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「ただ1つの哲学を持ち、その哲学に命を懸ける人間」を育てよ

読書と人生(3)「笑顔のファシズム」を越えてゆけ!

概要・テキスト
日本では、たとえば「戦争肯定」の話をすると、それだけで吊し上げられてしまう。だが、これは「ファシズム」であり、スターリンの所業と、その本質において変わらないのではないか。実はイギリスのジェントルマン教育の目的は、「ただ1つの哲学を持つ人間をつくる」ことだった。そして、自分でその発言に対する責任を取りさえすれば、どんな考えを持ってもよいとされていたのだ。(全10話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:09:51
収録日:2019/05/14
追加日:2019/08/30
カテゴリー:
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≪全文≫

●「命を懸ける1つの哲学」をつくり上げる


執行 英国のジェントルマン教育、つまりイートン校からオックスフォード大学に上がっていく人たちの教育とは、イギリスの教育家でジェントルマン教育を築いたトーマス・アーノルドによると、「ただ1つの哲学を持つ人間をつくる」ことです。ただ1つの哲学を持ち、その哲学に命を懸けるのが英国ジェントルマンだということを、ジェントルマン教育をつくった人がはっきりといっているのです。

 その、「ただ1つの哲学」を生み出すために、あのイートン校をはじめとするパブリックスクールからオックスフォード、ケンブリッジといった大学に至るまでの膨大な教育があったわけです。命を懸ける1つの哲学をつくり上げることだけが英国ジェントルマン教育で、それができたら成功なのです。そして、英国をはじめとする西欧個人主義は何を言うかというと、「それぞれが持つ哲学は『何でもいい』」ということです。

 それに比べると、日本はファシズムです。たとえば「戦争肯定の哲学」は持ってはいけないのですから。どんな思想であれ「持ってはいけない」というのはファシズムです。本来、哲学は、何を持ってもいいのです。19世紀に英国があれほどの大英帝国を築いたのは、そのような教育があったからです。つまり1つの哲学に命を懸ける人間を生み出す。その人間はどんな考え方を持ってもいい。「英国が大嫌い」でもいいのです。

 第二次大戦前に伯爵で、ヒトラーシンパの哲学を持った伯爵がいました。結局、ヒトラーと戦争することになって、ダメになった。しかし、英国人でこの伯爵を恨んだ人はいません。ナチスシンパの哲学を持ったその伯爵は教養人で、哲学を持つこと自体はいいのです。ただそれが英国から見て間違いだった、というのが英国人の考え方です。そして間違いだった場合は、英国流に言うと、自分で身を引いて、財産を失って責任をとればいいわけです。日本でいえば切腹ですね。いずれにせよ最終的にその人が責任をとればいいという考え方が、本当は、民主主義なのです。

 「あれを言ってはダメ」「これを言ってはダメ」というのはファシズムです。これは「僕が戦争肯定派で、戦争が好き」という意味ではありません。「絶対にダメ」という発想はファシズムです。これではスターリンと同じです。だから僕は現代社会に「笑顔のファシズム」という題名をつけています...
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