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多様性と一貫性という矛盾をどう綜合していくのか

知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(5)弁証法的綜合による新たな価値創造

遠山亮子
中央大学 大学院 戦略経営研究科 教授
概要・テキスト
日本企業は従来、アメリカの真似をしながら効率性を追求してきた。だが現在は異能異端な人間を含めた多様性を追求することで、新たな知識を生み出す必要がある。企業は、知識を活用し、主体的に環境をつくりかえていくことができるのである。(全9話中第5話)
時間:11:57
収録日:2018/11/24
追加日:2019/08/22
キーワード:
≪全文≫

●知識は視点の違いから生まれる


 知識は、実は先ほどいったように個人の主観が大事になります。なぜかというと、視点の違いから生まれるからです。知識と情報は非常に似たような性質を持っていますが、では知識と情報は何が違うかというと、簡単にいうと、知識は「意味のある情報」と定義されています。現象やデータ、これが情報ですが、その背後にどういう意味があるかを読み取るのは人間の主観です。

 例えば、ペットボトルの中に水が200cc入っているというのはデータであり、情報です。でも、それをペットボトルの半分が空と思うか、半分に水が入っていると思うかという意味を読み取るのは人間の主観です。人によってはペットボトルの半分が空だと思って水をつぎ足すかもしれないし、人によってはペットボトルの半分に水が入っていると思って、その水を飲み干すかもしれない。それは人の主観によって違うわけで、その主観が違うからこそ新しい意味、知識が創造されるわけです。


●知は視点の違いを綜合することによって生まれる


 そうすると、ただ違うだけでは駄目で、その違う視点というものを、どう綜合するか。綜合は弁証法的綜合における「綜合」という意味ですが、それぞれ異なる主観を綜合、つまり一緒にして、どちらか選ぶのではなく、どちらも合わせて新しい主観というものを、どうつくっていくのか。主観、すなわち私がこう思うというだけではなくて、それを客観化して、他の人から見てもそうだと思えるから、新しい知が生まれてくるわけです。

 だからその主観を綜合して、どう客観化していくのかということが、知識の創造には重要になってきます。


●多様性と一貫性という矛盾をどう綜合していくのか


 そうすると、組織の問題としては多様性と一貫性という矛盾を、どう綜合していくのかという問題が起こります。企業は、組織として一緒に働いていくためには一貫性が必要になります。でも、新しい知をつくろうと思えば、一方で多様性というものが必要になります。

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