●無駄と事情を切り捨て、できるための方法を考える
── 「天才でも勝手にやるような人は向かない」と?
森川 はい、うちの企業文化として、どちらかと言えば、ユーザーが求めているものを速くやるとか美しくやるとか、そういうところが多いです。フレンチのレストランよりは、マクドナルドさんのほうが近いかもしれません。
── その速くやるというところが、会議をなくしたり、その日のうちに辞令を出していくという感じで、やはりスピード感がすごく速いですよね。
森川 そこはすごくこだわっているところです。無駄をなくすようにはしています。無駄をなくしたほうが速いですし、それが結果的にコストダウンにもなります。またシンプルでわかりやすいということにもなりますし。ですので、いかにその無駄をなくすか。固定概念にとらわれずに、無駄をなくすにはどうするべきかということをやっています。
── 普通の会社では無駄を作ってくる人が大勢いると思います。関所を作るという。それが、LINEのこの速度でオペレーションを回そうとしたときに、自動的にはじかれるような仕組みにしてあるということですね。
森川 なるべく「しょうがない」という言葉は出ないようにしています。大企業だとそういうのが好きな人が多いではないですか。「いやいや、いろいろありまして」というような。でも「いろいろって何があるのですか」というところをちゃんと突っ込んで聞いていく。「本当に必要なのですか」「一度やめてみませんか」というところが、どんどん進んでいくということだと思うのです。
── 「しょうがないです」って多いですよね。
森川 大企業ほど、いろいろなしがらみやルールや、社内事情と言うのでしょうか、多かったりするのだと思います。
── それを取り払ってしまうと、実は本質の部分はそんなに人がいなくても回るのだということを証明しながらやってきたわけですね。
森川 多分そうでないと生き残れないのです。私たちのような何もない会社が勝負するには、他の会社と違うことをやらなければいけません。インターネットで一番大事なのはスピードなので、他が1年かかるものを1カ月でやるために、逆にそれを前提としたときにどうしなくてはいけないのかを考えるようにしています。
── よそが1年かかることを1カ月でやる、それを前提とするときにどうしなくてはいけないか、ですね。全然違いますよね。1年で考えるのと1カ月で考えるのとでは。
森川 逆に「1年かけてもこうしたほうがいい」という場合もおそらくあるのだと思いますが、私たちの場合はとにかくスピードを速く、かつクオリティーは1年かけたときと同じくらいに出す、それを前提にしたときにどうすべきなのかと考えると、考える時間がもったいない、とにかく作り始めようという感じになります。
●会議や情報共有は“魔物”。時間とコストの生かし方
── 「事業計画を立てない」というのはそういうことなのですね。作り始めて、バージョンを作っていったほうが速いということですね。
森川 おそらく日本の企業では文書を作っている時間が相当長いと思うのです。そうすると、文書を作る時間があり、それを説明する時間があり、またそれを修正する時間があって、実務に充てている時間がものすごく短い。でもその時間を実務に充てれば、速くなるか、もっといいものになりますよね。ですので、その前段階のものをどれだけ削れるかというのが、私たちのやっているところです。
── 10やっている仕事のうち、9ぐらいは森川さんが言われたように文書を作って説明している時間で、実際に働いている部分、付加価値につながる部分は1もないという。多分そういうカルチャーに慣れすぎてしまっているのですね。
森川 でもそれは一つには、会議とか情報共有という“魔物”が元気だからですよね。それがなければいけないという大前提が大企業を悪くしているのかなと思います。おそらくそこにかけている時間を時給換算してコストを出したら、大きな会社だと数億、数十億になるのではないかと思います。ですので、本当は人を削るよりもそういう時間を削ったほうがコストダウンになると思うのですが。
── 確かに、あえて情報共有と言わなくても重要な人はみんな知っていますものね。
森川 そうですね。もしくは「知らなくてもいい人に教えてはいけない」ということだと思います。
── 知らなくてもいい人がまた知ろうとする、そのコストですね。
森川 知らなくてもいい人が知ると何が起こるかというと、まず一つは、もっと知りたくなる。もっと知りたくなると、質問にきます。そうすると、その人に対して説明の時間が必要になり、その時間がもったいない。これが一つです。次に、その人はおそらくそこで価値を出そうと思うと、何か“ちゃ...