テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

自動運転の実用化は、新しいビジネスを生み出す

自動運転が社会を変える(4)自動運転の法整備に向けて

加藤真平
東京大学大学院情報理工学系研究科 特任准教授/株式会社ティアフォー 創業者
情報・テキスト
通常、車を運転する場合、ドライバーは免許が必要だが、無人による自動運転の場合、法律上どのようなことが必要になるのか。また、それをクリアした場合、自動運転にはどのようなビジネスの可能性があるのか。今回は、法律面から自動運転について考えていく。
時間:10:07
収録日:2018/10/23
追加日:2018/12/12
タグ:
≪全文≫

●運転席を無人にする際に必要な法律面での処理


 今回は、法律面の話をしていきたいと思います。

 第2回目の講義で紹介した実験に、セーフティードライバーが運転席に座っている場合と、運転席を無人にしている場合の、両方の場合の実験があったと思います。これは実は、法律面で見ると、全く異なる処理をしています。

 まず、セーフティードライバーが運転席に座っている場合ですが、これは実際に、運転免許証を持っている人間が車の中にいてドライバー席に座っています。ですから、何かあればすぐに、ハンドルやアクセル、ブレーキを動かすことができる状態になっています。この実験は実は、現行法では何の問題もありません。ただし、自動運転の技術そのものが確立されていませんので、自治体や警察、あるいは中央政府に対して、しかるべき手続きをして実験を行っています。しかしながら、法律面で見れば何ら特別な措置はしていません。免許証を持ったセーフティードライバーが実際に運転席に座っており、何かあったらハンドルやアクセル、ブレーキを自分で動かして、危険を回避する操作をします。

 一方、運転席を無人にすると何が起こるのでしょうか。この場合、運転免許証を持った人が中にいない車が走るということになりますので、道路交通法で禁じられています。なぜなら、今、日本で車を動かそうとすると、無人か有人かを問わず、免許を持った人間がその車に関する責任をしっかりと果たさないといけないからです。これは法律で決められていることですので、破ることはできません。

 では現在において、無人運転の実験はどうすれば許可されるのでしょうか。それは、リモートでの操作を行うことです。つまり、車の中ではなく車から離れた場所に、インターネットで車と接続されたリモートの運転席を設けて、免許証を持った運転者がその運転席に座っているのです。免許証を持った実験担当者は車の中にはいないのですが、ネットワークでしっかりとつながった遠隔地に、スタンバイをしているということです。そして、何か起こったときには、リモートの運転席で車を操作します。このように、普段運転しているのと同じように運転できる状況をつくり出すことができれば、そのシステムを使って無人の車を公道で走らせることができるのです。


●遠隔地に運転席を設けると、運転席も車検の対象になる


 実はここに関わってくるのは、道路交通法だけではありません。今、「遠隔地に運転席を設ける」といいましたが、その場合、今度は運転席も車検の対象になってくるのです。つまり、遠隔地に運転席を設けると、その遠隔地の運転席そのものが車検の対象になるということです。今までは車だけをテストしていればいいということでした。しかし、道路交通法ではなく車両法(道路運送車両法)という別の法律によって、運転席の基準が決められているため、フロントの映像がしっかりと見えているか、後ろの映像は見えているか、遠隔地からでも車に付いているべきサイドミラーの情報がしっかりと見えているかなど、そういった基準を満たす必要性が出てくるのです。

 このように、リモートで遠隔地から操作しているといっても、実際に車の中にいるときと状況が変わってしまえば、車検を通らないことになります。逆にいえば、遠隔地にいたとしても、車の中にいるのと全く同じ情報が得られて、アクセルやハンドル、ブレーキを動かして同じように車を操作することができる、といった状況をしっかりとつくり出せれば、今の日本では一般公道でも無人の車を走らせてもいいことになっているのです。


●自動運転の実用化は、新しいビジネスを生み出す


 われわれは今、無人運転の実験を始めています。そこでは、今まで自分たちだけで実験をしていたのですが、これから実用化するに向けて、いろいろな企業がこの無人運転を使ったサービスをサポートするような活動を始めています。その1つが、保険会社によるものです。

 保険会社は普段、事故があったときに登場するのが役割です。しかし、自動運転の世界になると、運転席に人がいない状況になります。無人タクシーであれば、乗車しているのはお客さんになるのですが、お客さんは誰もいないと非常に不安になってしまいます。そこで、保険会社は今、事故が起こったときに迅速に無人運転車をサポートできる体制を構築しようとしています。その1つの例を、映像でお見せしたいと思います。

 映像は、保険会社のサポートセンター内に、リモートで監視と操作ができる設備が備わっている状態です。映像上では今、ハンドルが勝手に動いていると思います。これは、モニターしている車のハンドルの制御が実際にそのまま伝わってきており、リモートでもハンドルが回っている状態です。そこでは、リモートで操作しているのですが...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。