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藤原不比等の時代の重要性は見直すべき

逆境の克服とリーダーの胆力(1)藤原不比等の時代

神藏孝之
公益財団法人松下政経塾 副理事長/イマジニア株式会社 代表取締役会長兼CEO
情報・テキスト
公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏が、逆境を克服する胆力を持ったリーダー像について語る、講演シリーズ第1回。現在の日本が置かれた状況を考える際、藤原不比等の時代こそもっと注目されるに値すると神藏氏は主張する。不比等は唐に対して、独立国家日本を構想した。(全8話中第1話)
時間:06:47
収録日:2018/01/19
追加日:2018/05/29
≪全文≫

●日本の歴史で研究すべきは持統天皇や藤原不比等の時代


 神藏でございます。本日は「人間の器量とは何か」というお題をいただき講演することになっていますが、その前に、まず日本が今どのような時代に置かれているのか、3つの観点から振り返ってみたいと思います。

 第1に考えるべきことは、日本の歴史です。2018年のNHKの大河ドラマ『西郷どん』は、明治維新について扱ったドラマです。しかし、明治維新よりも重要な時代が他にあるのではないでしょうか。私の考えるところ、もっと研究すべきなのは持統天皇や藤原不比等の時代です。この時代、中国が統一されて強大な力を持ち、同時に朝鮮半島が政治的に揺らぎました。この時期が日本の歴史の変わり目になっているのです。


●倭の時代の日本は独立国家であったのか疑わしい




 663年に、白村江の戦いという有名な戦争が起きます。日本は2万7,000人もの兵を投入し、しかもその大半が死んでいます。なぜ日本は白村江にまで進出していったのでしょうか。この時代、日本国内には、百済や新羅、高句麗、あるいは唐の人たちがはびこっていました。それまでの倭の時代の日本は、この意味で本当に独立国家であったのかどうかは、かなり怪しいでしょう。

 例えば、天智天皇やその母・斉明天皇は百済の王家の系統の人だったという説があります。その意味では、持統天皇以降、初めて日本は独立したということになります。倭から日本へと変わっていくこの時期、その戦略を練り上げたのが藤原不比等でした。

 藤原家はその後も現代に至るまで続く家系ですが、中でも藤原(中臣)鎌足は大化の改新を起こした人物として重要です。鎌足の次男が不比等ですが、鎌足は不比等が11歳の時に亡くなりました。そのため不比等は幼少期から、自分でものを考えて生きていかなければならないという境遇に置かれていたのです。


●唐に対して日本は法治国家だと言う必要があった


 持統天皇の時代、藤原不比等らが日本を日本たらしめるために行ったことは、日本は法治国家であると宣言することでした。とりわけ唐に対して、自分たちは野蛮な国ではなく法治国家だと言う必要があったのです。そのために、大宝律令を用意しました。あるいは、ぼろぼろの首都を変えて、長安に似せた平城京を整備しました。

 とりわけ出色だったのは、『古事記』と『日本書紀』の編纂です。『古事記』は大和言葉で書かれた独立宣言です。しかし大和言葉だけで書いていても唐の人は読めませんので、漢語で書かれた独立宣言として『日本書紀』が編纂されました。

 大宝律令を制定し、平城京を造り、唐に対する独立宣言として『日本書紀』を編さんするという3点セットで、藤原不比等らは日本としての独立を図ったのです。それまでの倭の国は、本当に独立国かどうかよく分からない状況で、いろんな国の人が入ってきていました。日本と近い百済の人たちは、縄文時代から弥生時代にかけて日本に入ってきていましたし、唐の人たちも入ってきていました。現在も似たような状況かもしれませんが、一つの国の中に勢力が分散していたのです。その中でも、圧倒的に強かったのは唐でした。


●藤原不比等は独立国家日本を構想した


 藤原不比等は、こうした状況から独立国家日本を構想し、それを成し遂げたのです。しかし、彼は日本の礎をつくったにもかかわらず、日本史の中ではどこか忘れられているところがあります。

 それは、彼の氏素性が『日本書紀』の中でも『古事記』の中でも、あまりはっきり語られていないからでしょう。一説によると、その理由は彼の父親だった藤原鎌足が、百済出身の唐のエージェントだったのではということです。藤原鎌足はエージェントとして日本で活動するうちに、深く日本を愛するようになり、そして息子である不比等が、その流れをくみ、どうすれば日本を独立させられるのか考え抜いたのです。

 今、世の中の景気はアベノミクス6年目で、株価も不動産も上がってきていますが、これから先にどのような状況が起きてくるのかを考えると、こうした藤原不比等の時代の重要性は見直すべきことだと思っています。
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