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「衝突回避の原則」は従来の常識を覆す鉄道革命!

東海道新幹線50周年と海外展開(1)日本型高速鉄道システムを世界標準へ

葛西敬之
東海旅客鉄道(JR東海)代表取締役名誉会長
情報・テキスト
N700系
安全性と効率性をきわめて高い水準で両立した日本の高速鉄道には、それを支える日本独自の概念と技術があった。その革命性と国際化に向けた将来展望を、JR東海の葛西敬之名誉会長が語る。(前編)
時間:14:05
収録日:2014/04/15
追加日:2014/07/03
≪全文≫

●50年間、列車事故による死傷者ゼロ。「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則の確立という鉄道革命の結実


今年2014年は、東海道新幹線開業からちょうど50周年になります。その話から始めたいと思います。

東海道新幹線は、ある意味で鉄道の革命だったと思います。どういう革命か。従来の鉄道は、同じ線路の上をさまざまな列車が走っています。通勤列車、急行列車、特急、それから貨物列車。さまざまな速度、重さ、長さ、停車パターンの列車が入り混じって走っています。これはある意味で、線路の容量を非常に非効率に使っているということになります。東海道本線の輸送能力が限界になり、新しいバイパスを作る必要が生じたときに、高速旅客列車だけのための専用線を作ろうと考えました。そうすると線路の使用効率は非常に高くなるわけです。また、在来線のほうも、速度が突出して速いものが抜けることによって比較的近い速度域の列車が走るようになるので、効率がよくなります。そのような高速旅客列車専用線を建設しようと考えました。それは物理的にも法律的にも厳重に守られた空間であって、他のものは一切入ってくることのできない環境の中で、ATC(Automatic Train Control=自動列車制御装置)と列車集中制御装置で絶対衝突をしないような列車運行を行います。「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則を確立したのが東海道新幹線で、世界で初めての試みでした。その結果、東海道新幹線は今日まで50年の歴史の中で列車事故による旅客の死傷ゼロという完全な安全記録を維持してきました。これは大変すばらしい実績です。

●東京~大阪間をメガロポリス化した巨大経済圏の誕生


そうした「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則に基づく日本型高速鉄道システムによって、その他に何が可能になるかというと、まず衝突する心配がありませんから、車両の軽量化ができます。そして軽量化されるということで、エネルギー消費が非常に効率的になります。環境に極めて優しい仕組みになります。と同時に、軽量ですから、線路構造物に対するダメージが少なくて済み、保守費も安く済みます。同時に、軽量であり、また動力が各車両に分散されていること、動輪の数が多いこともあり、加減速性能が高い。その結果、高頻度列車運転が可能であるということになります。

こうしたメリットを持つ高頻度で高速で、そして大量の輸送能力を持つ輸送機関ができ、これが東京~大阪間を結びつけることによって、メガロポリスができていきました。東京~大阪間は、世界でも類例のないベルト地帯です。東京、横浜、それから名古屋、京都、大阪という主要都市があり、またその中間にはそれ以外にも、静岡、浜松、豊橋などさまざまな都市が点在します。そういうところが一つのベルト地帯として、メガロポリス、すなわち連担した都市、一大融合都市のようなゾーンになっていったのです。

東海道新幹線の沿線は、面積にすると日本の国の20パーセント程度です。しかし、そこには日本の人口の約6割が住んでいます。また日本のGDPの60数パーセントがそこから生み出されています。そして、日本の重要都市である政令指定都市全20のうち実に12都市がこの東海道新幹線の沿線にあるという、特別な地域を作ることになりました。

●沿線一帯を経済圏として統合する機能は低いヨーロッパ型高速鉄道システム


この高速鉄道の大成功を受けて、その革命性、革新性が注目され、ヨーロッパをはじめとして高速鉄道の建設が世界的に大きな流れとなりました。しかし、ヨーロッパ流の高速鉄道は、新しく作られたところに関して専用路線を使うのは日本と同じですが、仕組みが日本とはまったく別の体系を成しています。ヨーロッパでは〝interoperability(各国相互乗り入れ)〟という原則で運行されているのです。

日本の場合は、「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則で運行されています。一方、ヨーロッパは〝interoperability〟で運行されています。これが意味するところは、こういうことです。

ヨーロッパが飛躍的に発展したのは19世紀です。その繁栄した19世紀に、ヨーロッパではたくさんの鉄道網が作られました。当時建設された鉄道網は、今の世の中からみると、もう既に投下されてしまった、いわゆるサンク・コストと言われるもので、事実上ただで使えるものです。そうすると「この遺産を使わない手はない」というのがヨーロッパ流の考え方です。「新しい建設区間は高速列車専用にするが、そこで走る列車は19世紀に作られた在来線にも直通運転で乗り入れていく」という考え方になったわけです。これはヨーロッパにしてみれば遺産を活用するという意味で決して意味のないことではあり...
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