●日本人はまっとうに戦っているか?
小林:ここ5年~10年というのは、主体がユーザーになってきますよね。日本の資本主義そのものも、テクノロジーも、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)に象徴されるように、既存の自動車屋さんが、自動車をつくってディーラーを通して売るという仕掛けから、グーグルのように自動運転をベースにして、シェアリングエコノミーで、いってみれば乗る人がモビリティを「アズ・ア・サービス」として見ていく。あと5年したらどちらが勝つかです。
ヘルスケアも、みんな同じだと思います。かつては医者や病院が圧倒的な権威を持っていた。医学という情報を盾に、患者に対しては圧倒的な力で押さえてきた。あるいは厚生行政で守ってきた。しかし今、これからは予防医学とかヘルスケア・ソリューションの時代になってきました。
どちらかといえば、人生100年時代に、ピンピンコロリをどう設計するか。患者自体が、そうとうレベル高く自分で決定しなければいけない。昔のような薬害はもちろん駄目ですが、お上が決めてくれたもの以外は一切やらないような文化圏ではなくて、ユーザーがヘルスケアやメディカルを自分なりに選ぶ。「ヘルスケア・アズ・ア・サービス」「メディスン・アズ・ア・サービス」の時代になってきています。
私たち素材屋も、IT、デジタルの時代で、ただ「モノがあればいい」という時代は明らかに終わったと思います。社会性という意味で、CO2の削減、プラスチックごみの問題など、全体構造を見ながら、どうやってサプライするか。あるいはサーキュラー・エコノミーで、サプライしたものをいかにリサイクルしていくか。全体のデータのプラットフォームもありますが、モノのプラットフォームというようなものも考える。そういう社会的な転換を考えていかない人は、時代に取り残されます。全部がXaaSの時代になるのではないかと思います。
そういうことに日本人がまっとうに戦っているかが気になるのです。ドイツの化学会社にせよ、アメリカにせよ、GAFAにせよ、絶対に先を考えています。そこが戦いの基本になっているのに、ここ5~6年前まで、日本はモノづくりが強いなどと、のんきなことを言っていた。そのうちに、あっという間にこういう状況になっている。それも非常に心配です。
ものすごいスピードで変わっている。ガバナンス、産業構造、社会システムの変換が遅れに遅れている。企業トップのマインドセットもほとんど従来型で、アナログ的。アカデミアも硬直化した状況です。あいかわらず行政だけでなく、民間企業でさえ事業部単位の縦割りで、なかなか横串が刺せない。アカデミアはもっとひどい。
ここ数年で、競争原理は入ってきている。まだ完全に敗れたわけではない。皆がしっかりそういうことを共有して、本気でこの国を再建しようという思いにどこまで持ってくるか。それが一番ポイントではないかと思います。
そのためには、もう少し政治家が勉強しなければいけない。申し訳ないけれども、地方活性化もいいですが、世界の最前線のテクノロジーなり、最前線の儲け方をもう少しわかった政治家が増えないといけません。東京一極集中といいつつも、この状態のままでは、具体的な手が打てません。
―― 最前線の技術と、最先端の儲け方と両方持っていないとだめですね。政治は、いまの選挙区を引きずっているかぎりはだめですね。
小林:いちばん年寄りにいってしまいます。60歳以上、70歳以上の年寄りが全体の25パーセントくらいいて、投票率はそちらが高くて、若者の投票率が30パーセントだったら、全体の投票比率は圧倒的に老人が高い。そうすれば老人志向の政治になってしまいますね。そこだけ握っていれば当選してしまうのですから。
おもしろいことに、安倍政権は若い人がサポートして、60歳以上はアンチ安倍が多いのではないですか。そういう意味では自民党も安閑としておられませんが、いまの若い人のなかでの安倍サポーターの割合が、少なくとも60代、70代より多いことをどう考えますか。
―― 最初、会長がいわれたように、8割以上の若者が満足しているからではないでしょうか。
小林:老人は、案外満足していないのです。もっとこの国は何とかしなければいけない、と。若い人になればなるほど満足している。
―― まだ、70代のほうが、はるかに本を読んできて、考えてきています。
小林:若い人は感覚的で、まじめに歴史も勉強しない。スマホなど小さい領域のなかで、「閉じた系」でなんとなく満足してしまっている。それが楽ですからね。そこに解というか、事実が隠れているのかもしれません。
●ユダヤ人は世界人口の0.2%なのにノーベル賞受賞率は23%
―― かなり危うい年代を形づくっていますね。イスラエルに行って面白かったのは、会ったのは...