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オンラインとオフラインの乗り入れに成功した企業

デジタルトランスフォーメーション(2)流通の場合

伊藤元重
東京大学名誉教授
概要・テキスト
リアルエコノミーでのICT活用を考えた場合のポイントの一つに、流通におけるオンライン、オフライン双方の乗り入れが挙げられる。オンラインからオフラインへの試みを始めているアマゾン、オフラインのメリットをオンラインビジネスに生かして成功しているアメリカの高級百貨店の実例をもとに、さまざまなデジタルトランスフォーメーションの形を解説する。(全2話中第2話)
≪全文≫

●グーグルとアマゾンのビジネスモデルの違い


 デジタルトランスフォーメーションについて、2つ目のポイントとしてぜひ、お話ししたいのは、流通のことです。実はひと月くらい前に、アメリカのグーグル本社やサンフランシスコの大手の百貨店を回って、このデジタル革命と影響を考える機会がありました。

 日本ではもちろんですが、アメリカでもアマゾンが非常に伸びてきて、小売業の世界ではアマゾンにどこが対抗するかということが、話題になっていました。そこで、これは私の個人的な印象ですが、日本を代表する百貨店の社長さんたちとグーグルに行って話を聞いた時、非常に彼らの相性がいいのです。

 なぜかというと、アマゾンはITを使ってとても先進的なビジネスモデルでやっているのですが、同時に物流に入り、また店舗を購入したりして、まさにネットとリアル両方で展開しようとしています。だから、リアルの小売業とぶつかっていくわけです。

 グーグルは、基本的にいわゆるバーチャルの世界だけでやっています。なので、グーグルとアマゾンが組めば、例えば百貨店やコンビニエンスストアはそこに新たな付加価値をつけられるのではないだろうかと、考えられるというのです。そこもまた、グーグルとアマゾンの違いだというような話になりました。


●オフラインへ進出するオフライン企業アマゾンの試み


 そういう話を聞きながら印象深かったのは、結局ポイントはオンラインとオフラインということです。部屋でインターネットを使っていろいろ注文するオンラインの世界と、それから店舗であるオフライン、この2つがあるのであって、結局オンラインだけでもオフラインだけでも駄目なのです。アマゾンでいくら注文しても、モノを家まで運んでもらわなければ意味がないわけですから。

 そこで今、何が起こっているかというと、オンラインで伸びてきたアマゾンは必死になってオフラインの方に入ろうとしているのです。なぜ、アマゾンがアメリカでも最高峰といわれているホールフーズというスーパーマーケットを買収したのかというと、やはり生鮮品のビジネスをやろうとするば、産地との関係や調達の仕組み、あるいは物流のロジスティクス、場合によっては店舗でお客さんに見せるというところまで含めたオフラインの機能が必要であり、それが欲しかったからです。

 アマゾンはそれ以外にもいろいろなオフラ...
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