●トランプ政権は予測不能でショーのような面白さがある
こんにちは、お久しぶりです。私はワシントンD.C.に住んでまもなく3年になります。この間に米国はオバマ政権からトランプ政権に変わり、そのトランプ政権も発足から14ヶ月がたちました。
アメリカから日本の報道を見ていますと、大統領選挙期間中から大手メディアの影響を受けて、ドナルド・トランプ大統領やトランプ政権に批判的な論調が多い気がします。もちろんトランプ大統領の発言やその発言の仕方、さらには彼の行動が過去の大統領とはかなり異なっていて、ユニークであることは事実です。しかし、決して政権全体あるいは政策が無茶苦茶であったりするわけではありません。
私が働いている事務所は、実はホワイトハウスから2ブロック、約5分のところにあります。自宅もD.C.の北西端にあります。今の仕事は過去に米国に住んだ時と異なり、公的な身分は一切なく、一介のビジネスマンです。住民ではありますが米国市民ではなく、気楽な立場でそうしたトランプ政権を見ています。
トランプ政権の特徴は明日何が起こるか分からないという予測不可能なところですが、その面も私にとってはまるでショーを見ているような面白さがあります。予測不可能性を生む原因の一つに、閣僚やホワイトハウスのスタッフが次々と解雇されたり辞任したりして政権が安定していない、という印象があるのではないでしょうか。そこで甚だ不謹慎ではありますが、今回は「トランプシアター」という題名で、そうした主要な人事交代とトランプ政権の政治構造とリンクさせながら、トランプ政権の14ヶ月を振り返りたいと思います。
●頻繁に起きる解任劇は、トランプの一貫したやり方が原因である
上の画像は2018年4月10日時点において、ホワイトハウスの主要スタッフがどれだけ去っていったかを示すものです。赤が去っていったスタッフです。ある調査ではホワイトハウス高官の離職率は34パーセントであり、政権発足1年では過去のどの政権に比較しても異常な高さであることには間違いありません。また、ホワイトハウス以外の閣僚の辞任・解任・交代も頻繁に起きています。
もう1つ面白い画像をお見せしましょう。これはSNSの投稿で見つけたものを参考に作成しました。「apprentice(アプレンティス)」というのは「修行中の見習い人」といった意味で、トランプが主演して全米で大人気となった番組の名前です。これに「大統領」という意味の「presidentプレジデント」を加えて、「appresident(アプレジデント)」という単語を作り、更にトランプ政権を支える高級官僚やスタッフを意味する「celebrity(セレブリティ)」という言葉を付け加えています。
見ての通り白が辞めていった人ですので、例えばイヴァンカ・トランプ氏が去るとビンゴになります。このトランプ氏の番組は2004年に始まり大人気を博し、2012年まで続きました。番組の内容はトランプ氏の会社を舞台に、視聴者が見習い社員となって与えられた課題に取り組むという設定でした。トランプ氏に認められればそのまま会社で1年間働き、働き続ける権利と賞金が与えられます。しかし、番組の最後には必ず誰か振るい落とされることとなります。それを決めるのはトランプ氏で、そのときの決め台詞が「お前はクビだ(you are fired)」でした。このセリフは全米の流行語となりました。
しかし、これはトランプ氏がビジネスで成功してきた際のやり方をモチーフにしたものでした。つまり、画像は、次々と辞任していくトランプ政権の閣僚が、まるで番組そのままであり、トランプ氏は劇中のままの大統領であると揶揄したものなのです。
実は、これはある意味真実を突いています。トランプ氏は閣僚やスタッフには何をして欲しいかを明確にします。そして、基本的にはその後のやり方は本人に任せて口に出すことはありません。しかし、期待した成果が出ない場合には交代させます。トランプ氏からすれば、大統領になっても自分のやり方は何も変えておらず、それゆえ自分は悪くないということになります。私も実際、トランプ政権は政権がスタートした時よりも良くなっていると思います。
●D.C.エスタブリッシュを排除したため、政権が機能不全に陥った
しかし、それを理解するには、トランプ政権特有の政治構造や政治任命ポストの特殊性、さらには政権内部の権力闘争を加えて説明する必要があると思います。
まず政権発足時の状況ですが、トランプ政権(正確には政権移行チーム)は閣僚や高級スタッフの採用に際し、徹底して過去に政権にいた経験者やそのための準備をしてきたいわゆる...