●日本はイノベーションで徹底的に遅れてしまっている
小宮山 イノベーションというのは、3つの段階がある。テクノロジーイノベーションという技術イノベーションの話と、それからそれをビジネス化するという話と、社会を変革するという話と、この3つの段階があるんだけど、それじゃイノベーションに成功しているところというのは、どこか。最初の段階はアメリカでしか出てきていない。ビジネス化の段階もほとんどアメリカですよ。GAFAのもとになったようなものです。
日本はここで遅れている。つまり、スタートとして出てきたのはアメリカなんですよ。それもほとんど西海岸。あそこに特異な人たちがたくさん集まっている。頭はいいんですけど、何でもやってしまうというデタラメなことが好きな人が集まっているんですよ。それで新しいことを始める。これが、ほとんどつぶれるんだけど、時々当たって、そうしてGAFAになってきているわけです。ざっといえば、これを入れているのが各国のイノベーションで、日本はここで徹底的に遅れてしまっているわけです。
●日本のチャンスは地方にある
小宮山 でもあれで幸せになるかどうかは分からない。これはあまりにも格差の問題を置き去りにしている。やはり、格差というのが、日本もだいぶ大きくなってきているけど、日本のチャンスは地方なんですよ。
日本の最大の課題は、「東京一極集中」です。今は、「国土の均衡ある発展」が本当に必要だと思っている。このままでは地方がなくなってしまいます。
―― そういう意味では、田中角栄の列島改造論とか、大平正芳の田園都市国家構想とか、先見性があったわけですよね。
小宮山 ある種、そうだったかもしれない。そうしたことがまさに今、必要だと僕は思います。地方に本当にチャンスがあるんですよ。それは大きな時代の流れです。そして、エネルギーは再生可能エネルギーに代わる。金属資源は都市鉱山に代わる。それから、人々はお金ができて暇ができれば、旅をする。だから観光産業というのがはやる。
だから、地下資源のいらないものが産業になってきて、観光という新しいビジネスが大きく動き出す。ここを日本の地方創生とつなげるというのが、日本のモデルだと思う。それは、今だいたい、エネルギーが一番大きくて20、30兆円輸入していますよ。あとはいろいろ木材や鉄鉱石などいろんなものを輸入しているわけですが、だいたい30数兆円ですよ。産業連関的に考えると50兆円くらい、内需が生まれるわけです。
どこに生まれるかというと、ほとんど地方ですよ。林業は地方でしかできないし、再生可能エネルギーもほとんど地方です。それから観光。もちろん東京に来るわけだけど、僕の友人も東京に飽きているよね。どこに行くかと言ったら、これからはやっぱり地方で、それが観光資源だと思いますよ。
―― 先生が言われるようなこと、例えばニセコだと、バブル崩壊以来、100倍にもなったといわれる土地は、ニセコしかないそうです。
でもあれって先生が言っていることをまさにやったんですよね。パウダースノーというのを見つけて、これはアルプスよりもこっちのほうがいいじゃないか、ということを発見した。例えば、オーストラリアだと真夏の時期がちょうど真冬ですし、千歳から2時間です。日本人にとっては遠いけど、彼らにとってはものすごく近い。それに加えて、台湾の人とか、シンガポールの人とか、香港の人とか。
小宮山 雪を見たことがない人たち、ですね。
―― 初めてスキーにトライアルするということです。結局オーナーはほぼ100パーセント外国人で、従業員は9割が外国人、客も9割は外国人。要するに、彼らは地域おこしを結果的にやった。そういう意味では、先生の言われていることの実証例がニセコでできた。
小宮山 そうですよ。いくつもあります。例えば、ニセコの関連でいうと、今の八幡平がそれに乗っています。ニセコに10日間滞在して、それから八幡平に行く。八幡平のパウダースノーも素晴らしいので、ここにさらに10日間滞在して帰る、とか。それから、白馬も同じように、非常にうまく立ち上がりだしている。雪だってそれだけのものがあるということです。
その他、いくらでもあるんですよ。日本の古い古民家みたいなものもそうです。もちろん少しは出資しなければならない。内装については、水周りを直したり、住み心地は良くしないといけない。そうしたところは泊まりたい人がものすごくたくさんいるわけではないけど、日本の古民家の数くらいはいる。だから、例えばAirbnb(エアビーアンドビー)みたいなものをもっと上手に使ってやる。滞在型の観光はこれからはやるに決まっているんですよ。
●地方との連携が重要
小宮山 それから再生可能エネルギーと農林水産業。再生可能エネルギーはゼロから新...