●仕事と能力のミスマッチが減れば労働寿命が延びる
ここでWAI研究を終えて、次に同じく第3段階の企業レベルでの戦術において日本ではどうなっているのか、私と私のチームが開発しましたAAI(アクティブエイジングインデックス)について、お話をします。
アクティブエイジングの関係図ですが、この図は私が最終的な目標としている「労働寿命の延伸をどうやって図るか」というためのコンセプト図です。
まず、ここに掲げた1階と2階がAAIで代表されていますが、AAIによる労働適応能力を評価します。そしてWAIと同じように、AAIも直接的な仕事に対する能力を測る物差しを持っていません。したがって、もう1つ、仕事と直接関連した対処能力を測るものを足して、その合計値を職務遂行能力とします。これをいかに伸ばすかは、労働寿命をいかに延伸するかにつながってくるというコンセプトです。
今日はお伝えできませんが、仕事、対処能力は仕事と直接関連する技能や知識、経験といったもの、あるいは社会的適応能力などを測る能力としています。もちろん、これを出したということは、これを別途測ることのできる物差しをすでに私の方では開発を終えています。これらを足して、職務遂行能力を見るということです。
こういうことで職務能力が評価できれば、何度も申し上げていますが、与えられた仕事と自分の能力とのミスマッチが可能な限り少なくできて、結果として労働寿命が延びる、という絵が描けるかと思います。
●17項目のチェックで労働寿命の延伸を図る
この図の下の黄色い部分が、これからお話しするAAIを説明する部分です。AAIは身体機能に関連する6項目、精神的許容能力と回復力を説明する、あるいは質問する4項目、社会的な対処能力が3項目、2階部分の労働意欲4項目の合計17のチェック項目によって、労働適応能力を測ろうというものです。
よく、こういうストレス関連のチェックリストで見られる一般的なものは、かなりネガティブな側面を測ろうとしています。ところが、このAAIの中に含まれた精神的許容能力と回復力は疲労とストレスに関連する項目なのですが、どちらかというとポジティブな側面を測ろうとしています。すなわち、どれくらいストレスや疲労を受け入れるキャパシティーを持っているのかを測ろうとしているのです。これを測るための4項目が設置されているということです。以上のような項目でAAIが構成されています。
●明らかな相関関係を示すWAIとAAI
それでは実際に、AAIによってどのようなものが見られたのかという成績に入っていきたいと思います。AAIに関するこちらの図は2016年10月に完成した指標です。したがって、まだ大量のデータに基づく効果測定、例えばWAIのような効果測定というのはできていません。そこで、先ほどご紹介した世界的に使われてきたWAIと併用してこの調査研究を行って、どういう信頼性があるのかを試してみたのです。
図は20代から30代、40代、50代、60代という5つの年代に分けて、AAIとWAIとの関係を検討したものです。そうすると、見てお分かりのように、どの年代においてもAAIとWAIとの間に明らかな相関関係が認められました。つまり、労働寿命の長短は、労働適応能力の優劣と大いに相関するということが判明したという図です。
これはWAIと同じように、先ほどの同じストレスチェックリストを用いて、AAIとの関係はどうなのかということを調べたものです。これを見ても分かるように、「ストレス得点が低い人は労働寿命、AAI得点は長い」という負の相関が認められました。同時に、「労働適応能力が高い人がAAI得点も高くなってくる」という正の相関が認められてきたということになります。
よって、まだ、AAI独自の大量データに基づく有効性の検討は今後しなければいけないのですが、AAIは、十分1つの物差しとして使うことができるということが、ここで示唆されていると思われます。
●労働意欲が健康に影響することがAAIで判明
同じようにAAIに関するデータがあります。生体の恒常性は、人間の生命を維持あるいは正常な機能を維持する仕組みのことですが、生体の恒常性や正常な代謝機能を保つために必要な体の機能を内分泌代謝といいます。そこで内分泌疾患と精神的疾患、そしてAAIによる労働寿命との関係を調べてみました。
すると、精神疾患も内分泌疾患も、有所見者はこうした疾患を持たない人に比較して明らかにAAIによるスコアが低い、つまり労働寿命は短いという関係が分かりました。このことは同時に健康寿命を短くすると推測されま...