●小児がんの問題
そうなると、最初のときは病院でもできるような非常に小さな範囲内でのがんの扱い方だったものが、結果的に社会全体としてがんにかかった人をどうするのか、がんにかかった人たちの就労はどうなるのか、というような問題が出てきたのです。
他にも第1期の時は対象となったのは、胃がん、乳がん、肺がんなど五大がんです。いわゆる患者数の多いがんが対象になっていたわけですが、それだけでは駄目だということになりました。
例えば、希少ながんのうち、最初にディスカッションされたのは子どものがんです。子どもさんは、大人たちと違い、率からいうならば少ないので、率の高い他のがんとは全く違います。けれども非常に重要なのではないかということで、希少がん、あるいは小児がんという表現にしていますが、このようながんに対しての対策をどうするのだ、ということが話題になります。
そうすると、子どもからということになります。では、「がんだ」と子どもに伝えられるのか。あるいは子どもががんを知っているのか。子どもだけでなく、成人になっているからといって、がんについて果たしてちゃんと分かっているのか。というような話になっていきました。つまり、わが国の中でがん教育がしっかりやられているのか、ということです。
それまで、がんというのはほとんど口に出されない、がんの告知はしない、というようなことからすれば、多くの国民に面と向かってがんについて考え、それをどうするのか、というようなことはなかったのです。このままでは対策がどんどん進むということも難しいだろうということになります。そういったものを含め、がん教育をしっかりしなければいけないということなのです。これもやはり病院の中で行うがん対策ではなく、さらに広い社会全体の中で、がんについての教育が必要だということになってきた、といえるでしょう。
●社会全体で見直すがん医療
そのようなことで、病院というところで医療を中心に見てきたものを徐々に空間的に広げ、社会全体で見直そう、そして、がんに対する教育を行って賢くなりましょう、当然ながらそのための予防もしなければいけない、というような話になりました。
そうして、見方を広げるため、そういうものを第2期計画の中心に入れたらどうだろうかということで、進めたわけです。
ここに模式図を出していますが、がんという病気とがん患者さんということから始まったのが第1期で、次のステップとしてそれを社会全体から見直そうよといったことが第2期計画という形で進んでいきました。それが、大きな流れの中での2期の計画だったということになります。
●第2期がん対策推進基本計画の総括
そうして、二期が終わるということで10年近くたつことになります。そうすると、そろそろある程度の評価ができるのではないかということになってきます。そこで、がん医療についての問題、あるいは「緩和」という点から見た患者さんのケアの問題、がん患者さんの就業の問題、また、小児がんに対しての対策は進んだのだろうかという問題がある程度見え始めたということなのです。
どのようなことが見えてきたかというと、最初にがんによる死亡率の減少についてです。はじめはどことなく10年で20パーセント下がるような直線に乗っているような感じに思っていたのですが、10年近くになってくると、次第にそれが成立しない、つまり20パーセントには到達できそうにないという状況が見えてきました。ですから、そういった意味では、第一の全体目標はややうまくいっていないのではないかということになってしまいます。
●がん医療の進展
では全部うまくいかなかったのかというと、そうではありません。医療の問題を見てみると、1期目からしっかりディスカッションされた拠点病院の中では、どんどん良くなってきたわけです。医療そのものが1期と2期との間に相当進み、がん医療もかなり変わりました。当然、緩和というものに対しても大きく変わってきました。
がん患者さんにがんの告知の問題がありました。昔はタブーのように思われたものが、いつの間にか、がん患者さんに正しくがんを告知することが自然になっています。それは、一方では教育というものが一緒に進んできたがために、そのようなことができるようになったわけです。
そのような形で、確かにがん対策推進基本計画は、それぞれの道ではそれなりの成果を上げてきたともいえるのです。
●がん登録の開始
第2期の時に問題になったの...