。それを執拗に、毒蛇のように追及したのが文在寅大統領です。私からすれば、日本にとって危険な人物です。今度の北朝鮮問題でも、何をしでかすか分かりません。

 いずれにせよ、トランプ大統領は朴前大統領の200倍ぐらいの罪状です。アメリカには弾劾手続きがあります。下院本会議が過半数で弾劾訴追を決定すれば、上院が弾劾裁判を行います。裁判長は上院議長が務め、3分の2以上が有罪と投票すれば、大統領は罷免されます。

 アメリカ史上ではこれまで2人、弾劾の危機に陥った大統領がいました。1人はビル・クリントン氏です。クリントン氏は不倫スキャンダルで弾劾訴追の投票にかけられましたが、上院ではそれほど票が取れず、弾劾をうまく逃れました。

 もう1人はリチャード・ニクソン氏です。彼の場合は、ウォーターゲート事件でした。当時は上下院を共和党が占めており、弾劾の危険は少なかったはずでした。ところが、中間選挙でニクソン氏が不人気のため、民主党が大勝することになります。ニクソン氏では共和党は勝てないと判断したため、彼は自ら辞職しました。


●ロシアゲートを切り抜ければ、トランプ政権の2期目もある


 トランプ大統領の場合はどうでしょうか。2018年1月現在、下院は共和党が240、民主党が193議席です。トランプ大統領はやはり駄目だ、次の選挙を考えると辞めさせた方がいいと考える共和党員が20数人出てくれば、下院で過半数がとれます。そうでなければ、弾劾決議はできません。

 上院の場合、現在は共和党が51議席を占め、残りが49議席です。つまり、2018年11月の中間選挙で民主党が勝つ可能性があるのです。これはニクソンの時に近くなります。このように、弾劾を決定するのは法律ではなく、政治なのです。

 トランプ政権はこれからどうなるでしょうか。確かに、株価は極めて順調です。ただし株価は金融の関係者次第で決まりますから、陽炎のようなものです。トランプ支持者には気の毒ですが、これがトランプ効果だと考えていると、そのうちにがっかりするでしょう。

 トランプ大統領はあまりにひどいので、1期しか続けられないのではないかというのが、所与の議論になっていますが、私はそうは思いません。もし彼がロシアゲートを切り抜ければ、トランプ政権は2期目に突入するでしょう。


●民主党の根本的な考え方が間違っている


 というのは、問題は民主党だからです。大統領選挙の時、ヒラリー・クリントン氏とトランプ氏が争いましたが、クリントン陣営は、ハーバード大出のエリートをシンクタンクにそろえて、彼女の原稿を完璧なものに仕立てました。だからむしろクリントン氏はサイボーグだなどとやゆされていましたが、彼女はもともとは一人で演説させれば素晴らしい人なのです。

 しかし、いずれにせよ民主党の根本的な考え方が間違っています。民主党の考え方は、こうです。今はアジア系やイスラム系などがマイノリティと呼ばれていますが、あと10年もすると彼らがマジョリティになります。したがって、今マイノリティとして非常に不当に差別されている人たちを救おうというのが、民主党の大戦略でした。人権と自由民主主義を掲げて、お説教をする党なのです。

 ところがトランプ大統領は、そんなことを気にしません。とにかく中西部を歩き回って、住民が皆、怒っていることに気付くわけです。弁護士と金融とIT関係だけがうまくいって、自分たちはなぜこうも恵まれないのかと、怒りをためている人らがいっぱいいたのです。トランプ大統領は彼らを見ると、カメレオンのようにすり寄っていきます。お客さんの好みに合わせて声色を変えるのです。労働者の言葉を使って、あえて自分も彼らの怒りを共有しているように見せるのです。

 幸運なことに、中西部の労働者は本当に怒っていたし、しかも白人はまだマイノリティではありません。白人票は55パーセントもあります。確かに10年後なら、クリントン氏の選挙戦略で民主党は勝っていたでしょう。しかし、トランプ大統領のように怒れる労働者に対して「俺が助けてやる」と強引に引っ張る人を相手に、民主党は勝てないでしょう。少なくとも、次回の大統領選挙までに選挙戦略を構成することはできないのではないかと思います。

 新聞を熟読していますが、なかなか民主党の新しい理論構成は見えてきません。こうしてアメリカを救うというビジョンがないのです。また、トランプ氏に対抗できる強烈な候補もいません。クリントン氏はさすが...
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