●日本テレビのマルチソナービーム調査から始まった
目標とするのは、この伊58と呂50です。これは文献から取ってきたものですが、伊58のデッキ上には回天が乗っています。実際の戦争には回天を積んで臨んでいますし、回天を撃っています。しかし、海没処分された時には回天はなく、デッキ上にこのようなものはなかったわけです。そして、呂50はこれです。
これらがどのように沈んでいるかは、先ほど申しました日本テレビさんが2015年に、マルチビームソナーで海底を調べました。
当時のデータとしては24艦あります。海底はほとんど真っ平らで深さが200メートル、そこに潜水艦が沈んでいます。例えば、こちらの14番は非常に大きく、長さ120メートルの伊402です。これは大体想像がつきますね。
長い艦はどれであるか、小さい艦はどれであるか、いろいろ想像はできますが、大きな艦でも爆撃して、あるいは火薬を破裂させたり砲撃して沈没させられているので、ばらばらになっている可能性があり、どれがどれかをこれだけで特定することは、とても難しいのです。
●サイドスキャンによって新たな潜水艦の存在が明らかに
この日本テレビさんの調査が非常に役に立ち、あとはわれわれがそれぞれの艦を調べればいいという見通しが立ちました。しかしながら、5月にこのデータを基にして、もう少し艦をはっきりさせるために、サイドスキャンソナーという調査を行いました。その結果、23番は実はノイズで、ここには何も存在しないことが分かりました。それからもう1つ、25番がここにありました。当初のデータにはない潜水艦があり、真っ直ぐに立っていて、後で伊47であることが分かりました。それで24艦がここにそろっていることが分ったのです。
次に、音響調査についてお話ししたいと思います。1つは、最初に日本テレビさんが行ったマルチビームソナー調査です。これは、このように細い音波を出して、ずっと前へ進んでいってスキャンをし、海底のでこぼこを調べます。そうすると、潜水艦があれば、そこがぼこっと出っ張っているように見えます。これがマルチビームの原理です。
●サイドスキャンソナー調査とは何か
一方、サイドスキャンはどういうことかというと、横方向にスキャンするという意味で、音波をトーフィッシュという飛行機のようなものに乗せて引っ張ります。引っ張ったときに、これが海底の近くまで行くようにして、横方向にぼーんと音波を出します。それで、それぞれの点から音波が跳ね返ってくる際に、遠いところから跳ね返るのは時間がかかりますから、横軸に時間を取ると、跳ね返りが見えてくるわけです。もしもその辺に硬いものがあれば強く反射し、強く跳ね返ってきます。泥のようなところだと、跳ね返ってこないので黒く見えます。そのようなことをして、海底一帯にどのようなものがあるかを調べることができます。
これは、この立っている潜水艦について説明したものです。音波を出しますと、音波は時間によってこのように進んでいきます。最初に、ここの突先に当たった音波が反射して、最初にこちらに戻ってきます。次々に、このようなところが反射して、次はここに来ると海底に反射が起こり、それから、最後はこの時間になると、音波はここまで来て、ここが影になるなど、いろいろ専門的なものがありますが、これがサイドスキャンで、手軽で割と簡単に調査ができます。海底のものに接近できるわけです。これを5月に行いました。
●視覚的な調査であるROV調査の問題点
それをベースに、次はROV調査を行いました。ROV調査は以前にもテンミニッツTVで何回も説明していますが、ケーブル付きのビークルをものに近づけて調べます。このように接近して調査を行うことができます。
五島列島の沖合は東シナ海ですが、何が問題かというと、水がすごく濁っています。例えば、戦艦大和を発見した場所はもう少し南の方ですが、あそこは例えば10メートルぐらい離れても、何とか向こうが見えます。
それからこの間、ポール・アレンたちのグループが戦艦武蔵を見つけました。戦艦武蔵は海底1,000メートルを超えたところにありますが、水がすごく透明です。したがって、遠くからもいろいろなものがよく見えます。
しかし、東シナ海のわれわれが調査している場所は、5メートルも離れるともうよく見えなくなってくることが問題です。要するに、ROVでは視覚的に調査することが、この濁りに対して大きな影響を受けるのです。ですから、潜水艦...