●民主党には、格差が広がりつつあるときに歯止めをかけていく役割がある
―― 民主党という政党は、最終的に何をやりたい政党なのか、また、民主党のレーゾンデートル(存在価値)、すなわち、国民に対してどういう旗の下でやっていくのか、そのあたりのお考えをうかがいたいと思います。
野田 私は、やはり民主党という政党には、格差が広がりつつあるときに歯止めをかけていく役割があると思います。
人類が命懸けで獲得した価値というのは、自由と平等だと思っています。そして、そのどちらも大事です。けれども、例えば経済で言うと、統制経済のように社会主義的になってきたときには、自由主義という右足を出さなければいけないときがあります。けれども、格差が広がってきているときには、その歯止めをかけるために、「分配政策は少し行き過ぎた」というお話があったかもしれませんが、平等という左足を出さなければいけないときもあります。要するに、自由と平等にあまりこだわってはいけないということです。
私は今どちらかというと、格差の拡大に歯止めをかけて、もっと中間層の厚みが復活してくることのほうが大事な順番だったのではないかと思いました。その役割は多分民主党にあったと思います。そのことは、これからもまだしばらくは大事ではないかと思いますので、そこの正当性を忘れてはいけないと思います。
それから、外交的には、今の状況というのは、どちらかと言うと少し右に傾きすぎていて、狂騒が過ぎていると思うのです。その対抗軸が共産党であり、山本太郎氏です。そして、真ん中のリベラルどころか、穏健な保守層を代弁する声が今少ないと思います。そこがむしろ民主党の今までの立ち位置でありましたので、外交安全保障の上でもまだまだ出番があると思います。そういう意味でスペースはかなり空いていると思いますので、われわれが元気を取り戻して走り回れば、そのスペースを埋めることができると思います。われわれの正当性が今なくなったというわけではなく、依然として、そのやりがいというものはあるだろうと思います。
●アベノミクスの金融緩和のために踏み台になった野田政権
―― 安倍政権を見て、ここはうまくいっているのではないかという点、もしくは、ここはやはり間違っていると思われる点を教えてください。
野田 今の安倍政権の中を見ていて、特に金融の話がありましたが、財政規律を守るメッセージを出したあとには次第に金融政策にてこ入れをしていくのが順番だと私も思っていました。
ですから、覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが、野田政権末期のときに、1パーセントの物価上昇を目標として、一種のアコードを日銀と結びました。あのあたりからじわじわやっていこうと思っていたので、いきなり2パーセントまでは私も考えていませんでした。それをもっと大胆にやったことが、アベノミクスの金融緩和につながっているのだろうと思いますので、順番として私は正しいのだろうと思いますし、むしろ、その踏み台になってしまったなと思います。
ただ、私は、政権が替わるたびに政治がよくなると思ってもらえる世の中ができればいいので、踏み台になることは全然構いません。あとは、金融緩和について言えば、出口が難しいので、その出口のところをちゃんとやってほしいなと思います。
安倍政権について、実は言い出したらちょっときりがないのです。それこそ1時間では足りないぐらい言いたいことはいっぱいありますが、それを言うために私はここに来たわけではないので、今言うとしたら、われわれを踏み台にしてもいいので、いい政治をやってほしい、ということです。
また、あまり抽象的な例えで分かりにくいかもしれませんが、総理大臣というのは駅伝ランナーです。 伊藤博文氏からたすきをもらって、歴代ずっと走っているわけです。私は箱根5区の上り坂担当で、足を引っ張る人まで出てきて苦しかったけれども、今、安倍さんは箱根6区で下り坂です。ただ、上り坂も苦しいですが、下り坂は走るのが難しいです。スピードを出し過ぎてしまったり、脚を痛めたりすることもあります。そこで、安倍さんがこけるだけならまだいいのですが、日本がこけてはいけないので、その走り方を野党として厳しくチェックしていきたいと思います。
ということで、今日は、細かな政策論にあまり立ち入って申し上げないようにしようと思います。
●「ボールを離さないと日本がつぶれるのではないか」という可能性
―― 2年前の11月の15日に党首会談をやられたとき、「解散します」と決めたときの覚悟の気持ちを一言、お願いします。
野田 それまでにいろいろな厳しい政治判断を行いました。原発の再稼働からTPPに舵を切るとか、いろいろと道筋をつけることをいっぱいやったの...