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イノベーションを創出するための二つの方法

スタートアップ流イノベーション(5)創出のキーポイント

鎌田富久
TomyK Ltd.代表/株式会社ACCESS共同創業者
情報・テキスト
TomyK Ltd.代表で株式会社ACCESS共同創業者の鎌田富久氏によれば、イノベーション創出の方法は大きく二つに分けられるという。その二つとは「技術シーズ型」と「課題解決型」である。それぞれどのような方法なのか。二つの方法を通じて成功するためのポイントとともに鎌田氏が解説する。(全5話中第5話)
時間:12:22
収録日:2018/05/14
追加日:2018/09/30
≪全文≫

●イノベーション創出の方法その1:「技術シーズ型」


 第5回目は「イノベーションの創出のキーポイント」についてお話しします。イノベーションを起こすやり方は大きく二つあります。



 一つは「技術シーズ型」のイノベーションです。最初に技術があり、それを何に使うか、というケースです。大学でもともと研究されていた技術や大企業の研究所で開発されたベースの技術は多くあると思いますが、そのような技術を生かしてイノベーションを起こすタイプのケースです。

 この場合、技術は最初の第一歩、素材であって、一番重要なのは、そこから本当に「おいしい料理」にすることです。誰もが食べたくなる、ニーズに合う、ユーザーが欲しい商品にすることは意外と難しいのですが、すぐれた素材があるだけで売れると勘違いする研究者は多いのです。まずはおいしい料理にすることが大事で、そうなるとソースやデザインも重要ですし、使い勝手もよく考えなくてはいけません。

 次に、おいしい料理ができたら、それを看板メニューに「繁盛するレストラン」をつくることが必要となります。料理はおいしくても、店は結構簡単につぶれることがあるからです。値段の設定や、リピーター(継続的なお客さん)になってもらうこと、またどのように店を増やしていくかといった、要するに経営的な面ができて、一つの事業がやっと立ち上がるということです。つまり、技術者、研究者が最初に技術を開発して、次にどうやっておいしい料理を作るか、そしてどうやって繁盛するレストランにするかということを一緒に考えることが非常に重要だということです。

 技術が最初にあったとき、どのような課題を解決できるかということですが、ポイントとしては、「こんなことができるのではないか」と最初に思い付いたことにあまり飛びつき過ぎない方がいいということです。解決できる課題は本当に良い課題なのかを考える必要があり、それは本当に市場として大きいのか、将来的にわたって重要なのかをもう一度考えてみて、良い課題であればそのまま進めばいいし、そうでなければ、そのテクノロジーでもっと他のことができるのではないかと考えてみることが大事です。

 次に良い課題であったとして、今度は逆に課題側から考えてみることが必要となります。このテクノロジーは本当に必要不可欠なのか、別の方法でもできるのではないかということです。そうすると、もっと簡単な方法でできることがしばしばあり、ユーザーからするとそれで十分ということもあるので、「逆は必ずしも真ならず!」といえます。テクノロジーから見るとこの課題で良さそうだが、課題側から見るともっと簡単な方法でも十分ということもよく起こるのです。そこをよく考えないと、せっかくつくっても受け入れられないということになりますので、良いテクノロジーありきで考える場合は、そのようなことに注意しなくてはいけません。

 そこで、よく私が言っているのは、「応用の可能性を端から試す」ということです。しばらくの期間、走り回ってとにかく思い付くものをどんどん試すということです。これをやるといいと思います。

 このときのポイントはスピードとリズムで、これが大事です。一つのことに長い時間をかけてしまうのは良くないので、早く失敗することが重要です。たいていは最初や二番目の思い付きで大きな成功につながることは少ないのです。可能性はやや低そうだがやってみよう、というぐらいのものが、実際やってみると大きな可能性があったり、そこから話が広がっていくこともあるので、早く失敗して早く学習するという「仮説→検証→改善」のプロセスを早く回すことが、実は非常に大事なのです。数をこなした人が成功の確率が高いということは実証されていますので、これが非常に重要です。


●イノベーション創出の方法その2:「課題解決型」


 もう一つのイノベーションの方法としては、「課題解決型」のイノベーションで、解決したい課題が先にある場合です。これは解決するために必要なテクノロジーを後から探すケースのイノベーションですが、課題がはっきりしているので、最初にやるべきことは目の前の課題を持っているユーザー(それは自分でもいいのですが)を徹底的に満足させるということです。

 目の前の一人を満足させることができなければ、世界中の人を満足させることは到底できないので、ここに徹底的にこだわります。このとき、ユーザーの予想を超える驚きを与えることができたらかなりいいと思います。

 そして、目の前の一人を満足させることができたら、次にやるべき...
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