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改革の柱は自立心と自尊心~山田区政・杉並改革の実績から

山田宏
参議院議員
情報・テキスト
負債総額942億、経常収支比率95パーセント──瀕死の杉並区の財政健全化を果たし、数々の新しい行政サービスのモデルを生んだ「杉並改革」は、なぜ実現できたのか? 前杉並区長で衆議院議員の山田宏氏が改革成功の秘訣を語る。
時間:12:05
収録日:2014/04/04
追加日:2014/06/26
カテゴリー:
≪全文≫

●自治体経営者・山田宏の「杉並改革」


 山田宏です。今日は、自立心と自尊心を育むことが、会社でも、お店でも、また個人にとっても、そして政治でも、改革の柱なのだというお話をしたいと思います。
 
 私は1999年から2010年まで11年間、東京都杉並区の区長を務めておりました。私が区長になったとき、杉並の財政はひどい状態でした。支出の約95パーセントが固定費で、残り5パーセントしか新しいものに使えなかったのです。皆さんの家計でも、もし収入の95パーセントが家賃や借金やローンの返済、食費、こういった固定費にまわって、残り5パーセントしか新たな用途や旅行などに使えなかったとしたら大変です。しかしそれが当時の杉並区の状況でした。借金は942億円ありました。そして貯金はわずか19億円しかありませんでした。
 
 ところが、区長在任中の11年間の間に、私はこの借金を942億円から179億円まで減らし、約5分の1以下にしました。貯金は8億円から約200億円に増えました。そしてさらに支出に占める固定費の割合を、95パーセントから70パーセント台まで下げることができました。
 
 なぜそんな魔法のようなことができたのかということをお話しします。そこには、一つの「改革のルール」があります。
 
 借金を減らし、貯金を増やし、また固定費の割合を減らしていくということになっていきますと、当然ながら強い意志が必要です。
 
 役所の固定費には、実際の場合は三つの種類があります。一つは人件費。一つは借金の返済。もう一つは、国が定めた法律通りの福祉に要する費用です。皆さんならどれを削りますか。福祉は法律で決まっていますから削れません。また借金の返済は、返さず先送りしたらもう誰も貸してくれなくなります。ですから、人件費を減らすしかありません。そこで私はまず自分の給与をカットしました。給料を10パーセントカットし、ボーナスを半分にしました。当時はそこからスタートしたわけです。
 
 そして、借金に頼って行政をしてはならないということで、私が就任した初年度に15パーセントの歳出削減を断行しました。15パーセントです。私はそれまで行政組織に入ったことがなかったので、役所の15パーセントというのがいかに大きな額かということが分からなかったのです。ただ、とにかく赤字の区債に頼ってはならないということで、これをそのままカットしようということで補正予算を作りました。区役所全体、断固反対です。

 しかし、当時41歳と若かった私は、これを断行しました。その結果、凄まじいことが起きました。

●敬老会のまんじゅう廃止から、危機意識の共有へ


 区民から最初の苦情が出たのは9月でした。というのも、7月に補正予算を作ったので、実際の削減は9月の予算、支出から始まったのです。9月には敬老会があります。区内各地で敬老会が開かれます。そして私は多くのお年寄りからの憤激にも似た手紙で、敬老会の紅白まんじゅうがなくなったことを知りました。
 
 私は具体的に何の歳出がカットされたか一つひとつまでは知らなかったので、最初は何のことかと思いました。このときお年寄りたちが何を怒っていたかというと、「なぜこんな小さなものから削るのか」ということを怒っていたのです。「もっとぶらぶらしている職員から削れ」、「こういったものや、日本の文化伝統からなくすのはいかがなものか」、「年寄りの楽しみから削るというのはどうなのか」。敬老会のある9月だったものですから、そういった声がたくさん届きました。
 
 この紅白まんじゅうにいくら使われていたのかというと、250万円でした。杉並区の年間支出は1300億円ですから、全体から見れば250万は大きな額ではありません。しかし私はそれを、お年寄りが怒っているからといって復活させることはしませんでした。そのまま廃止していきました。なぜかというと、もっと大きな歳出削減が控えていたからです。
 
 一番大きかったのは、当時最も政治力のあった医師会でした。医師会は多額の委託費用を区からもらっています。それも15パーセントカットしました。さらに町会、商店街、連合会。こういったものは、いずれも各区議会議員の選挙活動の母体になっているものです。それが全部カットされるわけですから、皆かんかんに怒りました。特にかんかんだったのが医師会でした。
 
 医師会の集会に呼ばれたとき、医師会長が私に向かってこう言いました。「新しい区長はもっと知恵を使ってもらわなくては困る。経営の何たるかを知ってもらわなくては困る。経営とは何かというと、切っていい予算と切ってはいけない予算をきちんとしたルールで仕分けすることなのだ」と。確かにそれはそのとおりです。そして私は仕分けをせず一律で15パーセン...
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