10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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消費税率引き上げ後の消費の反動減は思った以上に厳しい

アベノミクスの正念場~東大日次指数から見る~

植田和男
共立女子大学国際学部教授/東京大学金融教育研究センター センター長
情報・テキスト
2パーセントの物価目標を導入した日銀。しかし、民間の予測とは大きな乖離があり、市場関係者は今、固唾をのんでその動向を見守っている。輸出や生産、賃金などの各指標の動向の解説とともに、速報性に優れる売上高や物価に係る「東大日次指数」を使い、現在の物価上昇鎮静化の裏側にひそむ消費や経済の弱さを植田和男氏が浮き彫りにする。ここがアベノミクスの正念場なのか?
時間:15:29
収録日:2014/08/05
追加日:2014/08/08
ジャンル:
≪全文≫

●日銀と民間ではインフレ率の見通しにギャップがある


 それでは、今日は、当面のインフレ率およびそれに関連する経済の動向について、少しお話してみたいと思います。

 最初にこちらをご覧いただきたいのですが、一番左端は2013年度のインフレ率です。この辺は、消費者物価指数で上昇傾向にあったわけです。そのあとは、今年度の平均、来年度、再来年度ということで、将来についての見通しを示しています。青い方は日本銀行の見通しで、公式の見通しと言いますか、ボードメンバーの平均の見通しですね。それから、赤い方は民間の調査機関の平均の見通しになっています。

 ここが2パーセントですが、日本銀行は自ら2パーセントの目標を2年前後で達成すると言っています。それが当たるかどうかは分かりませんが、来年度、再来年度にかけて2パーセント前後になるという見通しを出してきています。

 これに対して民間の見通しは、せいぜい1パーセント前後に到達するくらいであろうということで、大きなギャップがあることが分かります。

 どちらが正しいかということは、この先だんだんと分かり始めていくということで、そのことがマーケット等にも大きな影響があると皆考えて、固唾をのんで見守っているというのが現状かと思います。

 では、なぜ赤い線、つまり、民間の見通しが、日本銀行のそれに比べてだいぶ下を走っているのか。文字通り、日銀の見通し通りにはなかなかいかないだろうと、特に日本の調査機関は思っているわけです。その一つの理由は、経済状況についての楽観の度合いが、日本銀行ほどではないということだと思います。

●消費税率引き上げ後の生産調整は97年時より格段に厳しくなっている


 そこで、次にこの図ですが、特に非常に近い足元である、今年の消費税率引き上げ後の経済の動きを見ていただこうと思います。

 これは、横が昨年の10月くらいからの月次のデータになっています。データそのものは、製造業の生産水準の指数になっています。赤が今回、つまり、昨年の10月からの動きを示しています。ここが4月1日ですが、4月1日の少し前にずいぶん上昇して、そのあと足元はかなり急落している姿であることが分かります。

 参考のために青い線も同じ図に書き込んであります。これは、前回消費税率を引き上げた時の生産指数の動きになっています。前回は1997年の4月に引き上げられていますので、1996年の10月から1年前後を青い線で示しています。今回とやや似たような動きになっていて、消費税率引き上げに向かって生産は上がっていき、消費税率が上がると生産は調整ということになったのですが、調整の深さは、とりあえずここまでのところ、今回のほうが格段に厳しいということが分かります。

 余談ですが、これは、厳しい調整が必ずしも直ちに悪いという答えにつながるということではありません。その先の需要を慎重に見ているということの結果であるからかもしれないわけで、その分、在庫の積み上がりが少なくて済んでいるということもあるかもしれません。

 逆に、1997年については、やや見通しが甘すぎたために、この辺でものをつくりすぎて、その後の在庫調整が厳しくなったという面があります。ただ、それにしても、今度は赤い線がずいぶん下を走っているなという感じです。

●輸出の伸び悩みが景気に影響


 なぜそうなっているかですが、ものに対する需要を見ていきますと、一つは、日本銀行も含めて、...
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