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火山噴火の予知は可能なのか?

火山の仕組みを知る(4)噴火予知あるいは噴火警報の話

藤井敏嗣
東京大学名誉教授/環境防災総合政策研究機構・副理事長/山梨県富士山科学研究所長
情報・テキスト
噴火に対して数十年のタイムスパンにおける中長期的予測は困難だが、噴火の予兆を利用した短期的予測は可能である。東京大学名誉教授の藤井敏嗣氏は、噴火予知の現状をそのように解説する。ただし、噴火の予兆は多くの場合、直前にしか現れないため、予測ができるのはせいぜい数時間から数日前からだという。(全4話中第4話)
時間:11:31
収録日:2018/04/16
追加日:2018/06/01
ジャンル:
≪全文≫

●火山噴火の中長期的な予測は困難である


 4回目の今回は、火山噴火の予知が可能なのかどうかということと、現在気象庁が出している噴火警報について、お話をします。

 まずは、歴史的な記録から、数十年という中長期的なスパンにおいて、いつ頃火山が噴火するかを予知できるかどうかを、考えてみます。



 この図の左側に書いてあるのが、富士山の噴火の歴史です。古文書によって「この年に確実に噴火した」ということが分かっているのが、赤丸で示されているものです。数えると、全部で10個あります。この分布を見ると、例えば飛鳥時代から奈良・平安時代にかけては、数十年に1回ずつ噴火をしていることが分かります。その後は結構まばらになっています。そして、1707年に発生した貞観の噴火の後は、現在までの300年の間、確実に休んでいます。

 歴史的記録に関しては、江戸時代、あるいは1400年代や1500年代から、かなりしっかりした記録が残っています。しかしながら、1100年から1400年の間は、ちゃんとした歴的な記録はあまりありません。この間は戦乱の時代でまだ国がしっかりと統一されていなかったからだと思います。

 ですから、記録がしっかりしていなかった時期に、噴火が本当になかったのかはよく分かっていません。中世という時代は古文書が圧倒的に少なく、歴史学的にも何が起こっていたのかよく分からない時代になります。

 おそらくこの時代にも噴火はあったと思われます。しかしながら最近までの300年間に噴火していないことは確実です。したがって、富士山の噴火はすごく不規則であるということが分かります。これは、1000年くらいのスパンで見た場合にいえることです。

 図の右側のグラフは、明治時代以降の100年ほどの間に発生した浅間山の噴火の回数を数えたものです。1940年代から60年代にかけては、浅間山は年間に数百回の爆発をする火山でした。ところが1973年の噴火以降、10年に1回噴火するかしないかという火山に変わりました。ですから、この100年を単位としてみても、突然に噴火をしなくなるということもあるのです。

 桜島の場合は逆に、1955年から毎年噴火をしているのですが、それ以前は数十年休んでいた時期もあります。火山の活動はそれくらい不規則なものですから、中長期的な予測を行うのが非常に難しいことを分かっていただけると思います。


●火山噴火の短期的予測は可能である


 それでは、噴火の直前の予測ができるかという短期的予測の話に移ります。短期的予測は通常、地面が膨らむなどの地殻変動、あるいは地震の発生などを利用して、予測を行います。



 この図は、浅間山に関して、2009年1月30日からの数日間、山の傾斜と地震の回数を計測したものです。この図の棒グラフは地震の回数を表していて、上の曲線は傾斜計による山の傾きの変化を表しています。山の傾斜ですが、このグラフが下向きになると山が膨らんで、傾斜が急になっていることを意味しています。

 傾斜計での山の傾きは、例えば1月30日や31日のように、通常バックグランドデータとして、少しずつ山が膨らむかのように緩やかに下がっているように見えます。しかし、2月1日を見てみると、傾斜が急激に動き始めていることが分かります。山が膨らみ始めたのです。そして、この急激な変化と、地震の回数の増加がちょうど一致しています。この時、十数時間後には噴火をするだろうという予測をして、噴火警報レベルを一段階引き上げました。



 すると、13時間後の2月2日1時15分頃に、写真のような噴火をしました。これは冬場の噴火でしたから、北風に乗って火山灰が大手町(東京)にも降ってきました。自転車のサドルの上に火山灰がパラパラと降っているのが目撃されました。さらに、立川(東京)の辺りでは、火山灰が雪のように降ってきた様子が、テレビで放映されました。



 このように地震と地殻変動を利用すると、短期的な予知はほぼできます。そのいい例が、この図の桜島の例です。桜島では、山の地殻変動を測定するために、非常に精密な装置を備え付けています。

 ここでは、先ほどの傾斜計だけではなく、伸縮計と呼ばれる装置も使っています。この図で見ると、黄色くなっているところが、伸縮計が動いている部分です。赤い折れ線グラフの収縮は、火口方面に向かって伸縮計が縮んでいることを意味します。つまり、山が膨らんで計測器に向かって近づいているため、収縮しているように見えているのです。逆に、青い折れ線グラフが表している火口と直交方向の伸縮計では、山全体が膨らんでいるので、山が伸びているように見...
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