●草津白根での水蒸気噴火
今回は、日本で活動中の火山とその特徴についてお話をします。
2018年1月の末に、草津白根で噴火があったことはご存じだと思います。これはその時の写真です。右の方に黒い噴煙が上がっていますが、このあとこれが斜面に沿って下っていきました。それから、写真上にポチポチと黒いものが見えます。これはゴミのように見えますが、実は噴石と呼ばれる岩石です。噴火の時には、火口から大きな岩石が飛び出してきて、その一部が当時訓練中の自衛隊に当たって亡くなりました。また、その他11名の負傷者が発生しました。これは水蒸気噴火の一つの例になります。
この草津白根山については、図の湯釜というところから噴火をするのではないかと想定して、気象庁も密な観測体制を敷いていました。また、東工大の観測所も、湯釜を中心に観測をしていました。湯釜では歴史時代に何度も噴火をしたことがあります。ここで起こった噴火は主に水蒸気噴火ということで次も水蒸気噴火が心配されていました。
ところが、です。湯釜から2キロメートルくらい南の方に、実は本白根火山があります。この図を見ますと、丸い穴がいくつも開いていますが、これらが古い火口になります。本白根火山について、3000年前以降は噴火をしていないと、気象庁は思っていました。しかし最近の調査で、実は1500年前にも噴火があったことが分かりました。1500年前の噴火についてはまだ学会発表があっただけで論文にはなっていなかったため、あまり知られていませんでした。いずれにせよ、この1500年以上休んでいた火山が、突然噴火したのです。それが1月の草津白根山での水蒸気噴火で、前兆を捉えるのが非常に難しい水蒸気噴火の典型的な例です。
●霧島新燃岳のマグマ噴火
次の写真は、2018年3月に活動を再開した、霧島新燃岳の噴火の様子です。新燃岳では、2011年に非常に大きなマグマ噴火が起こりました。今回の2018年3月から始まった噴火も、マグマ噴火です。写真で噴煙が上がっている場所の裏側に、少し土手のようなものが見えます。これが火口の縁になります。
噴煙が上がった後に、どんどんとマグマが上がってきて、先ほどの火口の縁を全部埋めてしまいました。火口の中を溶岩が埋め尽くし、さらにあふれ出そうとしている写真がこちらになります。
この時のマグマの活動は、2011年噴火のように激しいものではありませんでした。マグマのあふれだしも非常に速度が遅く、少しずつしか出てこなかったため、近寄らない限り特別な危険はありませんでした。
●西之島のマグマ活動
マグマ活動のもう一つの例としては、西之島でのマグマ活動があります。ご存じだとは思いますが、2013年11月20日、東京から1000キロメートル南にある小笠原諸島内の海面上に小さな島ができているのが目撃されました。
西之島では、2年間にわたってマグマが供給されたのですが、最初は海水と接触するたびに爆発的な噴火をしました。その後は溶岩流をとろとろと出し、山頂からマグマのしぶきを花火のように飛ばすというタイプの噴火になりました。
この図の一番左上の方に三角形のような格好をした島があります。これは昔の西之島で、1974年の噴火でほぼ出来たものです。それ以前にも噴火はありましたが、74年以降噴火をしていなかったのです。それが、2013年になって噴火しました。もともとの島の南の方に小さいものがありますが、2013年の噴火はここで始まりました。その後、この南にある小さい島がどんどんと成長を続けて、昔の西之島を飲み込んでしまいました。現在では、図の一番右のようになりました。
このように2年間もマグマの活動が続いたため、とんでもないことであると、マスコミでは騒がれました。しかし、こういうことは珍しいことではなく、火山活動は時には非常に長く続くことがあります。
火山活動が非常に長く続いた例の一つとしては、雲仙普賢岳での噴火活動があり、1990年から95年にかけ6年間にわたって続きました。また、同じように長く活動したものに、カリブ海のモンセラート島にある、スフリエールヒルズという名前の火山があります。この火山は、1995年に雲仙普賢岳の噴火活動が終わった直後から、同じようなタイプの噴火をし始めて、2013年まで続きました。さらに、少し古い例になりますが、メキシコのパリクティンという火山の場合は、麦畑の中から突然マグマが吹き始めて、1943年から1952年まで活動を続けて、立派な山...