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食文化の研究には様々な分野を総合した食科学が必要

食科学の扉を開く~立命館大学食マネジメント学部の試み~

朝倉敏夫
立命館大学BKC社系研究機構上席研究員/国立民族学博物館名誉教授/総合研究大学院大学名誉教授
概要・テキスト
現在われわれが直面している食の問題は、従来の価値観や知識では解決できない、人類的・社会的課題となっている。この問題に取り組むためには、社会科学・人文科学・自然科学全ての視座が必要である。立命館大学食マネジメント学部長で同学部教授の朝倉敏夫氏が、食の問題と、それを総合的・包括的に研究する「食科学」の重要性について論じる。
時間:13:40
収録日:2018/04/27
追加日:2018/09/26
カテゴリー:
タグ:
≪全文≫

●食をめぐる問題は1つの学問分野では解決できない


 立命館大学食マネジメント学部の朝倉敏夫です。

 今、世界は食をめぐるさまざまな問題に直面しています。上の図で示されているように、食は、身近な問題であるとともに、人類の歴史に関わるグローバルな問題でもあります。そして、1つのディシプリン(学問分野)を超えて、従来の価値観や知識では解決できない、人類的・社会的課題となっています。

 持続可能で安全・安心な食の確保、世界的な食の偏りと格差、食品生産技術や保存輸送技術の変化など、現在われわれが直面している食をめぐる問題は、もはや1つの学問分野だけでは解決できません。

 ところがこれまでのところ、食はあまりに身近でありふれているため、学問の対象として深く探求されませんでした。しかし、食についての人類的な問題の解決に向けては、深い教養や最新の科学技術に関する専門的な知識も必要となります。

 大学は、教育と研究という2つの役割を持っています。ここでは、食の研究について、立命館大学食マネジメント学部が考えていることを紹介したいと思います。


●食文化とは何か


 食文化という言葉が、現在では広く知られています。しかし実のところ、食文化の研究に関しては、それほど長い歴史があるわけではありません。この食文化の研究という分野を開拓したのが、石毛直道氏(国立民族学博物館名誉教授)です。

 石毛氏は、食文化を研究するために、世界100カ国以上に足を運び、自称「鉄の胃袋」にその国々の料理を収めてきました。その活動を踏まえて、作家の小松左京氏は、「大食軒酩酊」という雅号を石毛氏に与えました。

 石毛氏は、このようにフィールドワークに出て世界の料理を食べてきたことに加え、多くの著作や論文を世に出してきました。その成果がまとめられているのが、ドメス出版から刊行されている、『石毛直道自選著作集』になります。

 この自選著作集の第二巻である「食文化研究の視野」に、石毛氏が考える、食文化研究と学問領域との関係が、食の文化マップとして提示されています。この図では、横軸に生産から消費、縦軸に自然科学と社会科学とが配置されています。

 食をめぐるこれまでの研究は、主に食物をモノとして扱う農学の分野、食...
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