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ワークアビリティインデックスとは…労働適応能力の物差し

労働寿命と健康寿命の延伸(5)労働適応能力の評価

神代雅晴
一般財団法人日本予防医学協会理事長/産業医科大学名誉教授/学術博士
情報・テキスト
一般財団法人日本予防医学協会理事長の神代雅晴氏が企業レベル戦術における労働適応能力の評価の物差し「WAI(ワークアビリティインデックス)」について解説。調査を進めていくと、WAIと運動やストレスといった各要因との間に明らかな相関関係が見いだされたという。中でも神代氏が重視するのは、どんなマイナス要因もカバーし、効果が期待できる、あるプラス要因だ。それは一体何か。(全6話中第5話)
時間:16:36
収録日:2018/02/22
追加日:2018/05/03
≪全文≫

●労働適応能力の物差し・ワークアビリティインデックス


 それでは一番重要な第3段階に戻って説明します。第3段階の企業レベルでの戦術、その1として、フィンランドで開発された国際的に有名なワークアビリティインデックス(WAI)についてお話を進めていきます。

 ワークアビリティインデックスでは、開発者らによって、ここに示したようなワークアビリティハウスモデルが作られています。1階が身体機能・健康資源の度合い、2階が仕事に対する能力、3階が意欲・態度・意識、4階が仕事や環境、経営管理です。

 ワークアビリティインデックスは1981年にフィンランドで開発されていますけれども、この図には2010年と書いてあります。実は1981年に開発されて、その後1990年代にフィンランド語から英訳をされて、この英訳をきっかけとして国際バージョンをフィンランドの開発グループ「FIOH」(Finnish Institute of Occupational Health、フィンランド労働衛生研究所)が作り、現在では25カ国以上に翻訳されて使われているのです。

 2000年に入って、日本も含めていろいろな国々がこのワークアビリティインデックスを用いた研究を重ねた結果、もう1つ大事な要素として、職場環境、地域社会、家族との関係が労働適応能力に非常に関係するということが分かってきました。そこで一部にバルコニーを作り、職場環境、地域社会、家族との関係を取り入れたものが今回示したモデルになっているのです。これは「社会環境だとかいろいろな状況も加味して、それら全てをこのバルコニーから受け入れましょう」ということで改変された修正版のモデルです。いずれにしても、このような形でワークアビリティインデックスが作られています。


●PoorからExcellentの4段階で明確に評価する


 ワークアビリティインデックスが「どのような項目で」というのは、時間の関係で省略いたしますが、ワークアビリティインデックスは、どのようにして最終的に評価するのかというと、4段階評価がされています。 

 4段階評価は点数によって7点から49点までのスケールになっており、7点から27点までは、「あなたの労働適応能力は非常に不十分です。ですから、もうちょっと頑張らなければいけませんね」という評価になっています。28点から36点までは「まあまあですね」という評価です。37点から43点までは「いいですよ、その調子でもう少し磨きましょう」という評価で、44点から49点(Excellent)までは「素晴らしいです」という評価で、こうした4段階になっています。

 実はこれは二大累計されていて、Poor(7点から27点)とModerate(28点から36点)は駄目(Bad)という分類に入り、Good(37点から43点)とExcellent(44点から49点)が良い(Good)という分類に入ります。

 このような評価基準に基づいているのですが、これを見ると、シリーズ内でお話ししたLabor、Travailを思い出しませんか。要するに「駄目です、良いです」という評価を明確に表すという思想で出来上がったものです。


●日本人版WAIが示す運動習慣と労働適応能力の関係


 このワークアビリティインデックスを開発者たちからの依頼を受けて、私は日本人用に、単なる翻訳ではなく意訳をして、日本人版のワークアビリティインデックスを作成し、それを開発国、開発機関であるFIOHのところに贈呈しています。日本人版のワークアビリティインデックスを用いて、いろいろな企業でさまざまなデータを取りましたので、その中から6枚ほど、ワークアビリティインデックスの研究成果をここで紹介したいと思います。

 それでは、早速ワークアビリティインデックスによるデータに入っていこうと思います。この図はある企業で働く人々を対象として、日常の運動習慣の強度別にワークアビリティインデックス、労働適応能力の得点WAIスコアを年齢階級別に示したものです。これを見ていただくとお分かりのように、どの年齢集団においても、運動習慣のない者はワークアビリティインデックススコアスコアが低く、そして運動強度が高ければ高いほどそのスコアは高いという結果が出ています。しかも、この運動効果は45歳以上に顕著に現れているということがうかがわれます。

 したがって、この結果からいえることは運動習慣の形成と労働適応能力には強い関係があるということです。


●職務満足感とWAIは顕著な相関関係にある


 次のデータに移ります。同様にして、これはまた別の会社を対象として調査した結果ですが、このグラフはワークアビリティインデックスの成績と職務満足感との関係を見た図です。

 横軸の左側からワークアビリティが低い群、右に...
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