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これからは「量」から「質」の社会へ

「プラチナ社会」実現に向けて

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
情報・テキスト
『日本再創造』(小宮山宏著、東洋経済新報社)
衣食住、移動手段など、様々な面で量的に満ち足りた人類は「量」から「質」の時代へ進む。「質」の時代に重視される論理・視点とは何か。向かうべき社会と産業の方向を示す。
『日本再創造』(小宮山宏著、東洋経済新報社)
衣食住、移動手段など、様々な面で量的に満ち足りた人類は「量」から「質」の時代へ進む。「質」の時代に重視される論理・視点とは何か。向かうべき社会と産業の方向を示す。

●文明が追い求めてきたことを今われわれはみんな手にした

私は、これから人類が目指すビジョンとして、「プラチナ社会」というものを提案しています。それについてお話をします。
今、人類は本当に節目の時代を生きていると思います。それは、いくつかの意味があって、この間お話した1万年前に世界各地で農業ができるようになった農業革命、それから、物が非常に大量に作れるようになった産業革命という話が一つ。
それから、その産業革命の結果、昔はごく一部の人が独占していた物の豊かさ、これをわれわれ一般の人間が持つことができるようになった。例えば、自動車であれば、今はもう欲しい人はみんな持っているわけです。日本を含めて先進国では2人に1台、持っていますから。
それから、情報というのは昔から本当の貴重品だったわけです。それによって情報を早く得た国が戦争に勝ったり、情報を早く得た人がお金を稼いだりというようなことだったのですが、今やもう端末で世界のさまざまな情報を、私たち一般の人間が見ることができるというような意味でもです。
それから、長寿を手にしたわけです。かつてはずっと24、25歳の平均寿命というのが続いてきて、ごくひと握りの特権階級の人たちだけが50歳、60歳、70歳という長寿をまっとうしたわけですが、今、先進国の平均寿命はもう78歳ですから。これはごく一般の人が長寿を楽しめるようになったということです。
そういう意味で、衣食住、移動の手段、情報の手段、長寿といったような、言わば文明が長い間ずっと追い求めてきたことを、一般の市民、われわれ自身がもうみんな手にしました。これは本当に人類史の節目です。

●これからは「量」から「質」の時代へ

そのときに、これから一体、社会というのは何を目指していくんだろうと思うわけです。つい最近までは、もっと物が欲しい、もっとおいしい食べ物が欲しいと、ずっと進歩してきたわけですが、その欲望が産業につながるわけで、われわれの文明はそれをもう果たしてしまったわけです。そうしたら、このあと何にいくか。
私は「量的に満ちた」ということだと思うのです。量的に満ちたあとというのは、「質」に向かうのは当然なのではないでしょうか。例えば、長寿。単に長生きすればいいのではなくて、どうやって健康で自立して、いわば誇りある人生をまっとうできるかということは、長寿の質です。
例えば、衣食住の住居。これは今、日本では5,800万軒の家があって、世帯の数は5,000万しかないので、800万軒空き家なのです。雨露をしのぐという意味では、人類、あるいは先進国の人々というのは、もう家に困っているわけではない。だから、そういう意味で、「もっと家が欲しい」という需要というのはもうほとんどないと思うのですが、「もっと快適な住まいが欲しい」という需要というのは、大きいはずなのです。
自分のことを言うのもなんですが、11年前に家を作ったときに、エコの家を作ったわけです。私は非常に快適に感じていたのですが、それを裏付けるデータが出ています。建築研究所というところで、古い1枚ガラスの、すきま風とまではいかないけれども典型的な日本家屋に住んでいた人が、新しい断熱のいい機密性の住宅に移った、そういう人を2万人以上を対象に調べたのです。その結果、10個調べた病気の有病率が激減しているんです。例を二つだけ言いますと、例えばアトピー性皮膚炎は、61パーセント減っています。また、心臓疾患は80パーセント減っているのです。
これは二つの理由によるだろうと思われてい...
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